悪意か、善意か、破滅か

次期侯爵の離縁５

「シャルロット、スチュアート、驚かせてすまなかったな。二人もデンバー伯爵家にと行きたいというのなら、話し合いたいと思っている」

　アンドリューはシャルロットとスチュアートに向き合うために、３人になった。

　弟と妹なのに別れを惜しむ間もなく、二人の意見も聞かずに見送らせてしまい、デンバー伯爵家に行く選択も、尊重したいと思っていた。

「いえ、仕方ないと思います」
「私もそう思います」
「そうか…何か聞きたいことがあれば答える。ディビットとディアーナとブリジットも、ミカエラーから話を聞くだろう」

　詳しい説明はあの場ではしなかった、したところで居たたまれない空気になるだけだっただろう。

「誰の子なのですか？」
「もしかしたら心当たりがあるが、言えないのかは分からないが、ミカエラーは分からないと言っていた」
「「は？」」

　両親は仲がいいとは思ってはいなかったが、母には愛人がいたのだと考えていた。

「おそらく男娼か、当時若い貴族令息だった者だろうな。よく、ロロレイ夫人のところに出掛けていただろう？あの邸で、そういったことが行われていたそうだ」
「っな」
「そんな…」

　一瞬にして、母を嫌悪した瞬間であった。

「私はずっと前から疑ってはいたんだ、だがオリビアは王太子妃だった。生家がそのような状況になれば、良くないだろうと思っていたんだ」
「ディビットとディアーナとブリジットのことも、疑っていたのですか？」
「可能性はあるとは思っていたが、子どもではないと思っていたわけではない」
「はい」
「はい」

　確かに父が３人を差別するようなところは、見たことはなかった。

「だが、オリビアの不貞が分かって、私も調査して置こうと思ったんだ。それで、子どもたちのことも念のために調べた」
「はい」
「ショックでしたが、調べたくもなると思います」

　母は出産をすれば明らかであるが、父は分からない。スチュアートは父の気持ちを、悲しいが理解出来ると思った。

「すまなかったな。オリビアのこともあったのに、立て続けになってしまい、不安にさせてしまっただろう」
「オリビア叔母様のことは、何てことをと思いましたけど、お母様も同じだったなら、私には言う権利はないです」
「はい、私もそう思います」
「お前たちも何か言われるかもしれないから、関係ないとは言えないが、罪などない。オリビアも遅いとは思うが、反省しているようだ。ミカエラーもそうなればいいのだが…」

　ミカエラーは悪いとは思っている様子ではあったが、反省していないとは言えないが、反省しているとも言えない様子のまま別れてしまった。後悔はないが、子どもたちの母親であることには変わりないため、しっかり生きて欲しいと思っている。

「はい…ディビットたちは大丈夫でしょうか？」
「どうだろうな、お前たちは会いに行きたかったら、行くといい」
「そうですね、様子を見に行こうと思います」
「はい、そうします」

　オリビアの離縁に続き、ひっそりとアンドリューとミカエラーの有責にて離縁した。シャルロットとスチュアートはそのままズニーライ侯爵家に、ディビットとディアーナとブリジットはデンバー家の者となった。

　シャルロットとスチュアートは、デンバー伯爵家に様子を伺いに行き、ディビットとディアーナとブリジットを慰めた。

　ミカエラーはアンドリューが相手にしてくれなかったからと、いいわけをしたようだが、それでも不貞をしていいということではない。

　末のブリジットですら、そんな理由では懐柔できなかった。

　ミカエラーはおっとりして、大人しいことから、オリビアやシャーリンのように、アンドリューを誘うようなことは出来なかった。だから、ロロレイ夫人に誘われて、勝手に発散する場所を見付けていたのである。