悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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交渉!?

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「フォンターナ家が出て行ったから、もういいかと思ったのですか?」
「い、いえ、そのようなことは…」

 つい否定したが、実際はそうであった。フォンターナ家が出て行った以上、マクローズ伯爵家を憎みはしたが、何の罰も与えなかった。

「ではなぜですか?」
「与えても意味がない、見せる相手がいないと思っておりました。ですが、罰を与えるべきでした」
「そうですか」

 オイスラッドは間違えたかと焦ったが、嘘とも言えないギリギリのラインであった。思い切って、輸入のことを切り出すことにした。

「輸入は難しいということでしょうか?」
「いえ、してもいいと思っています。カイニー王国のことを聞いて、一度はどうしようもないと思い、断ることになりましたが…」

 シンバリアはその言葉に、ビクっと体を縮こまらせた。

「義兄からも構わないと言われております」
「あ、ありがとうございます」

 バトワスもシンバリアも、黙って深く頭を下げた。

 まさかこの流れで輸入が出来るとは思っていなかった。何か要求されても、応えられるものなら、応えるつもりでもいた。

「ジェラルド・フォンターナが開発した薬を、フォンターナ家を追い出した国が輸入するなんて、滑稽ですからね」
「追い出したわけでは」
「エルム・フォンターナを追い出したも同然ですよね?」
「それは、はい…申し訳ございません」

 悪意ある行動で、エルム・フォンターナの居場所をなくし、貴族社会から追い出したのは、間違いない。

「ですがね、私は義兄や愛する妻のように、優しくはないんですよ。今でも腹が立って仕方がない、勿論話だけではなく、裏取りをしておりますからね」

 バトワスのように、偏った言い分だけではないという意味である。

 メイリクスは、エルムに出会って、何があったのか、すぐにもエルムの口から聞きたかったが、エルムはどう話していいか時間が掛かった。

 それでも粘り強く待って、エルムから話を聞いてから、裏取りを取ったのである。

 あの時から、メイリクスはずっと怒りを抱えていた。

 だがエルムもジェラルドも、義両親であるオズワルドもオルダももう終わったことだと、罰することは望まなかった。

「ごもっともにございます。お応えできる限り、要求にはお応えいたします」
「そうですか、ではまずオルタナ王国から輸入になった経緯、カイニー王国とのこと、公表されておりませんよね?」
「はい」
「それを公表してください」
「それは!」

 シンバリアが声を上げようとしたが、オイスラッドが強く睨み付けた。

「はい、承知しました」
「でないと、どうしてカイニー王国が輸出をしなくなったのか、カイニー王国の責任とされることになりますからね」
「はい」

 最もだった…我が国が条件を破ったのに、カイニー王国は見捨てたような形になっている。

「後はエルム・フォンターナの件についての罰を与えてください」
「はい、遅くなり申し訳ございません」
「愛する妻は望みませんが、私は望みます」

 メイリクスは理不尽だろうが、何だろうが、どうしても罰を与えられていないことが納得が出来ていなかった。

「はい」
「父上、愛する妻を連呼したことを知られたら、母上に怒られますよ」
「いいんだよ、今日は聞いていないから」

 そう言いながらも、表情が変わらないメイリクスとエノンであったが、どこか空気は和らいでいた。

「罰は信用して、お任せいたします。ですが、愛する妻はお金には困っておりませんので、お金以外でお願いいたします。そして、どのような罰になったかは、私にお知らせいただけますか?」
「承知しました」
「では、輸出をさせていただきましょう。条件はカイニー王国と同じで、構いませんね?」
「はい」

 契約を終結させて、メイリクスとエノンは帰国することになった。見送りをしていると、王女たちがやって来た。
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