悪意か、善意か、破滅か

反省２

「慰謝料って…」
「ごめんなさいで済むはずがないだろうが！私は反省しろと言ったんだ！誰がこんな手紙を書けと言った？お前は何も分かっていないのか？」

　反省をするように言ったはずが、シャーリンといい、なぜこんなことになったのかと、頭を抱えたいのはこちらだと思った。

「だって、お母様が手紙を書いてみたらいいって…」
「は？シャーリンがそう言ったのか？」
「そ、そうよ」

　今度はシャーリンを執事に呼びに行かせると、シャーリンは何も告げていないのに、微笑みながらやって来た。

「どうしたの？」
「お前がミミリーにリンダーバル公爵家に手紙を書くように勧めたのか？」
「お相手は知らないけど、恋人になりかけていたと聞いたから、手紙を出してみたらとは言ったわ」
「ふざけるな！」

　急に大きい声を出されて、シャーリンは驚いた。

「っな、何よ…」
「リンダーバル公爵家から抗議が来た…」
「え？」

　シャーリンはリンダーバル公爵家は分からないが、おそらくミミリーのお相手なのだろうと思った。だが、抗議はというのは、さすがに不味いことは分かる。

「慰謝料が必要になるだろう…ふざけやがって」
「そんな…ミミリー、あなた恋人になるはずだったって言ったわよね？嘘だったの？」
「嘘じゃないわ」
「じゃあ、どうして抗議が来るのよ」
「誤解があるのよ」
「何が誤解だ？お前はデューオ・リンダーバル様に不愉快だと訴えられて、国に帰されたのに」
「そんな…」

　ミミリーは驚愕の表情を浮かべて、素直に驚いた。

「彼がそんなことをするはずないわ」
「これが現実だ、それなのにこんな手紙を出して、愛を囁かれたのか？好きだと、愛しているとでも言われたのか？」
「彼は微笑んでいたわ」
「微笑んでいたから、何だ？」
「嫌がっていない、受け入れてくれたってことでしょう？」

　デューオは微笑みながら、拒絶していたのだが、ミミリーには届いていなかった。令息たちはどんな難癖を付けられるか分からないと、一緒に行動していたのだが、ミミリーはここでなければいいとまで、思っていたのである。

「そんなはずないだろう？誰がそんなことを言った？」
「それは…」
「謝罪に行って、慰謝料を払ってくる…ミミリー、お前には稼いで返して貰う」
「そんな！」

　手紙だけでこんなことになるなんて思っていなかった、彼から連絡が来て、婚約をして、結婚する未来を見ていただけなのに。

「慰謝料は皆の教育資金を使わなくてはならないんだ、お前のせいなのだから、お前が補填すべきだろう？」
「学園はどうするのよ」
「辞めさせる」
「それはやり過ぎよ、ミミリーの未来はどうなるの！」

　貴族として、留学して別の学校をということはあるが、アジェル王国にいるなら学園を出なければ、良い縁談には恵まれない。

「じゃあ、お前が慰謝料を用意するんだな？」
「そんなの無理に決まっているじゃない」
「じゃあ、どうやって金を工面するんだ？口ばかりではどうにもならないんだぞ！」
「っっっ」
「私は謝罪に向かうから、辞めたくないならば、戻ってくる前に自分で稼ぐことを決めるか、母親に用意して貰え！お前のせいで皆に迷惑を掛けるんだからな」
「お、お母様…」

　ミミリーは縋るような目で、シャーリンを見たが、シャーリンは目を泳がせるだけだった。

　ジェフはリンダーバル公爵家に、謝罪と慰謝料を持って行った。渡航費だけでも、逼迫し続けているマクローズ伯爵家には、厳しい出費であった。

「あなた方、ご夫婦は恋愛結婚の象徴と呼ばれているそうですね」
「っえ」
「そういった両親だと、やはり子どもは憧れるのではないかと、多少は目を瞑ったのですがね…」
「申し訳ございません」

　今後はこのようなことはないように、ミミリーを監視をすることを約束して、どうにか許して貰えることになった。