悪意か、善意か、破滅か

調査報告１

「分かりませんが、調べて置いた方がいいと思いましたので」
「そんな…」

　マルエリーは不貞行為があったというのなら、可能性はあると思いながらも、信じられない気持であった。

「オリビアは王家が調べているとは思いますので、大丈夫だとは思いますが、正直、貴族の方は分からないと思っている者もいると思いますよ」
「そ、そうなのか…無駄に疑いを持つよりも、ハッキリさせた方がいいだろう」
「そうね…分かったわ」

　案の定、オリビアのことを聞いて、ミカエラーは慌てて帰って来た。

　アンドリューは既にいつものことであったが、ファンドラーとマルエリーはミカエラーを疑いの気持ちで見てしまうだろうと、顔を合わせないようにした。

「どういうことなの？オリビアさんが離縁されたなんて」
「発表があった通りだよ、別邸で謹慎させている。子どもたちにも説明をしているから、君も関わらなくていい」

　子どもたちにも間違いなく耳に入ることから、全てを話して、別邸で謹慎させると説明をした。領地に行かせることも考えたが、領地にいる祖父母に迷惑を掛けるために、こちらで監視することにした。

　オリビアも自分のしたことを実感したようで、俯いたまま別邸に入っていった。

「そんな…侯爵家はどうなるの！」
「王家からこちらにはお咎めはない、これからも仕えるだけだ」

　持参金の返金の要求をする立場ではないのは勿論だが、慰謝料も覚悟していた。だが、王家の要求は離縁だけであった。

　裏付けでズニーライ侯爵家は関わっていないことが、判明していたためである。

「そうなのですか…」
「改めてデンバー伯爵家には話をさせて貰うよ」
「はい…」

　デンバー伯爵家は、ミカエラーの実家である。説明は必要だが、調査結果と親子鑑定の結果によっては、別の話し合いにもなることになる。

　そして、調査結果が出たと連絡を貰い、親子鑑定もそろそろ出ているはずだから、訪ねて来ると言ってアンドリューは出掛けて行った。ファンドラーとマルエリーは、その姿を複雑な気持ちで見送った。

　ミカエラーはオリビアのことを聞かれるのが嫌なのか、出掛けることを止めて、邸に留まっている。デンバー伯爵家からもどういうことなのかと手紙を貰ったが、改めて話をすると返事を書いてある。

　アンドリューが戻って来て、夫妻は慌てて迎え出たが、表情を見ただけで、どちらのせいかは分からないが、悪い結果だったのだと分かった。

「部屋で話を聞こう」
「はい…」
「お茶を用意させるわ」

　ファンドラーとマルエリーは、すっかりやつれた様子のアンドリューを気遣い、部屋に連れて行き、メイドにお茶を用意させると、ミカエラーは近付けないように執事に申し伝えた。

「疲れたわね」
「私も一緒に行くべきだったな」
「いえ、二人で行けば目立ちますから」
「そうか、それで…」

　緊張感を持ちながらも、ファンドラーとマルエリーはアンドリューに訊ねた。

「不貞行為は予想通りでした、友人の邸でそういった行為が行われていたようです」
「邸で？」
「邸と言っても、別居しているようで、夫はいなかったようです」

　アンドリューが話していた、愛人を許容している夫で、邸を与えているのだろうと思った。

「相手は？」
「それこそ男娼や、若い貴族令息などだったようです」

　まさかここでも、男娼という言葉を聞くとは思わず、ファンドラーとマルエリーは思わず顔を顰めた。

「皆で、その、邸で不埒な行為を行っていたというのか？」
「はい、その通りです。ミカエラーだけでなく、他の夫人もいたようです。まるで娼館ですよね…調査員の方も中までは分からないが、この前は男娼を呼んでいたそうで、そちらから証拠になるだろうということでした」

　貴族令息であれば分からなかったが、男娼となれば行うことは決まっている。


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