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交渉?
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「我が国の薬を開発したのが、誰かはご存知ないとは思いますけど、私としては非常に不愉快なことなのですよ」
「一体、どなたが…?」
オイスラッドはメイリクスに、恐る恐る訊ねた。
「覚えていますかね?ジェラルド・フォンターナです」
「っな」
「覚えてはいらっしゃいましたか?」
「勿論でございます」
「…」
シンバリアは、絶句した。バトワスは先程からの呼び名に気付いた。
「義兄とおっしゃっていましたよね…まさか」
「ええ、愛する妻の旧姓はエルム・フォンターナでございます」
オイスラッド、シンバリア、バトワスは一気に胸を掴まれたのかと思うほど、苦しくなった。
皆、エルム・フォンターナの顔をハッキリとは思い出せないでいたが、エノンはどこかメイリクスとは違う色味を持っており、オイスラッドは祖父に当たるオズワルドと同じだと気付いた。
しかも、愛する妻と言ったことで、愛妻家であることがこのような形で帰って来るとは想定外であった。
「それは…」
オイスラッドは何を言えばいいのか、分からなかった。まさかエルム・フォンターナが大公閣下夫人になっているなどとは思っていなかった。
「それは…フォンターナ家はオルタナ王国にいるということでしょうか」
「ええ、そうですよ」
勿論、フォンターナ家にはオルタナ王国にいることを告げる許可を得ている。
「そう…ですが…」
オイスラッドはコズ王国の伯爵夫人の生家、オルタナ王国の前伯爵夫人の生家に問い合わせたが、どちらもそのまま戻って来てしまい、その後はコズ王国とオルタナ王国からも用があるならば、王家に詳しく問い合わせて欲しいと通告を受けた。
既に話が伝わっているのだろうと思い、それ以上は問い合わせられなかった。
フォンターナ家はオルタナ王国にいたのか。
どうして王家までもが、味方に付いたのか…聞いていいものなのか。アニバーサリーのおかげなのか、だがどこにもアニバーサリーはなかった。
そこは商会に調べてさせて、確認を取っていた。
「いえ、元気で暮らしてらっしゃるのであれば、良かったです」
「あなた方に言われても、嬉しくもない言葉ですね」
「大変、申し訳なかったと思っております」
シンバリアは恨まれていることを感じ取り、言葉が出なかった。だが、驚き言葉の出なかったバトワスが、ようやく口を開いた。
「私の責任です…私が先導しました」
「私としては我が国に来て貰って、良かったとは思っていますが、あなた方のしたことを許せるかとは別の話になるのです」
その口振りに愛する妻へ行ったことを、全てを知っているのだと悟った。
「はい、私は何も考えずに、目の前にあった愚かな恋を応援してしまいました…今となっては、諫めるべきは目の前の二人であり、令嬢ではなかったと思っております」
「妻は何が悪かったのでしょうか?」
「何も悪くありません!私が、愚かだったのです」
「さすがに反省されていましたか」
メイリクスも今でも愚かであれば、聞くに値しないとすぐに帰るつもりだった。
「謝罪をということであれば、いくらでも謝罪させていただきます」
エルム・フォンターナには本当に申し訳ないことをした。ジェフも、オリビアも、シャーリンも、周りの友人たちも全て集めて謝罪させてもいい。
「いいえ、妻は望んでおりません」
バトワスはてっきり、エルム・フォンターナへの謝罪を要求されるのではないかと思っていた。薬のためでもあるが、それ以上に謝罪が出来るのであれば、させて貰いたいとも考えていた。
「そもそも、王家だけの所業ではありませんよね?」
「はい…」
「マクローズ伯爵家がどうして、罰されていないのでしょうか?」
「そ、それは…」
オイスラッドも、シンバリアも、バトワスも、今更、フォンターナ家に非がないのに、事の発端であるマクローズ伯爵家に何の咎もなかったことに気付いた。
「一体、どなたが…?」
オイスラッドはメイリクスに、恐る恐る訊ねた。
「覚えていますかね?ジェラルド・フォンターナです」
「っな」
「覚えてはいらっしゃいましたか?」
「勿論でございます」
「…」
シンバリアは、絶句した。バトワスは先程からの呼び名に気付いた。
「義兄とおっしゃっていましたよね…まさか」
「ええ、愛する妻の旧姓はエルム・フォンターナでございます」
オイスラッド、シンバリア、バトワスは一気に胸を掴まれたのかと思うほど、苦しくなった。
皆、エルム・フォンターナの顔をハッキリとは思い出せないでいたが、エノンはどこかメイリクスとは違う色味を持っており、オイスラッドは祖父に当たるオズワルドと同じだと気付いた。
しかも、愛する妻と言ったことで、愛妻家であることがこのような形で帰って来るとは想定外であった。
「それは…」
オイスラッドは何を言えばいいのか、分からなかった。まさかエルム・フォンターナが大公閣下夫人になっているなどとは思っていなかった。
「それは…フォンターナ家はオルタナ王国にいるということでしょうか」
「ええ、そうですよ」
勿論、フォンターナ家にはオルタナ王国にいることを告げる許可を得ている。
「そう…ですが…」
オイスラッドはコズ王国の伯爵夫人の生家、オルタナ王国の前伯爵夫人の生家に問い合わせたが、どちらもそのまま戻って来てしまい、その後はコズ王国とオルタナ王国からも用があるならば、王家に詳しく問い合わせて欲しいと通告を受けた。
既に話が伝わっているのだろうと思い、それ以上は問い合わせられなかった。
フォンターナ家はオルタナ王国にいたのか。
どうして王家までもが、味方に付いたのか…聞いていいものなのか。アニバーサリーのおかげなのか、だがどこにもアニバーサリーはなかった。
そこは商会に調べてさせて、確認を取っていた。
「いえ、元気で暮らしてらっしゃるのであれば、良かったです」
「あなた方に言われても、嬉しくもない言葉ですね」
「大変、申し訳なかったと思っております」
シンバリアは恨まれていることを感じ取り、言葉が出なかった。だが、驚き言葉の出なかったバトワスが、ようやく口を開いた。
「私の責任です…私が先導しました」
「私としては我が国に来て貰って、良かったとは思っていますが、あなた方のしたことを許せるかとは別の話になるのです」
その口振りに愛する妻へ行ったことを、全てを知っているのだと悟った。
「はい、私は何も考えずに、目の前にあった愚かな恋を応援してしまいました…今となっては、諫めるべきは目の前の二人であり、令嬢ではなかったと思っております」
「妻は何が悪かったのでしょうか?」
「何も悪くありません!私が、愚かだったのです」
「さすがに反省されていましたか」
メイリクスも今でも愚かであれば、聞くに値しないとすぐに帰るつもりだった。
「謝罪をということであれば、いくらでも謝罪させていただきます」
エルム・フォンターナには本当に申し訳ないことをした。ジェフも、オリビアも、シャーリンも、周りの友人たちも全て集めて謝罪させてもいい。
「いいえ、妻は望んでおりません」
バトワスはてっきり、エルム・フォンターナへの謝罪を要求されるのではないかと思っていた。薬のためでもあるが、それ以上に謝罪が出来るのであれば、させて貰いたいとも考えていた。
「そもそも、王家だけの所業ではありませんよね?」
「はい…」
「マクローズ伯爵家がどうして、罰されていないのでしょうか?」
「そ、それは…」
オイスラッドも、シンバリアも、バトワスも、今更、フォンターナ家に非がないのに、事の発端であるマクローズ伯爵家に何の咎もなかったことに気付いた。
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