悪意か、善意か、破滅か

象徴だった二人の離縁２

　流石にアイリとマイリの前で、ジェフの子どもではなかったということは憚られ、どうしようかと思っていると、アイリが声を上げた。

「お父様の子ではなかったそうです…ううう」
「お姉様…」

　アイリは言葉にすると、再び涙が溢れてしまったのだろう。マイリがそんなアイリを慰めようと、抱きしめており、皆は胸が苦しくなった。

「な…」
「あなたたちは何も悪くないわ…温かいお茶でも入れましょう、さあ」

　カッシャーは言葉を失ったまま、次の言葉が出ず、マレーラがアイリとマイリを連れて、部屋に向かった。

「本当なのか？」
「はい、鑑定書を見せて貰いました…二人だけが違ったそうです」
「何てことを…アイリは１２歳だろう？」
「ええ、１２年、いえ１３年前から不貞行為をおこなっていたということです」
「今回が初めてではなかったということか…よくも平気な顔をしておれたものだ！」

　改めてカッシャーは、シャーリンに怒りが沸いていた。

「２人の養育費と慰謝料はシャーリンに全て返させると」
「当たり前だ」
「出産までは待ってくれるそうです。ガルッツ子爵家が困窮するのは、望んでいないとおっしゃっていただきました」
「そうか…叩き潰されても仕方のないことなのに、有難いことだ」
「はい…あの子たちも罪はないですが、辛いことでしょう」
「ああ…どれだけ辛い宣告だっただろうか」

　自分たちだけが父親の子どもではなかったなどと、子どもに背負わせることになるなんて…どれだけ罪深いことなのか。

「一体、誰の子なんだ？」
「また男娼か…シャーリンに聞くしかないでしょう」

　翌日、アイリとマイリも一緒に聞きたいというので、シャーリンと話をすることになった。連れて来られたシャーリンは、アイリとマイリがいることに驚いた。

「え？どうして、アイリとマイリが？」
「座りなさい」

　シャーリンにはアイリとマイリが、来たことを知らせてはいなかった。

「アイリ、マイリ、お母様に会いに来てくれたの？お母様だって、あなたたちと離れ離れになって、辛かったのよ」
「違うわ！」
「え？」
「私とマイリはお父様の子どもじゃなかったの！」
「え？」

　シャーリンは、わざとらしさもなく、本気で驚いた顔をしていた。

「そんなはずないわ」
「親子鑑定をしたんだ」
「どうして！そんなこと」

　シャーリンは、なぜか明らかに酷いというような顔であった。

「お前が不貞をするような女だからだろう！」
「そんな…本当にジェフの子どもではないの？そんなはずないわ」
「それはアイリとマイリの台詞だろう」
「だって、どうして…」

　シャーリンは、ジェフの子どもではないことに、理解が出来なかった。

「いつから不貞行為をしていたのだ？アイリの前で言い辛いが、最低でも１２年前からということが証明されたのだ」
「伯父様、私は大丈夫です」
「っな…違うの」
「何が違う？お前は不貞行為を犯しながら、よくもジェフ様の側にいれたものだな」
「だって、ジェフが、その…」

　さすがのシャーリンも、１２歳と６歳の子どもたちの前では言い辛そうに、どう説明すればいいか言葉を考えた。

「ハッキリ言ってください！」
「ジェフが相手にしてくれなかったのが、悪いの！でも、あなたたちはジェフの子どもよ…私がジェフ以外の子どもを産むなんてあり得ないわ」
「はあ…じゃあ、その腹の子は何だ？」

　アイリとマイリも、シャーリンがお父様の子どもではない、子どもを妊娠していることは知っている。

「…あ、そ、あ、それは」
「お母様は頭がおかしいのではありませんか！」
「な、な、何てことを言うの！」
「気持ちが悪くて堪りません」
「私もです」
「どうしてそんな酷いことが言えるの…信じられない」

　シャーリンは目に涙を溜めて、アイリとマイリをグッと見つめた。


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久し振りに１７時にもう１話投稿させていただきます。

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