悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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価値

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「それって…」

 薄々察しているのかもしれないが、自暴自棄になる可能性はあるが、ハッキリ伝えることにした。

「見付かったとしても、何者かは分からないが、公爵家の子息だと偽ったことは罪になる。その罪人に、騙されて関係を持ったということを知られるということだ」
「っっっ」
「それこそ、相手が王族でもなければな」

 お忍びで王族が名前を借りたとしても、それならばディラン・パスドアーツには許可を得ているはずで、パスドアーツ公爵が知らないなどとはあり得ない。

 ピデム王国の王女と関係を持つなど、王子としても問題行動となる。ピデム王国だからと関係を持ったとしても、後始末の方が面倒になるはずだ。

 ドリーツ王国は大国ではないが、先進国である。

 もし、隠しているのだとしたら、国ぐるみということになる。もし、そうならば、カメリアを嫁がせることは押し通せそうではあるが、可能性はゼロに近いだろう。

「そうよ、ディランは王子なのよ!王子という立場を隠したくて、そうよ、きっとそうよ!間違いないわ」
「冷静に考えてみなさい。王子がフラフラしているわけもないし、いくら王子でも許されることではない」
「でも王子だったら、そんなに罪にはならないかもしれないじゃない!」

 王族などというべきではなかったと、バトワスは後悔していた。

「そんな望みに掛けるのか?」
「当たり前じゃない!」
「ならば、王子でなかったら、王女としての価値は一気に下がると思いなさい」
「でも」
「自分ではない、王女だと思って考えて見なさい。例えば、アマリリスが偽った名前の男と関係を持って、その男は罪人とされたら…?ただの平民だったら?カメリアはどう思うのだ?」

 カメリアは目を見開き、息を吸い、ようやく事態を把握したようだった。

「そんな、そんな、私は…」
「空弾みな行動が招いたことだ、謹慎は継続だからな」

 その後、カメリアはディランはきっと王子だと言っている日と、どうしたらいいのという日と、精神が不安定な状態が続いた。

 他のきょうだいたちには、カメリアは疲れが出たのか、熱にうなされてている。感染するかもしれないから会いに行かないように伝えた。

 そして、数週間が経ち、カメリアの妊娠は確定したが、それは同時に流産したことで分かった。

 精神不安定であること、まだ15歳であることが影響したようで、バトワスとオリビアは良かったとは言えないが、これが運命だったのだと受け止めることにした。

 カメリアにも告げたが、今度は赤ちゃんがいなくなったと泣いたり、逆にいなくなって良かったのよと言い出し、外に出られる状況ではなくなっていた。

 さすがにきょうだいたちに黙って置くことは出来ず、事が事なので上の子たちにだけ、王家の評判に関わる、自分たちにも影響があることだから絶対に漏らさないように言い、ありのままを話すことにした。

「嘘だろ…」
「…え」
「私より酷いじゃない」
「カメリアお姉様が?」

 皆、あまりのことに驚くしかなかった。

「精神が不安定になっている」
「結局、相手は誰だったのですか?」
「まだ分かっていない」
「カメリアはどうするつもりですか?」
「実際に具合も悪いから、療養するとしようかと思っている」
「その方がいいでしょうね」

 騙されて関係を持っていただけであれば、何てことをしたんだと、カメリアをすぐさま責めただろうが、流産して、精神が不安定になっていると言われれば、そこまで言えない気分になっていた。

 だが、帰国後に馬鹿にされたアマリリスは違った。

「何よ、私にあんなに馬鹿にして置いて!公爵令息と婚約が出来ると思って調子に乗っていたんでしょう!何て子なの…」
「アマリリスも人のことは言えないだろう」
「カメリアよりもマシよ」

 第一王子、第二王子、第三王女は言う権利はないと、その姿を見つめた。
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