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過去の過ち1
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「あなた!お母様が、流行り病になったと連絡が!」
「義母上が?」
シンバリア王妃の母である、リアット・ボアラー前侯爵夫人も流行り病に倒れた。子どもや高齢者が重症化し易い。
「薬はまだなのですか!早く薬を、お願いします」
「分かっているが、開発も進んでおらず、輸入もまだ連絡がないのだ」
「そんな…どうにかならないのですか」
「義母上だけじゃない。皆、助けてやりたいと思っている」
「それは…」
シンバリアは危ないかもしれないと連絡を貰い、立場を弁えずに、先に融通して欲しいと思っていたが、その薬がまだ手に入らないのである。
バトワスは王家に感染者はいなかったことで、まだ実感がなかったが、ついに近しい身に降りかかったのである。優しい祖母が大好きで、一人息子で逃げ場のない王家とは違って、唯一の安らぎが祖母のと時間だった。
祖母から会いには来ないように言われていたが、心配で堪らなかった。
いてもたってもいられず、父であるオイスラッドに、どうなっているのかと話に向かった。
「薬はまだなのですか!お祖母様はどうなるのですか」
「まだどうにもならない」
「どうにかならないのですか!」
「使者を送ろうにも現在、行き来は制限されている」
感染を防ぐために、現在は他国の行き来は余程のことがない限り行わないようにとなっており、押し切って行えば印象も悪く、下手に動いて、ペナルティを課せられることになったらと思えば、待つしかなかった。
「それでも、お祖母様が危ないのですよ!」
祖母は日に日に弱っているといい、どうにもならない歯がゆさで、オイスラッドを責めるしかなかった。
オイスラッドはまるで自分は関係ないような顔をしているバトワスに、連絡がないことを相まって、怒りを抑えきれなくなった。
「…恨むべきなら、お前じゃないか」
「どうして…私が?」
「フォンターナ家があれば、アニバーサリーから早く手に入ったかもしれない。ジェラルド・フォンターナがいれば、我が国で薬が開発が出来たかもしれない」
「…そ…んな」
バトワスはまさか自分のせいだとは、一度も考えたことはなかった。フォンターナ家の長男が医師だったことは知っているが、優秀であったとは知らなかった。
「ジェラルド・フォンターナが?」
「ああ、彼は医師でもあったが、新薬の開発も行っていた。今でも抜けたことを惜しんでいるそうだ」
「ですが、私は彼には」
知り合いでもないが、彼には何もしていない。それを言うならば、エルム以外には何もしていないのだが、困惑するバトワスは考えられないでいた。
「妹を糾弾したのだ、お前が追い出したせいだと言えるだろう?」
「私は追い出すつもりなんてありませんでした」
「あの時もそう言っていたが、彼女を追い詰めたのはお前たちだろう?彼女に何の非があった?勝手に盛り上がって、悪としたのはお前たちだろうが!今でも思い出して、腹が立つ!」
オイスラッドは、バトワスを強く睨み付けた。
「で、ですが、私は思い合う二人を…」
離縁してしまった今となっては強く言うことは出来ないが、当時は知りもしない婚約者よりも、お似合いであった二人を応援していた。
「そんなことはどうでもいい!」
「自殺までしたのですよ…」
「だから何だ?確かに亡くなっていれば、少しは悲恋になったのかもしれないが、二人は生きているじゃないか。睡眠薬も死なない程度に服用したのではないか?」
「そんなはずは、二人は死ぬつもりだったと…」
二人が嘘を付いているなどと疑ったこともなく、そこまで追い込まれていたのかと、さらに邪魔なのは婚約者の方だと思うようになった。
ジェフの婚約者をフォンターナ家のパッとしない令嬢だと判断し、今もあの時もエルムの名前さえ憶えていなかった。
「義母上が?」
シンバリア王妃の母である、リアット・ボアラー前侯爵夫人も流行り病に倒れた。子どもや高齢者が重症化し易い。
「薬はまだなのですか!早く薬を、お願いします」
「分かっているが、開発も進んでおらず、輸入もまだ連絡がないのだ」
「そんな…どうにかならないのですか」
「義母上だけじゃない。皆、助けてやりたいと思っている」
「それは…」
シンバリアは危ないかもしれないと連絡を貰い、立場を弁えずに、先に融通して欲しいと思っていたが、その薬がまだ手に入らないのである。
バトワスは王家に感染者はいなかったことで、まだ実感がなかったが、ついに近しい身に降りかかったのである。優しい祖母が大好きで、一人息子で逃げ場のない王家とは違って、唯一の安らぎが祖母のと時間だった。
祖母から会いには来ないように言われていたが、心配で堪らなかった。
いてもたってもいられず、父であるオイスラッドに、どうなっているのかと話に向かった。
「薬はまだなのですか!お祖母様はどうなるのですか」
「まだどうにもならない」
「どうにかならないのですか!」
「使者を送ろうにも現在、行き来は制限されている」
感染を防ぐために、現在は他国の行き来は余程のことがない限り行わないようにとなっており、押し切って行えば印象も悪く、下手に動いて、ペナルティを課せられることになったらと思えば、待つしかなかった。
「それでも、お祖母様が危ないのですよ!」
祖母は日に日に弱っているといい、どうにもならない歯がゆさで、オイスラッドを責めるしかなかった。
オイスラッドはまるで自分は関係ないような顔をしているバトワスに、連絡がないことを相まって、怒りを抑えきれなくなった。
「…恨むべきなら、お前じゃないか」
「どうして…私が?」
「フォンターナ家があれば、アニバーサリーから早く手に入ったかもしれない。ジェラルド・フォンターナがいれば、我が国で薬が開発が出来たかもしれない」
「…そ…んな」
バトワスはまさか自分のせいだとは、一度も考えたことはなかった。フォンターナ家の長男が医師だったことは知っているが、優秀であったとは知らなかった。
「ジェラルド・フォンターナが?」
「ああ、彼は医師でもあったが、新薬の開発も行っていた。今でも抜けたことを惜しんでいるそうだ」
「ですが、私は彼には」
知り合いでもないが、彼には何もしていない。それを言うならば、エルム以外には何もしていないのだが、困惑するバトワスは考えられないでいた。
「妹を糾弾したのだ、お前が追い出したせいだと言えるだろう?」
「私は追い出すつもりなんてありませんでした」
「あの時もそう言っていたが、彼女を追い詰めたのはお前たちだろう?彼女に何の非があった?勝手に盛り上がって、悪としたのはお前たちだろうが!今でも思い出して、腹が立つ!」
オイスラッドは、バトワスを強く睨み付けた。
「で、ですが、私は思い合う二人を…」
離縁してしまった今となっては強く言うことは出来ないが、当時は知りもしない婚約者よりも、お似合いであった二人を応援していた。
「そんなことはどうでもいい!」
「自殺までしたのですよ…」
「だから何だ?確かに亡くなっていれば、少しは悲恋になったのかもしれないが、二人は生きているじゃないか。睡眠薬も死なない程度に服用したのではないか?」
「そんなはずは、二人は死ぬつもりだったと…」
二人が嘘を付いているなどと疑ったこともなく、そこまで追い込まれていたのかと、さらに邪魔なのは婚約者の方だと思うようになった。
ジェフの婚約者をフォンターナ家のパッとしない令嬢だと判断し、今もあの時もエルムの名前さえ憶えていなかった。
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