悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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不満

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 アマリリスもミミリーも、令息たちの反応が不服であった。

 アマリリスは、王女だと持ち上げてくれると思っていた。それなのに、『ようこそ』程度で、話は弾まず、話し掛けてても、大事な話をしているからと断られる。

 それでも好みの男性がいたので、どうにか混ぜて欲しいと割り込んだが、困りますと言われる始末。それなのに、果敢に話し掛けていたのである。

 アマリリスにとっては王女なのよと言わなかったことを、褒めて欲しいくらいと思っていた。

 ミミリーは子どもの頃は可愛いと言われていたことから、母国は競争率が高くても、他国であればちやほやして貰えると思った。

 アマリリスに付き合ったのも、アマリリスの側ならば、高位貴族に出会えるだろうと思っていたからである。

 競争率の高い場では叶わないと思ったことは正解ではあったが、他国の方が競争率が低いというわけではない。特に高位貴族を狙っているミミリーは、余程のことがない限り、選ばれる可能性が低いことを知らない。

 しかも、持参金を多く用意出来ないことも、アマリリスと同じで、向こうが少なくてもいいと言ってくれるだろうと思っていた。

 腹立たしさを抱えたジェフの元に、シャーリンがやって来た。

「ジェフ…」
「金を無駄にした…行かせるのではなかった!」

 ジェフはミミリーだけ留学させることには反対であった、それでもきょうだいたちは、そんなに行きたいのなら行かせてあげればと言ってくれた。

「素敵な方がいたのよ」
「サインして行っただろう!」
「それはそうだけど…」
「慰謝料まで請求されていたら、他の子どもたちにも影響があったんだぞ!」
「そんなに怒らないで」

 シャーリンも留学には賛成しており、あまりに暢気な様子にジェフは腹を立てた。

「怒りたくもなるさ…情けない」
「天候が戻って、元通りになれば、お金も増えるわよ」
「いつだ?」
「え?」
「そんないつになるか分からない話で、子どもたちの将来がどうにかなるのか?」

 天候が元に戻れば、水不足は解消されるだろう。

 農作物も前のように育てられるかもしれない、だが今は水不足でも育てられるように変えたために、すぐにとはいかない。

「そ、それは…」
「適当なことを言うな、ちゃんと考えて話してくれ」
「分かったわ…でも、もう今日休んだら?疲れたでしょう?」
「いや、まだやることがある」
「でもぉ、もうお顔が付かれているから、休んだ方がいいと思うわ。私が癒して差し上げますから」

 シャーリンはジェフの手に、自分の手を入れて、微笑んだ。これがジェフとシャーリンの閨への誘いの合図であった。

 だが、ジェフはその手を払った。

「いや、まだ読まなくてはいけない書類があるんだ。先に寝てくれ」

 バトワス王太子とオリビア王太子妃と同じような会話が、マクローズ伯爵家でも繰り広げられていた。

「でも、無理はよくないわ」
「無理をしなくてはいけないんだ、無駄な金を使ってしまったんだからな」
「明日にしましょうよ」
「いいや、今日読み終えたいんだ」
「もう!最近、全然してくれないじゃない!したいのよ」

 オリビアとシャーリンの違いは、気持ちを口にすることであった。

「やることがあるんだ、君は手伝ってもくれないじゃないか」

 シャーリンは子爵令嬢ではあったが、教育はあまりされておらず、夫人教育もままならないまま、結婚することになったこと、その後は妊娠が続き、ジェフの仕事を手伝ってくれる存在ではなかった。

 それでもシャーリンにやる気があれば違ったが、私は難しいことは苦手、失敗したら申し訳ないからと逃げてばかりであった。

「それなのに、夜も働かせようとするのか…」
「っな、どうして、愛する妻にそんなことが言えるのよ!酷過ぎるわっ!」
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