悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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反省1

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「反省もしていないのに帰って来たのか?」

 焦って反省したのかと思ったら、そうではないようで、呆れるしかなかった。

「何よ、そんないい方しなくてもいいじゃない…私たちは王太子殿下の後押しもあって結婚したのよ?離縁が出来るはずがないでしょう?」
「王太子殿下にも話はして来た…」
「…え?王太子殿下に会っていたの?」
「そうだ」

 まさかバトワス王太子殿下に会いに行っていたとは思わず、しかも離縁のことを話しただなんて…シャーリンは王太子殿下に認められた結婚だから、離縁など出来ないと思っていたのである。

「王太子殿下は認めたの…?」
「続けられないのなら仕方ないことだろうと、言ってくださった」
「嘘…本気なの?」

 シャーリンは、一気に離縁が現実化した。

「そう言っただろう?冗談だと思ったのか?」
「だって…」
「王太子殿下に認められたから、強気でいたのか?」
「そ、そうじゃないけど…」

 ジェフは目を逸らしたシャーリンを見て、図星だと分かった。だからこそ、迎えに来いなどと書くことが出来たのだろう。

「家のことも、子どもたちのことですら考えられない妻は、いても仕方ないだろう。君にとって必要なのは、欲を満たす相手だろう?」
「っな、そんな違うわ」
「じゃあ、どうして少しでも手伝おうとしない?どうして、そんなことと言える?」
「…」

 シャーリンは反省したと言うことは出来るが、そう言えば、手伝わなくてはならなくなるのは嫌だったので、黙り込んだ。

「はあ…どうするか答えを出してくれ」
「離縁はしないわ」
「じゃあ、反省が出来るまで考えてくれ。そのくらい、出来るだろう?まだやることがあるんだ、部屋に戻るか、実家に帰るかしてくれ」

 シャーリンは偉そうに言われて、意見を変えないジェフに腹も立ったが、実家にも帰りたくない、離縁もされたら困ることから、部屋に戻ることにした。

 部屋に戻り、一人になったシャーリンは、何なのよ!どうして私にあんなことが言えるの?どうしてジェフは変わってしまったの…私はそんなに難しいことを言っているかしら…難しいことばかり言うのはジェフじゃない…どうしてこんなことになったのよ…結婚当初に戻りたいなどと嘆いていた。

 ジェフもきょうだいも知らぬ間に、ミミリーは勝手に話し掛けていただけの公爵令息に会いたい、会えなくて寂しい、出来ることなら会いに来て欲しい、どうか迎えに来て欲しいなどと書いた手紙を出していた。

 ミミリーは何度か出したが、返事が来ないことで、届いていないのかもしれないと思い、三通も出していたのである。

 そして、ミミリーとシャーリンのことで、マクローズ伯爵邸がギスギスしている中、ついに抗議が届いた。

 ジェフはオズレ王国のリンダーバル公爵家とは、何の繋がりもないのにと思いながらも、手紙を開くとそこにはミミリーが何度も、息子であるデューオに不愉快極まりのない手紙を送って来ていると書かれており、複写も封入されていた。

「何だこれは…」

 デューオは既に不愉快だと訴えて、国に帰されたはずなのに、これはどういうことだと書かれている。

 ミミリーを執事に呼びに行かせた。

「お父様、何でしょうか…」
「これはどういうことだ!」

 ミミリーの前にリンダーバル公爵からと手紙を出すと、リンダーバル公爵と見えたのが、嬉しそうに手に取ったが、内容を読んで、困惑の表情に変わっていった。

「どうして…」
「聞きたいのはこっちだ!どうしてこのような手紙を出したのだ!」
「こんなつもりじゃ…」

 てっきりミミリーは返事が来たのだと思った、もしかしたらこちらに来てくれるという手紙ではないかとすら思っていた。

「どういうつもりもあるか!お前が慰謝料を払えるのか!」

 ジェフの怒鳴り声が響き渡っていた。
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