悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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羞恥

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 謹慎や予算を減らされる、男娼の許可の取り消しは想定していたが、まさか離縁と言われるとは思わず、ただ驚いていた。

「決まるまで、部屋で謹慎とする」
「相手は男娼なのよ!」
「分かっている」
「な、そんな…男娼を呼んだ時は何も言わなかったじゃない!分かったわ、嫉妬して、私を罰したいだけなのでしょう!酷いわ!」

 オリビアは噛み付くように、感情を剥き出しにして叫んだ。

「許可が出ていることなのだから、何も言うことはないさ。君が決めて、君の責任で行ったことだろう?」
「で、でも1回だけじゃない!」
「…はあ」

 バトワスは自分も同じことをしたらどうかと言おうかとも思ったが、私は許すと調子のいいことを言いそうだと思い、止めた。

「オリビアッ!!いい加減にしろ!私は恥ずかしくて堪らない!」
「お、お父様」

 もう止めてくれと言わんばかりのズニーライ侯爵に、バトワスも娘がこんなことになって、恥ずかしい気持ちは痛いほど分かった。

「お前には、私が今どんな気持ちかすら分からないだろう!本当は逃げ出してしまいたいほど、恥ずかしくて、情けなくて堪らないんだぞ!」

 オリビアにとって、穏やかな優しい父親であったズニーライ侯爵に、大きな声を出されて、ビクリとした。

「だって…」

 肩を落とし、両手で顔を覆う父の姿に、オリビアもそれ以上言えなかった。

 オリビアは謹慎となり、バトワスは子どもたちにも説明して、意見を聞こうと考えた。なかなか赤裸々な話になるために、下の子達より先に上のオークリー、アマリリス、ライラックに話をすることにした。

「オリビアが不貞行為を行った。離縁にするか幽閉にするか、お前たちの意見も聞いて置きたい」
「っな」
「本当なのですか」
「ええ…」

 困惑した様子で、3人はバトワスを見た。

「ああ、少し前からあまりに性欲が強いために、前例もあったので、予算内で男娼を呼ぶ許可を得ていたのだが、高級男娼を呼び過ぎて予算がなくなり、侯爵家にお金を融通させて、実家に帰ると嘘を付いて、その男娼とホテルで不貞行為を行った。見た者もおり、裏付けも取れている」
「男娼って…」
「ええ…お母様って性欲が強いの?」
「気持ち悪い」

 3人とも軽蔑するような顔をしており、男娼って何だよと言っている。

「他にも見た者がいるかもしれない…しばらく様子を見て、判断しようと思っているのだが、お前たちの母親でもあるからな」
「いくら男娼でも、不貞は不貞でしょう」
「男娼なんて、どうしてそんなことになったの?」
「そうよ」

 バトワスは自分が相手をしていればと言いたのだろうと思い、誤魔化すような年でもないために、事実を話すことにした。

「先ほども言ったように、性欲が強く、公務の邪魔をすることがよくあった。しかも、アマリリスやカメリアことがあっても、何も変わらない様子に限界になり、そんなに行いたいのならと、男娼の許可を出したんだ。両陛下にも事情は話をしてある」
「ええっ…」

 アマリリスは自信のことも関わっていたために、目を逸らしたが、ライラックは強い不快感を示した。

「私は離縁でいいと思います」
「…私も」
「ええ、もし噂にでもなったら、嫌だもの」
「そうか…」

 オリビアとズニーライ侯爵には離縁の可能性を告げたが、離縁したところで、何か変わるわけではないのではないかと、幽閉という形でもいいかとも思っていた。

 だが、確かに潔く離縁の方が妙な噂は立たず、恋愛結婚には関係はないが、不貞行為は厳しく罰されるとすれば、イメージも多少は違うのではないかと考えた。

「母上の公務は皆で行います」
「そうです」
「手伝います」

 確かに幽閉になっても、離縁になっても、オリビアの公務はどうしようかと考えていた。王子や王女がやってくれるのならば有難い。

「それは助かる」
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