悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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色欲

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「よろしいのですか」

 侍女はまだ一桁台のお子様もいらっしゃる上に、思春期のお子様ばかりなのに、良いのだろうと言う意味が含まれていたが、オリビアは気付きもしなかった。

 しかも、両陛下にも知られていることも理解が出来ていない。

「バトワスが言ったのだからいいのよ!後悔すればいいわ」
「しょ、承知しました。費用はランクによりますが、いかがしますか」

 許可が出たことで、侍女にも男娼のことは、伝えられていた。

「最高に決まっているでしょう」
「かなり費用が掛かりますけど、よろしいですか」
「低いランクを王太子妃が、頼むはずがないでしょう!」
「承知しました」

 侍女は男娼の手配を申請書を書き、オリビアのサインを貰って、提出した。提出された予算管理課は、既に話を聞いていたが、本当に申請して来たことに驚いた。

 だが、許可が出ている以上、手配をしなければならない。

 最高ランクになれば費用も高いが、口は堅いので、男娼が言い振らすようなことはないが、どこから洩れるかは分からない。

 こんなことが洩れれば、いくら許可されて、予算内だとしても、王太子妃に相応しくないとも言われ兼ねない。そのリスクを分かっているのだろうか。

「バトワス、男娼を申請したわよ」

 オリビアは当てつけに、わざわざバトワスに話に行った。

「そうか、そんなに呼びたかったんだな」
「っな!あなたが」

 オリビアはバトワスは後に引けなくなっただけだった、男娼なんて呼ばないで欲しいと言って来ると思っていた。

「許可は出したが、申請したのは君だろう?君の予算で、君の責任によって呼んだんだ。私は提案したに過ぎない」
「そんな言い方しなくても、後悔しているのなら、素直にそう言いなさいよ!」
「そんなことはない、君の色欲が満たされて、公務をしっかりやってくれることを願っている」

 色欲という部分を除けば、まるで夫婦の会話ではない。

「っな、後悔するわよ」

 バトワスは書類を見る手を止めず、何も答えないことで、オリビアは怒りのまま去って行った。

「きっと、後悔するのは君の方だよ…」

 オリビアを見て、ますます子どもたちのは伴侶はきちんとした者を、選ばなくてはならないと考えていた。

 若い頃、浮かれていた頃は、こんな未来が待っているなどと思ってもいなかった。オリビアもあの頃は可愛かったなんてことを、思い出すこともなくなっていた。

 そして、オリビアの元に男娼がやって来た。

 オリビアよりも15歳は年下の美しい、筋肉質な肉体を持つ男娼・ルルーリオであった。さすが最高ランクというべきだろう。

 オリビアもバトワス以外と関係を持つのは初めてで、緊張していたが、ルルーリオはオリビアを褒めながら、緊張を解し、快楽を与え続けた。

 オリビアはこんなにも丁寧に求められたことは初めてで、バトワスと比べて、なんてバトワスは雑だったのかしらと思った。

 だが、それは相手はプロであり、仕事だからであるが、オリビアは自分が魅力的だからだと、都合よく解釈した。

 ルルーリオは契約時間が終わると、眠ってしまったオリビアを置いて、報酬を貰って、さっさと帰っていた。目覚めたオリビアは、ルルーリオを探した。

「ルルーリオは?」
「時間になりましたので、帰られました」
「時間?」
「はい、2時間ですので」
「そんな言い方しないで頂戴」

 オリビアは夢から覚める様に言われたことに腹を立てたが、侍女には意味が分からなかった。色欲はバトワスが言ったように満たされた。バトワスでは満たされないほど、満たされていた。

 バトワスにとても良かったと言いに向かったが、従者に今は入室出来ませんと言われてしまい、部屋に戻るしかなかった。

 もしかしたら、嫉妬して会いたくないのかもしれないと思い、ほくそ笑んだ。その夜から、快楽を思い出して、体が火照るようになってしまった。
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