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再調査2
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「はい、実は非があったのは不貞行為を犯した、マクローズ伯爵家の方でして」
その言葉にメーリンは、バトワスの話を思い出した。
「もしかして、王太子殿下のおっしゃっていた婚約者がいる身で、別の令嬢と恋仲になって、自殺を図られたという方ですか?」
「お聞きでしたか、その方です」
「ご令嬢は、出て行かれていたのですね…」
自殺まで図られたら、いくら令嬢に非がなくとも、国に居づらいのは確かだろう。
「そう仕向けられたということですか?」
「詳しくは分かりませんが、出て行くように行ったわけでもありませんし、陛下は止めたとも聞いております」
余程に見限ったということだろう。潔い選択だとは思うが、一家で出て行くということは、娘を大事にしていたのだろうが、なかなか出来ることではない。
「そうですか、仲のいい家族だったのでしょうね」
「私たちはフォンターナ家と関わりがなく、家族関係までは詳しくはありませんが、そうではないと思われていたそうです」
「どういうことでしょう?」
「仲のいい家族ではなかった。だからどうして爵位を返上してまで、出て行ったのかと当時は思われていたそうです」
「ですが、大事に思っていない限りそのようなことは」
令嬢だけを他国に出す方が簡単で、本来はそれが一番ありがちな道だっただろう。
「ええ、ですので、当時はどうして出て行ったのかという者と、出て行きたくもなるという者に分かれていたそうです」
メーリンは明言はしないが、令嬢が大事にされていないと思われており、婚約を破棄しても、出て行くとまで思っていなかったのだと察することが出来た。
「生きてらっしゃるのですよね?」
「それは大丈夫だと思います。当主は騎士団長で、妻は大きな商会を持っておりましたから、力もお金も持っておりますので」
「まあ、騎士団長だったのですか」
「はい、信頼の厚い騎士団長でした」
そのような方が出て行ったというのは、まさに見限ったということなのだろう。
「商会はどうなったのですか」
「それは、こちらにも書かれているアニバーサリーの閉店と書かれているのが、妻の商会です」
他の資料にも、変化としてアニバーサリーの閉店と書かれている。
「閉店されて出て行かれたのですね」
「はい、太い仕入れ先も輸送ルートも持っていましたから、我が国には大打撃でした。ですが、爵位を返上したのですから、商会だけは置いておくことも出来なかったでしょうね」
関わりを切りたいのに、商会があれば、関わることになってしまう。メーリンもそのまま続けることは、どう考えてもしないだろうと思えた。
それを戻って来て貰おうとしていたのが、オリビアである。
「我が国にアニバーサリーという商会はないわよね?」
メーリンも聞いたことのない商会ではあったが、念のために研究者に問い掛けた。
「大きな商会ですよね?」
「ええ、国内一だったと思います」
「では、ハビット王国にはございません。取引先としてはあるかもしれませんが、調べてみないことには何とも」
「帰ってから調べてみましょう」
分かるかもしれないと期待を寄せるメーリンに、言いだし辛そうに声を掛けた。
「あの、難しいかもしれません。実はフォンターナ家もですが、アニバーサリーを探した者がいたようですが、なかったそうです。あれだけの商会ですから、おそらく名前が変わっているのでしょう」
「それは…」
「縁起が悪いとされたのかもしれませんね」
自虐的に答えたが、メーリンも確かにと思った。名前も分からないとなれば、調べようもない。
「ですが、フォンターナという名前で調べてみましょう」
「はい」
今更、どうにかなる話ではないが、幸せに暮らしているといいと調査員は思っていたので、素直に頷いた。
その言葉にメーリンは、バトワスの話を思い出した。
「もしかして、王太子殿下のおっしゃっていた婚約者がいる身で、別の令嬢と恋仲になって、自殺を図られたという方ですか?」
「お聞きでしたか、その方です」
「ご令嬢は、出て行かれていたのですね…」
自殺まで図られたら、いくら令嬢に非がなくとも、国に居づらいのは確かだろう。
「そう仕向けられたということですか?」
「詳しくは分かりませんが、出て行くように行ったわけでもありませんし、陛下は止めたとも聞いております」
余程に見限ったということだろう。潔い選択だとは思うが、一家で出て行くということは、娘を大事にしていたのだろうが、なかなか出来ることではない。
「そうですか、仲のいい家族だったのでしょうね」
「私たちはフォンターナ家と関わりがなく、家族関係までは詳しくはありませんが、そうではないと思われていたそうです」
「どういうことでしょう?」
「仲のいい家族ではなかった。だからどうして爵位を返上してまで、出て行ったのかと当時は思われていたそうです」
「ですが、大事に思っていない限りそのようなことは」
令嬢だけを他国に出す方が簡単で、本来はそれが一番ありがちな道だっただろう。
「ええ、ですので、当時はどうして出て行ったのかという者と、出て行きたくもなるという者に分かれていたそうです」
メーリンは明言はしないが、令嬢が大事にされていないと思われており、婚約を破棄しても、出て行くとまで思っていなかったのだと察することが出来た。
「生きてらっしゃるのですよね?」
「それは大丈夫だと思います。当主は騎士団長で、妻は大きな商会を持っておりましたから、力もお金も持っておりますので」
「まあ、騎士団長だったのですか」
「はい、信頼の厚い騎士団長でした」
そのような方が出て行ったというのは、まさに見限ったということなのだろう。
「商会はどうなったのですか」
「それは、こちらにも書かれているアニバーサリーの閉店と書かれているのが、妻の商会です」
他の資料にも、変化としてアニバーサリーの閉店と書かれている。
「閉店されて出て行かれたのですね」
「はい、太い仕入れ先も輸送ルートも持っていましたから、我が国には大打撃でした。ですが、爵位を返上したのですから、商会だけは置いておくことも出来なかったでしょうね」
関わりを切りたいのに、商会があれば、関わることになってしまう。メーリンもそのまま続けることは、どう考えてもしないだろうと思えた。
それを戻って来て貰おうとしていたのが、オリビアである。
「我が国にアニバーサリーという商会はないわよね?」
メーリンも聞いたことのない商会ではあったが、念のために研究者に問い掛けた。
「大きな商会ですよね?」
「ええ、国内一だったと思います」
「では、ハビット王国にはございません。取引先としてはあるかもしれませんが、調べてみないことには何とも」
「帰ってから調べてみましょう」
分かるかもしれないと期待を寄せるメーリンに、言いだし辛そうに声を掛けた。
「あの、難しいかもしれません。実はフォンターナ家もですが、アニバーサリーを探した者がいたようですが、なかったそうです。あれだけの商会ですから、おそらく名前が変わっているのでしょう」
「それは…」
「縁起が悪いとされたのかもしれませんね」
自虐的に答えたが、メーリンも確かにと思った。名前も分からないとなれば、調べようもない。
「ですが、フォンターナという名前で調べてみましょう」
「はい」
今更、どうにかなる話ではないが、幸せに暮らしているといいと調査員は思っていたので、素直に頷いた。
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