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「お父様」
その日もカメリアは、バトワスを訪ねていた。
「縁談のことか?」
「もしかして、来ましたか?」
「いいや、来ていないが、何か当てがあるのか?」
さすがのバトワスも、これだけ来るのだから、当てがあるのかもしれないと思い始めていた。
「実は…トリンス王国で、知り合った男性がいるのです。学園ではありませんし、トリンス王国の令息ではありません」
「っ、そうか…」
禁止事項には触れていないのだろうが、結局は結婚相手を探していたのか。
問題にはならなかったのなら良かったと言っていいのか?いや、相手がトリンス王国でなかったことは、運が良かったとも言えるのかもしれない。
「どこの国だ?」
「ドリーツ王国です」
「ドリーツ王国か…」
ドリーツ王国の王族にも縁談を申し込んだが、同じ理由で断られており、貴族でも嫁がせることが出来るのならば有難いとは思う。
援助を受けられれば尚いいが、一人でも嫁がせられればいい。
「それで婚約という話になったのか?」
「はい」
「名前は?」
「パスドアーツ公爵家のディラン様です。ご家族に話してから、申し込みをさせて貰いたいと言ってくれていたの」
「パスドアーツ公爵家なら聞いたことがある」
「はい、私も調べました」
カメリアもドリーツ王国のことは知らなかったので、学園でパスドアーツ公爵家について調べた。由緒正しい公爵家で、写真まではなかったが、ディランとバックスという息子が二人いるとあった。
「連絡はあったのか?」
「え?いえ」
普通なら連絡くらいはするのではないかとは思うが、本人は良くても、親が反対して、許しがなかなか得られていないのかもしれない。
「確認を取ることは出来るが…」
バトワスは事実なら嬉しいことだが、王太子としては、カメリアの言葉だけを鵜呑みにするわけにはいかない。
「少し時間は掛かるかもしれないけど、申し込んでくれるって言ってくださったの」
「では、もうしばらく待つか?」
「ええ、そうします」
バトワスは調べる時間が欲しかったこと、カメリアはこちらから急かすのが嫌で、ディランの方から求めてくれるのを待ちたかった。
カメリアが部屋を出ていくと、事務官を呼んで、ドリーツ王国のディラン・パスドアーツ公爵令息について調べるように頼んだ。
そして数日後、婚約の申し込みはないままで、写真はまだ見付かっていなかったが、年齢や経歴は分かった。
「ディラン・パスドアーツ様は、現公爵夫妻の二人いらっしゃるお子様の、長男でございます。婚約者はおらず、研究所に勤める研究者で、年齢は19歳」
「研究者か…」
「はい、ですので、次男である弟君がパスドアーツ家を継がれるのではないかという話です」
「嫡男ではないのか?」
「まだ定められていないということです。弟君はまだ12歳ですから」
「そうか…」
有難いと思いながらも、嫡男ではない相手に嫁がすのはと考えてしまっていた。おそらく、研究を続けたいから、公爵家は弟に継がそうと思っているのだろう。
「写真は研究所か、結婚式に参列した際の写真があるかもしれないということでしたので、現在引き続き探しておりますので、もうしばらくお待ちください」
「ああ、頼む」
留学先でのことであるため、一緒に行かせた侍女とメイドもディランの顔は見ていたが、それがディラン・パスドアーツだとは分かるはずもなかった。
パスドアーツ公爵家に確認を取るにしても、カメリアに念のため、ディランの容姿を確認して貰わなくてはならない。
婚約の申し込みが届けば、間違いないだろうが、届いた様子はない。
そして、写真が見付かり、眼鏡を掛けた凛々しい令息であった。嫡男となるかは気になるところだが、その前にカメリアに確認をして貰うことにした。
「この中に、ディラン・パスドアーツはいるか?」
「いえ、おりません」
その言葉に、バトワスは一気に心配が押し寄せて来た。
その日もカメリアは、バトワスを訪ねていた。
「縁談のことか?」
「もしかして、来ましたか?」
「いいや、来ていないが、何か当てがあるのか?」
さすがのバトワスも、これだけ来るのだから、当てがあるのかもしれないと思い始めていた。
「実は…トリンス王国で、知り合った男性がいるのです。学園ではありませんし、トリンス王国の令息ではありません」
「っ、そうか…」
禁止事項には触れていないのだろうが、結局は結婚相手を探していたのか。
問題にはならなかったのなら良かったと言っていいのか?いや、相手がトリンス王国でなかったことは、運が良かったとも言えるのかもしれない。
「どこの国だ?」
「ドリーツ王国です」
「ドリーツ王国か…」
ドリーツ王国の王族にも縁談を申し込んだが、同じ理由で断られており、貴族でも嫁がせることが出来るのならば有難いとは思う。
援助を受けられれば尚いいが、一人でも嫁がせられればいい。
「それで婚約という話になったのか?」
「はい」
「名前は?」
「パスドアーツ公爵家のディラン様です。ご家族に話してから、申し込みをさせて貰いたいと言ってくれていたの」
「パスドアーツ公爵家なら聞いたことがある」
「はい、私も調べました」
カメリアもドリーツ王国のことは知らなかったので、学園でパスドアーツ公爵家について調べた。由緒正しい公爵家で、写真まではなかったが、ディランとバックスという息子が二人いるとあった。
「連絡はあったのか?」
「え?いえ」
普通なら連絡くらいはするのではないかとは思うが、本人は良くても、親が反対して、許しがなかなか得られていないのかもしれない。
「確認を取ることは出来るが…」
バトワスは事実なら嬉しいことだが、王太子としては、カメリアの言葉だけを鵜呑みにするわけにはいかない。
「少し時間は掛かるかもしれないけど、申し込んでくれるって言ってくださったの」
「では、もうしばらく待つか?」
「ええ、そうします」
バトワスは調べる時間が欲しかったこと、カメリアはこちらから急かすのが嫌で、ディランの方から求めてくれるのを待ちたかった。
カメリアが部屋を出ていくと、事務官を呼んで、ドリーツ王国のディラン・パスドアーツ公爵令息について調べるように頼んだ。
そして数日後、婚約の申し込みはないままで、写真はまだ見付かっていなかったが、年齢や経歴は分かった。
「ディラン・パスドアーツ様は、現公爵夫妻の二人いらっしゃるお子様の、長男でございます。婚約者はおらず、研究所に勤める研究者で、年齢は19歳」
「研究者か…」
「はい、ですので、次男である弟君がパスドアーツ家を継がれるのではないかという話です」
「嫡男ではないのか?」
「まだ定められていないということです。弟君はまだ12歳ですから」
「そうか…」
有難いと思いながらも、嫡男ではない相手に嫁がすのはと考えてしまっていた。おそらく、研究を続けたいから、公爵家は弟に継がそうと思っているのだろう。
「写真は研究所か、結婚式に参列した際の写真があるかもしれないということでしたので、現在引き続き探しておりますので、もうしばらくお待ちください」
「ああ、頼む」
留学先でのことであるため、一緒に行かせた侍女とメイドもディランの顔は見ていたが、それがディラン・パスドアーツだとは分かるはずもなかった。
パスドアーツ公爵家に確認を取るにしても、カメリアに念のため、ディランの容姿を確認して貰わなくてはならない。
婚約の申し込みが届けば、間違いないだろうが、届いた様子はない。
そして、写真が見付かり、眼鏡を掛けた凛々しい令息であった。嫡男となるかは気になるところだが、その前にカメリアに確認をして貰うことにした。
「この中に、ディラン・パスドアーツはいるか?」
「いえ、おりません」
その言葉に、バトワスは一気に心配が押し寄せて来た。
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