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子爵の妹2
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「いつまでに支払うように言われたんだ?」
「知らないわよ」
「…は?」
「私は妊婦なのよ?」
離縁の原因でもある癖に、ふざけるなと怒鳴り付けたかったが、ベリックは腹を括るしかないと考えていた。
シャーリンに関しては、兄か両親を同行させるべきだったとしか言いようがない。
「爵位を返上して、売り払うしかないな…」
「そんなことをしたら、私はどうなるの?」
「お前は自分のことしか考えられないのか!全部、お前のせいだろうが!それすら分かっていないのか!」
今も昔も自分のことしか考えていない、ついにベリックは怒鳴り付けた。
「そんなに怒らなくてもいいじゃない、私は妊娠しているのよ」
「男娼の子だろうが!」
妊婦だ、妊婦だと昨日も、偉そうに振舞っていた。姪の手前、こんな言い方はしたくなかったが、もう限界だった。
「っな、どうしてそんなにひどいことが言えるの?」
「お前も子どもを産めば借金の取り立てが始まる。覚悟しておくんだな、私は王宮に行って話を聞いて来る」
「…な、どうしてそんなに冷たいのよ!」
どうして優しくして貰えると思えるのか疑問であった。
そのままベリックはシャーリンを無視して、王宮に向かって、妹の話では内容が分からなかったので、教えて欲しいと願い出た。
こちらで待つようにと言われて、部屋で待っているとやって来たのはバトワス王太子殿下であった。慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「王太子殿下、わざわざ申し訳ございません」
「いや、あの様子の彼女では理解が出来なかっただろうと思ってな。座ってくれ」
「はい、申し訳ございません」
関わりのなかった二人は、まともに話したこともなかったが、向き合って座った。
「まずは、一括では支払えないということでいいだろうか?」
「はい…分割に出来るのであれば、お願いいたします」
「そうか。分割にするならば、手続きをするように言ったのだが、彼女はそのまま帰ってしまってな」
「申し訳ございません…」
本当に情けない妹で、腹が立つ気持ちを抑えて、頭を下げた。
「いや、ガルッツ子爵に来て貰って良かった。それで、何が聞きたい?」
「はい、慰謝料が追加されているということは分かりました。本来、支払うべきだった物ですから、その通りだと思います。エルム・フォンターナ様が、オルタナ王国のレオラッド大公閣下と結婚されているということですよね?」
「ああ、そうだ」
大公閣下という方は限られるので、オルタナ王国の輸入条件だというのならば、レオラッド大公閣下だということは推測が出来る。
「今更と思うか?」
「い、いえ」
シャーリンは今更と言っていたが、ベリックは確かに払える額ではないのは当然だが、真っ当な罰だと思っていた。
「大公閣下はずっと許せないと思っていらしたようだが、あちらから罪を償えと、仕掛けて来たわけではない。たまたま、状況が揃ったというところだろうな」
「条件が?」
「恥ずかしい話だが、母上があのようなことをしなければ、カイニー王国から輸入が出来た。大公閣下が来ることもなかった」
「それは…」
確かに困ることはなかったのかもしれないが、フォンターナ家に、エルム・フォンターナ様にはずっと恨まれていることには変わりない。
「母上のしたことは申し訳なく、私も思っている」
「はい…」
「私も予算を半分にして、母上のことと、大公閣下夫人についての責任を取ることになった」
「殿下も…ですか?」
「私も二人を応援してしまった人間の一人だ。今となっては、間違っていたとしか言いようがない」
ベリックも当時、シャーリンと両親が、王太子殿下も味方だからと言っていたことを思い出した。この方も、加担していたのか。
てっきり、母親の罪から予算を半分にしたのだと思っていた。
「知らないわよ」
「…は?」
「私は妊婦なのよ?」
離縁の原因でもある癖に、ふざけるなと怒鳴り付けたかったが、ベリックは腹を括るしかないと考えていた。
シャーリンに関しては、兄か両親を同行させるべきだったとしか言いようがない。
「爵位を返上して、売り払うしかないな…」
「そんなことをしたら、私はどうなるの?」
「お前は自分のことしか考えられないのか!全部、お前のせいだろうが!それすら分かっていないのか!」
今も昔も自分のことしか考えていない、ついにベリックは怒鳴り付けた。
「そんなに怒らなくてもいいじゃない、私は妊娠しているのよ」
「男娼の子だろうが!」
妊婦だ、妊婦だと昨日も、偉そうに振舞っていた。姪の手前、こんな言い方はしたくなかったが、もう限界だった。
「っな、どうしてそんなにひどいことが言えるの?」
「お前も子どもを産めば借金の取り立てが始まる。覚悟しておくんだな、私は王宮に行って話を聞いて来る」
「…な、どうしてそんなに冷たいのよ!」
どうして優しくして貰えると思えるのか疑問であった。
そのままベリックはシャーリンを無視して、王宮に向かって、妹の話では内容が分からなかったので、教えて欲しいと願い出た。
こちらで待つようにと言われて、部屋で待っているとやって来たのはバトワス王太子殿下であった。慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「王太子殿下、わざわざ申し訳ございません」
「いや、あの様子の彼女では理解が出来なかっただろうと思ってな。座ってくれ」
「はい、申し訳ございません」
関わりのなかった二人は、まともに話したこともなかったが、向き合って座った。
「まずは、一括では支払えないということでいいだろうか?」
「はい…分割に出来るのであれば、お願いいたします」
「そうか。分割にするならば、手続きをするように言ったのだが、彼女はそのまま帰ってしまってな」
「申し訳ございません…」
本当に情けない妹で、腹が立つ気持ちを抑えて、頭を下げた。
「いや、ガルッツ子爵に来て貰って良かった。それで、何が聞きたい?」
「はい、慰謝料が追加されているということは分かりました。本来、支払うべきだった物ですから、その通りだと思います。エルム・フォンターナ様が、オルタナ王国のレオラッド大公閣下と結婚されているということですよね?」
「ああ、そうだ」
大公閣下という方は限られるので、オルタナ王国の輸入条件だというのならば、レオラッド大公閣下だということは推測が出来る。
「今更と思うか?」
「い、いえ」
シャーリンは今更と言っていたが、ベリックは確かに払える額ではないのは当然だが、真っ当な罰だと思っていた。
「大公閣下はずっと許せないと思っていらしたようだが、あちらから罪を償えと、仕掛けて来たわけではない。たまたま、状況が揃ったというところだろうな」
「条件が?」
「恥ずかしい話だが、母上があのようなことをしなければ、カイニー王国から輸入が出来た。大公閣下が来ることもなかった」
「それは…」
確かに困ることはなかったのかもしれないが、フォンターナ家に、エルム・フォンターナ様にはずっと恨まれていることには変わりない。
「母上のしたことは申し訳なく、私も思っている」
「はい…」
「私も予算を半分にして、母上のことと、大公閣下夫人についての責任を取ることになった」
「殿下も…ですか?」
「私も二人を応援してしまった人間の一人だ。今となっては、間違っていたとしか言いようがない」
ベリックも当時、シャーリンと両親が、王太子殿下も味方だからと言っていたことを思い出した。この方も、加担していたのか。
てっきり、母親の罪から予算を半分にしたのだと思っていた。
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