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謹慎
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バトワスはオリビアから話を聞いて、ゆっくりと目を瞑るしかなかった。
「なんてことだ…」
「既成事実があれば、結婚が出来ると思っていたようです」
「はあ…妊娠は?」
「本人は思ってもいない様子で、謹慎を命じましたので、分かるまでは部屋から出さないつもりです」
「そうだな、他の子どもたちのこともあるからな」
万が一、妊娠しているとしたら、話さなくてはならないが、さすがに妊娠したかもしれないと言うつもりはない。
「アマリリスの方がマシだと思うとはな…」
「ええ、学園で風紀の乱れを感じていたことが、良かったのでしょう」
「相手にされなかっただけというのもあるがな」
「…」
オリビアも王子もだが、王女も沢山いても、引く手あまただと思っていた。だが、婚約は決まらない上に、問題を起こして、まだ下に4人もいるのに、このままではお荷物を抱えていると思われると、ようやく自覚しつつあった。
「パスドアーツ公爵家には文を出した。だが、見付けるのは困難だろうな。侍女もメイドも顔は分かるだけであった。カメリアに付いて行こうと思ったが、カメリアがお付きの方もいるから、二人で大丈夫だと言ったそうだ」
「騙すのなら簡単だったでしょうからね」
そして、パスドアーツ公爵家から返事が届いた。
バトワスはその文を読み終えて、一人ふーっと息を吐き出した。
「想定内ではあるな…」
パスドアーツ公爵は、そのようなことは一切、知らなかったこと。ディラン・パスドアーツはここ一年、トリンス王国には行っていないこと。
ゆえに、絶対にその男性はディランではない。
カメリアと侍女とメイドに聞いた人相を記したが、思い当たるような者はいないこと、トリンス王国に確認を取り、見付かれば罰すること、知らせてくれたことへの感謝が書かれていた。
「これで確実にディランではなかったことは決定的になった…」
カメリアとの関係は勿論、書くことは出来ず、お金を渡したことも、詮索される恐れがあり、王女が騙されたとなることから、そちらも書かなった。
だが、もしも偽ディラン・パスドアーツが見付かれば、話すかもしれない。
そうなれば、カメリアのことは公にはならなくとも、知られることになってしまうだろう。そうなれば、やむを得ないと考えて、文を書いた。
カメリアに現実を見せるためにも、話をすることにした。
「念のためパスドアーツ公爵家に確認をした」
「え?どうだったの?間違いだたったでしょう?」
「いや、ディラン・パスドアーツはここ一年、トリンス王国には行っていないそうだ。間違いなく、別人ということだな」
「…」
カメリアはお父様が、あの写真は間違いだった、カメリアの会っていた方が、ディラン・パスドアーツで、婚約の申し込みがあったと言ってくれることを、想像することで、どうにか精神を保っていた。
「父親である、パスドアーツ公爵からの手紙だ。間違いであるはずはない」
「じゃあ、あの人は誰なの?」
私の愛したあの人は一体誰なのか、考えないようにしていた疑問が、一気に押し寄せて来た。
「分からない、カメリアも何か心当たりもないのだろう?パスドアーツ公爵にも皆から聞いた人相を教えたが、心当たりはないそうだ」
「じゃあ、私は…」
「パスドアーツ公爵がトリンス王国に問い合わせてみるそうだから、何か分かるかもしれない」
「本当?」
カメリアはその言葉に、微かな希望を見出していた。
「カメリアのことを彼が話すことになるかもしれない」
「それの何が問題なの?」
「ディラン・パスドアーツではないのだ。身分を詐称していたのだから、捕まることになる。そして、カメリアを騙した、いや、王女が騙されて関係を持ったということを、話すかもしれないということだ」
「なんてことだ…」
「既成事実があれば、結婚が出来ると思っていたようです」
「はあ…妊娠は?」
「本人は思ってもいない様子で、謹慎を命じましたので、分かるまでは部屋から出さないつもりです」
「そうだな、他の子どもたちのこともあるからな」
万が一、妊娠しているとしたら、話さなくてはならないが、さすがに妊娠したかもしれないと言うつもりはない。
「アマリリスの方がマシだと思うとはな…」
「ええ、学園で風紀の乱れを感じていたことが、良かったのでしょう」
「相手にされなかっただけというのもあるがな」
「…」
オリビアも王子もだが、王女も沢山いても、引く手あまただと思っていた。だが、婚約は決まらない上に、問題を起こして、まだ下に4人もいるのに、このままではお荷物を抱えていると思われると、ようやく自覚しつつあった。
「パスドアーツ公爵家には文を出した。だが、見付けるのは困難だろうな。侍女もメイドも顔は分かるだけであった。カメリアに付いて行こうと思ったが、カメリアがお付きの方もいるから、二人で大丈夫だと言ったそうだ」
「騙すのなら簡単だったでしょうからね」
そして、パスドアーツ公爵家から返事が届いた。
バトワスはその文を読み終えて、一人ふーっと息を吐き出した。
「想定内ではあるな…」
パスドアーツ公爵は、そのようなことは一切、知らなかったこと。ディラン・パスドアーツはここ一年、トリンス王国には行っていないこと。
ゆえに、絶対にその男性はディランではない。
カメリアと侍女とメイドに聞いた人相を記したが、思い当たるような者はいないこと、トリンス王国に確認を取り、見付かれば罰すること、知らせてくれたことへの感謝が書かれていた。
「これで確実にディランではなかったことは決定的になった…」
カメリアとの関係は勿論、書くことは出来ず、お金を渡したことも、詮索される恐れがあり、王女が騙されたとなることから、そちらも書かなった。
だが、もしも偽ディラン・パスドアーツが見付かれば、話すかもしれない。
そうなれば、カメリアのことは公にはならなくとも、知られることになってしまうだろう。そうなれば、やむを得ないと考えて、文を書いた。
カメリアに現実を見せるためにも、話をすることにした。
「念のためパスドアーツ公爵家に確認をした」
「え?どうだったの?間違いだたったでしょう?」
「いや、ディラン・パスドアーツはここ一年、トリンス王国には行っていないそうだ。間違いなく、別人ということだな」
「…」
カメリアはお父様が、あの写真は間違いだった、カメリアの会っていた方が、ディラン・パスドアーツで、婚約の申し込みがあったと言ってくれることを、想像することで、どうにか精神を保っていた。
「父親である、パスドアーツ公爵からの手紙だ。間違いであるはずはない」
「じゃあ、あの人は誰なの?」
私の愛したあの人は一体誰なのか、考えないようにしていた疑問が、一気に押し寄せて来た。
「分からない、カメリアも何か心当たりもないのだろう?パスドアーツ公爵にも皆から聞いた人相を教えたが、心当たりはないそうだ」
「じゃあ、私は…」
「パスドアーツ公爵がトリンス王国に問い合わせてみるそうだから、何か分かるかもしれない」
「本当?」
カメリアはその言葉に、微かな希望を見出していた。
「カメリアのことを彼が話すことになるかもしれない」
「それの何が問題なの?」
「ディラン・パスドアーツではないのだ。身分を詐称していたのだから、捕まることになる。そして、カメリアを騙した、いや、王女が騙されて関係を持ったということを、話すかもしれないということだ」
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