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不安
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カメリアは離宮で療養となり、第一王女、第二王女を他国に嫁がせるのは絶望的になり、結婚が出来るかも分からない。
両親である両陛下は忙しく、なかなか時間が取れないために、孫たちの縁談はバトワスとオリビアが責任を持って決めるように言われていた。
それでもアマリリスとカメリアのことは、その都度、報告は上げていた。
アマリリスのことも叱られたが、カメリアの報告をすると、急にバトワスの執務室にやって来て、アマリリスの時よりも怒鳴り散らされた。
「どうなっているのだ!王族としての自覚すらないのか!王家の恥だ」
「申し訳ございません」
「表に出すな!」
「承知いたしました」
バトワスはアマリリストカメリアのこと、今後のことを考えて、溜息を付くのが日課になっていた。
そろそろ、第一王子が留学に向かうことになっている。
第一王子・アッシュは隣国のアーキュ王国へ、期間は王女たちと違って短期ではないので、一年間となる。
「くれぐれもおかしな真似をするな、何かあったら、自分で判断せずに、すぐに連絡をすること。分かったな?」
「はい」
前の二人のせいで、不安には思っているが、二人のことを見ていて、おかしな真似はしないだろうが、伝えて置かなければならない。
「アマリリスのように帰されることがないように気を付け、カメリアのようなことはしません」
「ああ、くれぐれも気を付ける様に」
「はい」
アッシュが戻り次第、今度は第二王子・オークリーが、ヒューズリン王国へ留学することになっている。第三王子・パベルは戻ってくる気はないようで、時折、文が届き、熱心に勉強していると書かれている。
そして、アッシュはアーキュ王国へ旅立った。後は何も問題を起こさずに、留学から戻って来ることが願うばかりである。
従者にもおかしいと思ったら、アッシュには従わなくていい、すぐに連絡をしてくれと伝えてある。
そんな折、現在のアジェル王国へ似たような天候のハビット王国から、お話を聞きたいので、訪問したいという申し出があった。
断る理由もないために、王太子殿下と妹である王女殿下がやって来ることになり、バトワスが対応を任されることになった。
「訪問をお許しいただき、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「いえ、ようこそお越しくださいました」
同じ黒髪の小麦色の肌をした、23歳のルークア王太子殿下、18歳のメーリン王女殿下は妖艶で美しく、とても礼儀正しい二人であった。
ハビット王国は歴史の長い国ではあるが、アジェル王国と同じで、雨が少なく、水不足に悩まされている小国である。バトワスも関わりなかったこともあり、以前は他人事で大変だなと、どこか見下していた。
バトワスは早速、二人と話をすることになった。
「アジェル王国は、雨は少ないままですか?」
「はい…ハビット王国はいかがですか?」
「我が国もです。私も妹も生まれた時からですので、慣れていると言ってはあれですが、バトワス王太子殿下は違いますでしょう?」
メーリンも、横で頷いている。
「はい…未だに昔に戻りたいと思ってしまうことがあります」
「ええ、そうでしょうね」
「いずれは戻ると信じて、慣れていくしかないとは思っているのですが」
「そのことなのですが…」
ルークア王太子殿下は話を始めようとしたが、言葉に詰まったような表情をして、止まった。
「お怒りにならず、歴史から考えたと思い、聞いていただきたいのですが」
「はい…」
「我が国と同じならば、戻ることはないと考えているのです」
「ど、どういうことでしょうか」
バトワスは慌てた、明日戻るなんて安易には考えていないが、明日戻るかもしれないと思うことは、持ち続けていたかった。
「我が国も昔は他国よりも、過ごし易い気候で、保養地として人気のあったのです。それが、200年以上前のことですが、徐々に今のような気候になりました。とてもよく似ていると思ったのです」
両親である両陛下は忙しく、なかなか時間が取れないために、孫たちの縁談はバトワスとオリビアが責任を持って決めるように言われていた。
それでもアマリリスとカメリアのことは、その都度、報告は上げていた。
アマリリスのことも叱られたが、カメリアの報告をすると、急にバトワスの執務室にやって来て、アマリリスの時よりも怒鳴り散らされた。
「どうなっているのだ!王族としての自覚すらないのか!王家の恥だ」
「申し訳ございません」
「表に出すな!」
「承知いたしました」
バトワスはアマリリストカメリアのこと、今後のことを考えて、溜息を付くのが日課になっていた。
そろそろ、第一王子が留学に向かうことになっている。
第一王子・アッシュは隣国のアーキュ王国へ、期間は王女たちと違って短期ではないので、一年間となる。
「くれぐれもおかしな真似をするな、何かあったら、自分で判断せずに、すぐに連絡をすること。分かったな?」
「はい」
前の二人のせいで、不安には思っているが、二人のことを見ていて、おかしな真似はしないだろうが、伝えて置かなければならない。
「アマリリスのように帰されることがないように気を付け、カメリアのようなことはしません」
「ああ、くれぐれも気を付ける様に」
「はい」
アッシュが戻り次第、今度は第二王子・オークリーが、ヒューズリン王国へ留学することになっている。第三王子・パベルは戻ってくる気はないようで、時折、文が届き、熱心に勉強していると書かれている。
そして、アッシュはアーキュ王国へ旅立った。後は何も問題を起こさずに、留学から戻って来ることが願うばかりである。
従者にもおかしいと思ったら、アッシュには従わなくていい、すぐに連絡をしてくれと伝えてある。
そんな折、現在のアジェル王国へ似たような天候のハビット王国から、お話を聞きたいので、訪問したいという申し出があった。
断る理由もないために、王太子殿下と妹である王女殿下がやって来ることになり、バトワスが対応を任されることになった。
「訪問をお許しいただき、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「いえ、ようこそお越しくださいました」
同じ黒髪の小麦色の肌をした、23歳のルークア王太子殿下、18歳のメーリン王女殿下は妖艶で美しく、とても礼儀正しい二人であった。
ハビット王国は歴史の長い国ではあるが、アジェル王国と同じで、雨が少なく、水不足に悩まされている小国である。バトワスも関わりなかったこともあり、以前は他人事で大変だなと、どこか見下していた。
バトワスは早速、二人と話をすることになった。
「アジェル王国は、雨は少ないままですか?」
「はい…ハビット王国はいかがですか?」
「我が国もです。私も妹も生まれた時からですので、慣れていると言ってはあれですが、バトワス王太子殿下は違いますでしょう?」
メーリンも、横で頷いている。
「はい…未だに昔に戻りたいと思ってしまうことがあります」
「ええ、そうでしょうね」
「いずれは戻ると信じて、慣れていくしかないとは思っているのですが」
「そのことなのですが…」
ルークア王太子殿下は話を始めようとしたが、言葉に詰まったような表情をして、止まった。
「お怒りにならず、歴史から考えたと思い、聞いていただきたいのですが」
「はい…」
「我が国と同じならば、戻ることはないと考えているのです」
「ど、どういうことでしょうか」
バトワスは慌てた、明日戻るなんて安易には考えていないが、明日戻るかもしれないと思うことは、持ち続けていたかった。
「我が国も昔は他国よりも、過ごし易い気候で、保養地として人気のあったのです。それが、200年以上前のことですが、徐々に今のような気候になりました。とてもよく似ていると思ったのです」
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