悪意か、善意か、破滅か

注意

　バトワスはルークア王太子殿下から、お茶に誘っていたと聞いたオークリー、アマリリス、ライラックを呼び出した。

「ルークア王太子殿下とメーリン王女殿下をお茶に誘っているそうだな？」

　３人はなぜか怒っている様子のバトワスの声色に、ビクリとしたが、悪いことだとは思っていなかった。

「折角、いらしたのですから、もてなすのは当然ではありませんか」

　オークリーは良かれと思ってというような口振りで言い返した。

「話を聞くためにやって来られたと言っただろう！」
「もてなすのもいけないというのですか」
「もてなすのなら、私が対応を任されているのだから、私がする」

　そう言われれば、オークリーは黙るしかなかった。誰もオークリーにそんなことは頼んでいないからである。だが、アマリリスは違った。

「お茶くらいいじゃない」
「そんな時間はないんだ」
「お姉様はしつこく誘ったからじゃないの！学習しないんだから」
「何ですって」

　アマリリスのせいだとライラックは判断したようで、どうして私まで怒られなきゃいけないのよと睨み付けた。

「３人ともだ、二度と誘うようなことをするな」
「どうしてよ、王族同士、仲良くすることは良いことでしょう？」
「まさか、婚約や結婚を考えているのではあるまいな？」

　アマリリスの口振りに、バトワスはまさかと思った。

「可能性はゼロではないでしょう？」
「ルークア王太子殿下は結婚されている」
「っえ、そんなこと聞いてないわ…」
「アマリリスが勝手に未婚だと思っただけだろう？お前たちが関わることはあまりないだろうから、わざわざ伝える必要はないと思っただけだ。２３歳なのだから結婚されていて、当然だろう」

　アマリリスは話を聞きに来たのは口実で、出会いを求めてやって来たのではないか、それならば他に出会いがある前に私がと意気込んだ。

　ハビット王国は小国ではあるが、容姿でそんなことは吹き飛んでいた。

「王太子妃殿下は妊娠中で、本当なら夫妻で来たかったが、難しかっただけだ」

　バトワスはルークア王太子殿下から、待望の第一子を妊娠したようで、大事を取って訪問は控えることになったと聞いていた。

「そんな…」

　声には出さなかったが、ライラックもショックを受けた顔をしており、１２歳のライラックの成熟した様子に、ライラックにも不安になった。

「メーリン王女殿下に婚約者は？」
「はあ…お二人は大事な用事でこちらに来られているんだ。そんな話はしていない」
「ですが、婚約者が見付かれば良いことではありませんか！相手は王族ですよ！」
「正直、ハビット王国には失礼だが、今の状況ではハビット王国と我が国が結びついても、一緒に衰退していくだけだ」
「そんなはずは！」

　オークリーも、美しい王女の前ではこのようになってしまうのかと、オークリーにもだが、留学先のアッシュのことも心配になった。

「事実だよ…」
「でも、愛があれば、支え合っていけばいいじゃないですか」

　その言葉に、オークリーの留学は考え直した方がいいかもしれないと思った。

「はぁ…今はそのような話はしていない。滞在期間も限られているから、お二人は大事なことをされているんだ、余計なことで邪魔をしないでくれ。言うことを聞かないなら、陛下に言って貰った方がいいか？」
「…それは」

　王子や王女たちも、厳しい両陛下のことは怖い。

「少しくらいいだろうなんて思うなよ？邪魔をするようなすぐに陛下に話をする、そう思いなさい」
「はい…」
「一応、伝えて置くが、メーリン王女殿下は他の王家から縁談が来ているという話だ。そういった話は二度とするな！」

　オークリーは不満そうだったが、陛下に言われるのは困るだろう。メーリン王女殿下はあれだけの美しさなら、利益のある結婚の方を選ぶに決まっている。