悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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規格外

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 オリビアは実家に行くことにして、送り届けて貰い、今度は侯爵家の馬車を借りて、そこにルルーリオを呼べばいいと思い付いた。

 それはもはや、不貞行為と言っていい行動であることに気付いてすらいないオリビアだったが、さすがに侍女には頼めないと判断し、前は実家で働いており、現在は王宮に勤めているメイドに、ホテルと男娼の手配をして貰った。

 メイドはそのようなことをして大丈夫かと伝えたが、オリビアは仕方ないことなのよと笑っていた。逆らうことの出来ないメイドは、手配を行い、オリビアは四度目のルルーリオとの関係を楽しんだ。

 大変満足したオリビアは、しばらくの間はご機嫌であった。

 バトワスは応接室で同級生である、アフレード公爵家のボードレンから調査の書類を預かっていた。

「わざわざありがとう」
「いえ、話もあって来たのです」
「話?」
「前置きなしで話しますが、実は二日前にコンストレールホテルで、王太子妃殿下が男性といるのを妻が見たそうなんです」
「は?」

 二日前とは確か、実家である侯爵家に行くと言っていた日である。

「近くに護衛も、侍女の姿もなかったそうで、相手は若い男だったと…客室の方から出て来たそうで、地味な装いはしていたそうだが、さすがに見間違うことはないと、それを伝えて置きたくて足を運んだのです」
「はあ…」

 バトワスは王太子妃でありながら、あまりに軽率な行動に頭を抱えた。

「心当たりがあるのですか?」
「他に見たものはいるのか?」
「妻と、妻の妹が見たそうです。さすがに触れ回ったりはしていませんが、他にも気付いた者がいたかもしれません」

 コンストレールホテルは大きなホテルで、どこから見られていたか分からない。他にも見られたと考えた方がいいだろうと判断した。

「そうか…おそらく男娼だと思う」
「男娼?」
「実は予算内で申請をして、呼ぶことは許可を得ている。オリビアの場合は本当に金を払った男娼だ」
「そうだったのですか…妻もおそらく、そういった関係のある男性ではないかと言っておりました」

 ボードレンも王家の男娼の許可は知っている。恋人であることがほとんどだと聞いていたが、オリビア王太子妃殿下は、本当に男娼だというのか。

「なぜホテルに行ったのかは分からないが、許可を得ずということだな。どうなるか分からないが、奥方には黙っていてもらえると有難い」
「承知しました。失礼ですが、殿下はしたくないから、男娼の許可を出したのですか?」
「ああ、子どもも増えては困るからと言っていたのだが…確かにそれも事実ではある。だが、それ以上に性欲が強く過ぎてな。やることが山積みでもお構いなしでな」

 王太子として恥ずかしい話ではあるが、見られて口を噤んでもらう以上、素直に話してしまおうと思った。

「我が家もです」
「な?そうなのか?」
「はい、お互いに愛人を許可しておりますので、家に持ち込まないことを条件に、そういった部分は勝手にさせています。ですが、王家はそうはいきませんよね」

 ボードレンは婚約者だった美しいマリーレンと結婚しており、オリビアはともかく、マリーレンもそんな状況になっているとは思ってもいなかった。

「ああ、なぜなんだろうな。ジェフも離縁するかもしれないと言っていた」
「はい、聞きました。周りにも多いですよ?」
「そうなのか?そういえば、母上も言っていたな」

 親世代は不貞を犯すのではないかと危惧していると、嫁の方を指していた。

 普通とは言ってはあれだが、こういった場合は男性の方が、愛人問題などを起こすことの方が多いはずじゃないか。

「お互いに愛人がいる者もいるそうですけど、私はそんな気にはなれません」
「ああ…」
「無理して付き合っている者もいるようですけど、私は無理でした」
「私はオリビアが規格外だと思っていたんだが」
「私もです」
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