悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

文字の大きさ
上 下
33 / 112

呆然

しおりを挟む
 陛下にも経緯とオークリー、アマリリス、ライラックを注意をした。二度目は陛下に伝えると言ってあると報告を上げた。

 オリビアにも話すと、何か言いたそうな、一瞬の間があった。

「どうした?」
「いえ…」
「まさか協力したのではないだろうな?」

 ルークア王太子殿下からオリビアのことは聞いていなかったが、もしかしたら協力をしていたのではないかと疑いを向けた。

「いえ、協力はしていないわ。でもこんなにも誰も縁談が決まっていないのなら、良いかとは思っていたの」
「わざわざ聞いていないが、王女殿下には他国の王族から縁談があるという話だった。あの美しさなら、わざわざ我が国を選ぶことはないだろう」
「あなたも美しいと思ったの?」

 オリビアは目を吊り上げており、バトワスは溜息は堪えたが、面倒だなと思った。

「一般的な話だ」
「私はそうは思わなかったわ、肌も白くないし。オークリーは趣味が悪いわ」

 18歳の王女殿下に、張り合えると思っているのか、そのような物言いをする姿が、酷く醜く見えた。

「そんなことを言うものじゃない」
「何よ、あなたもやっぱり美しいと見惚れたの?」
「はあ…いい加減にしてくれ、王女殿下は18歳だぞ!そのようなこと言うことが、失礼だと思わないのか」

 まさかそんな話になるとは思わず、呆れるしかなかった。

「趣味が悪いと言っただけじゃない!」

 どちらかと言えば、メーリン王女殿下の方が、そう言いたい立場だろう。

「間違っても、失礼な態度を取るなよ、原因が分かるかもしれないんだから」
「分かっているわよ!分かったら、いくら面白くない相手でも感謝するわ」
「そのような言い方をするなと言っているだろう!」
「何よ!必死になって」

 まるで恋愛時代や新婚のような喧嘩を繰り広げることに、バトワスは呆れはしたが、ちゃんと言って置かなければいけないと思った。

「気分を害されて、何か分かっても、教えたくないと思われたらどうするんだ?お前が責任を取れるのか?」
「っな、どうして私が…」
「じゃあ、もう黙っていなさい」

 ふんと言いながらオリビアは出て行こうとしたが、本当に原因があるのか分からないが、そんなくだらないことで、機嫌を悪くしては堪らないために、オリビアにはくれぐれもと念押しした。

 オリビアと子どもたちを危惧して、念のためにルークア王太子殿下とメーリン王女殿下の方に、監視を付けた。何度かオークリー、アマリリス、ライラックを見掛けたようだが、話し掛けるようなことはなかったそうだ。

 だが、ルークア王太子殿下は結婚していると聞いて、さすがにもう近付かないと思っていたが、それでもまだ興味があるのかとすら思った。

 そして、ルークア王太子殿下とメーリン王女殿下まで帰国されるギリギリまで、話を聞いたり、資料を読み込んでおり、バトワスも話を聞くことになった。

「いかがでしたでしょうか?」
「はい、状況はとても似ていると言えます。ある年から雨が減り、徐々に今のような状況になっている。我が国の文献にも同じようなことが書かれていました」
「良くなったことは?」

 ルークア王太子殿下は、静かに首を横に振った。

「我が国のデータではありませんでした。ある一定から、今のような天候になって、そのまま変わらない状況だと思われます。ただ、我が国は昔のことですので、データがしっかりと残っていないのも事実です」

 200年以上前であれば、残っていないのも無理はない。

「何か手掛かりはありそうですか?」
「今のところは…環境の変化も、天候によるものが大きかったようですし、今のような天候になった際に、何があったかを詳しく調べてみてはいかがかと、調査機関の方にはお話ししました」
「あの年に…」

 バトワスは確か、結婚する前くらいではなかったかと、記憶している。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方の願いが叶うよう、私は祈っただけ

ひづき
恋愛
舞踏会に行ったら、私の婚約者を取り合って3人の令嬢が言い争いをしていた。 よし、逃げよう。 婚約者様、貴方の願い、叶って良かったですね?

【完結】高嶺の花がいなくなった日。

恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。 清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。 婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。 ※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?

しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。 そんな小説みたいなことが本当に起こった。 婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。 婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。 仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。 これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。 辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

ついで姫の本気

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。 一方は王太子と王女の婚約。 もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。 綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。 ハッピーな終わり方ではありません(多分)。 ※4/7 完結しました。 ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。 救いのあるラストになっております。 短いです。全三話くらいの予定です。 ↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。 4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。

どんなに私が愛しても

豆狸
恋愛
どんなに遠く離れていても、この想いがけして届かないとわかっていても、私はずっと殿下を愛しています。 これからもずっと貴方の幸せを祈り続けています。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

処理中です...