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新薬
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アニバーサリーがなくなったことで、今度は我が商会を一番にと思ったが、上手くはいかなかった。アニバーサリーのような船も持っていない。
船は何とか手に入れた商会もあったが、伝手はなく、取引してもいいと言われるところはあまりに高額であったり、詐欺ではないかという安いところだったりと、失敗してなくなった、大きくすることは出来ず、まだ商会がある方がいい方であった。
ゆえに今ある、商会は細々と続けている商会しかない。
「ああ…フォンターナ家のことが再び悔やまれるとは」
「言っても仕方のないことですが、フォンターナ家があれば、違ったかもしれません。ジェラルド殿もいれば、薬の方もという声も上がっております」
ジェラルド・フォンターナは、母のアニバーサリーから薬の材料を簡単に手に入れることも出来る上に、優秀な医師であった。
「ジェラルド・フォンターナか…」
「はい、新薬には彼は強かったですから」
「そうだったな」
アジェル王国でジェラルドが開発した薬は、今でも使われている。
「彼の抜けた研究は、未だに進んでいないものもあります」
「そうか…」
アジェル王国の医師や研究者が無能というわけではないが、新しい方法を試したくとも、手に入らなければ、試しようがない。
一度、何とか手に入れられても、成功するかは分からない。しかも、安定供給が出来ないと意味がなく、断念せざる得なかった。
申請しても、優先度は低かった。
オイスラッドは、ジェラルド・フォンターナもいて、アニバーサリーもあれば、アジェル王国こそが開発に成功していたかもしれない。
願う立場ではなく、願われる立場だったと、考えてしまっていた。
息子のことには気を配ってはいたが、正式に婚約者もおらず、交友関係の全てまでは把握しておらず、まさか別の婚約を壊すなんて考えていなかった。
オズワルド・フォンターナは、表情の読めない、口数の少ない男だった。その男が僅かな口数で告げた。
『娘を傷付ける国からは去らせていただきます』
『何?娘?どういうことだ?』
『陛下はご子息のことも、把握しておられないのですか?』
『バトワスか?何かあったのか?』
オズワルドは厳しい目を向けるだけで、答えることはなかった。周りの者も事態を知っている者はおらず、首を振るばかりであった。
その後、すぐに調査を行って分かったが、エルム・フォンターナは何の落ち度もないのに、悪意に晒され続けていた。周りは悲劇のカップルに酔っていたようだが、そうではない者にとってはただの不貞行為だった。
それでも、バトワスが支持したことで、反論が出来ない状況に陥っていた。
オズワルドが駄目でも、前伯爵を説得しようと考えていたが、家族の総意であると言われ、前伯爵も同意しているとサインまで貰って来ていた。
誰も反対していないのなら、止めようがなかった。
オイスラッドは大きく、頼りがいのあるオズワルドの背中を、ただ見送ることしか出来なかった。
「自業自得だな…」
「…」
オイスラッドは愚かな王ではなかったが、バトワスの親である以上、責任がある。愚かなことを支持した息子と、今となっては離縁したようだが、マクローズ伯爵家とガルッツ子爵家を恨むしかなかった。
「フォンターナ家が出ていなかなければ、違ったのだろうな」
「恐れながら、それは間違いないと思います。もしかしたら、カイニー王国とオルタナ王国のどちらかに、ジェラルド殿がいるかもしれません」
「可能性はあるだろうな」
オイスラッドは今更、フォンターナ家のことを、調べるようなことはするつもりはなかったが、再びの後悔が襲って来ていた。
それからは、既存の薬を使い、開発もしながらも、薬が輸入が出来るのを待つしかなかった。
船は何とか手に入れた商会もあったが、伝手はなく、取引してもいいと言われるところはあまりに高額であったり、詐欺ではないかという安いところだったりと、失敗してなくなった、大きくすることは出来ず、まだ商会がある方がいい方であった。
ゆえに今ある、商会は細々と続けている商会しかない。
「ああ…フォンターナ家のことが再び悔やまれるとは」
「言っても仕方のないことですが、フォンターナ家があれば、違ったかもしれません。ジェラルド殿もいれば、薬の方もという声も上がっております」
ジェラルド・フォンターナは、母のアニバーサリーから薬の材料を簡単に手に入れることも出来る上に、優秀な医師であった。
「ジェラルド・フォンターナか…」
「はい、新薬には彼は強かったですから」
「そうだったな」
アジェル王国でジェラルドが開発した薬は、今でも使われている。
「彼の抜けた研究は、未だに進んでいないものもあります」
「そうか…」
アジェル王国の医師や研究者が無能というわけではないが、新しい方法を試したくとも、手に入らなければ、試しようがない。
一度、何とか手に入れられても、成功するかは分からない。しかも、安定供給が出来ないと意味がなく、断念せざる得なかった。
申請しても、優先度は低かった。
オイスラッドは、ジェラルド・フォンターナもいて、アニバーサリーもあれば、アジェル王国こそが開発に成功していたかもしれない。
願う立場ではなく、願われる立場だったと、考えてしまっていた。
息子のことには気を配ってはいたが、正式に婚約者もおらず、交友関係の全てまでは把握しておらず、まさか別の婚約を壊すなんて考えていなかった。
オズワルド・フォンターナは、表情の読めない、口数の少ない男だった。その男が僅かな口数で告げた。
『娘を傷付ける国からは去らせていただきます』
『何?娘?どういうことだ?』
『陛下はご子息のことも、把握しておられないのですか?』
『バトワスか?何かあったのか?』
オズワルドは厳しい目を向けるだけで、答えることはなかった。周りの者も事態を知っている者はおらず、首を振るばかりであった。
その後、すぐに調査を行って分かったが、エルム・フォンターナは何の落ち度もないのに、悪意に晒され続けていた。周りは悲劇のカップルに酔っていたようだが、そうではない者にとってはただの不貞行為だった。
それでも、バトワスが支持したことで、反論が出来ない状況に陥っていた。
オズワルドが駄目でも、前伯爵を説得しようと考えていたが、家族の総意であると言われ、前伯爵も同意しているとサインまで貰って来ていた。
誰も反対していないのなら、止めようがなかった。
オイスラッドは大きく、頼りがいのあるオズワルドの背中を、ただ見送ることしか出来なかった。
「自業自得だな…」
「…」
オイスラッドは愚かな王ではなかったが、バトワスの親である以上、責任がある。愚かなことを支持した息子と、今となっては離縁したようだが、マクローズ伯爵家とガルッツ子爵家を恨むしかなかった。
「フォンターナ家が出ていなかなければ、違ったのだろうな」
「恐れながら、それは間違いないと思います。もしかしたら、カイニー王国とオルタナ王国のどちらかに、ジェラルド殿がいるかもしれません」
「可能性はあるだろうな」
オイスラッドは今更、フォンターナ家のことを、調べるようなことはするつもりはなかったが、再びの後悔が襲って来ていた。
それからは、既存の薬を使い、開発もしながらも、薬が輸入が出来るのを待つしかなかった。
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