悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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ハビット王国

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 ハビット王国でも、ルークア王太子殿下とパーメリア王太子妃殿下、メーリン王女殿下が、バトワス王太子殿下の離縁には驚いていた。

 アジェル王国で離縁が横行している中、パーメリアは無事に王子を出産した。

「離縁されたのか」
「まあ、どうしてですの?」
「王太子妃殿下の不貞行為だそうだ」
「まあ…」
「まあ」

 ルークアとメーリンはバトワスに非がない形とは言え、何とも言い難い気持ちになった。パーメリアに至っては会ってもいないので、バトワスに対してお辛いでしょうねという思いであった。

「ご挨拶しかしませんでしたから、そのような方でしたのね」

 メーリンに嫉妬していたオリビアは、関わらずに文句を言っていたのである。

「ああ、驚いたな。相手が男娼と発表したのも、詮索されるのを回避されたのか。それとも、相手をも守るためなのか」
「まあ、男娼…」

 同じ王太子妃として、そのような存在に会ったこともないパーメリアは、それ以上の言葉が続かなかった。

「お兄様は、相手は実は違うとお思いなのですか?」
「その可能性は大いにあるだろう、男娼なら相手は仕事なのだから、裁かれることはないのだから」

 恋愛結婚のアジェル王国となれば、他国ではそう思っている者は多く、バトワスの近くにいる者なのではないか、既に殺されているのではないか。

 本当の相手は誰なのかと詮索し、面白おかしくゴシップ誌に書かれ、いくら探しても事実を発表しているので、相手などいるはずもない。

 それでも、アジェル王国の離縁の連鎖は格好のネタとなっていく。

「それはそうですが…」
「そろそろ、アジェル王国を訪ねたいと伺おうかと思っていたが、お忙しいだろうか…もう少し先にした方がいいだろうか」

 ルークア王太子殿下は会議に出席しなければならず、パーメリア王太子妃殿下は王子がまだ赤子であるために、今回はメーリンと前回もアジェル王国に同行した、研究者であるトーマスを含む研究者たちが、行く予定としていた。

「離縁されたのなら、大丈夫なのではないでしょうか」
「そうか…離縁するまでが大変だと聞くものな。手紙を書いてみようか」
「ええ、前回はこちらの資料は持って行きませんでしたから、トーマスが色々揃えてくれているようです」
「そうだな、ただし離縁のことはあまり触れないようにしなさい。何を隠されているか、関係ないのだから」
「分かっておりますわ」

 バトワスから役に立つかは分からないが、天候の変わった前後に何があったかの資料も集まっている。是非、いらしてくださいと返事を貰い、メーリンとトーマスは再びアジェル王国に旅立った。

「またお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします」
「ようこそおいでくださいました」
「ありがとうございます、こちらも少ないですが、資料をお持ちしましたので、照らし合わせて行けたと思っております」
「ありがとうございます」

 差し障りのない挨拶をして、メーリンもさすがに一切触れないことは出来ないために切り出すことにした。

「離縁には驚きました、お忙しいところに申し訳ございません」
「気にしないでください、既に終わったことですから」

 メーリンはバトワスがどこか前より、すっきりしたような顔に見えて、前に来た時は既に上手くいっていなかったのではないかと感じた。

「そうですか、お力落としのないように願っております」
「ありがとうございます」

 メーリンはそれ以上、バトワスに離縁のことを聞くことはしなかった。

「天候の変わった前後の年の集めた資料は、調査部の方に渡してありますので」
「ありがとうございます、何か気になるようなところはありましたか」
「そうですね、天候が変わった前年は急に強い雨、嵐のようなことが他の年より多かったようです。私も記憶にありました」
「強い雨や、嵐…」

 メーリンは文献にあっただろうかと、記憶を探ったが思い当たらなかった。
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