悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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 アマリリスはアジェル王国の第一王女であること、母国よりもこちらに嫁ぐのもいいかもしれないわねと、周りに聞かせるような行動を取り、令息ばかりに『教えて欲しいのだけど』と言いながら、果敢に話し掛けていたと報告書にあった。

「ならば令息と友人となろうとしたと言うのか?」
「そうよ!そう言ったじゃない!」
「結婚相手を探して何が悪いのよと言ったじゃないか」
「そ、それは…」

 結婚相手を探していたと言って置きながら、友人などと言っていることがおかしいとも気付かないのか。

「はあ…オズレ王国は今後、留学は考えさせてもらうと言われたよ…アマリリスの責任だからな」
「っ、私だけのせいじゃないわ」

 一緒に留学した令嬢もおり、アマリリスと一緒に行動しており、同様の理由で国に戻されている。

「王女だからだ!自分でそう言っていたじゃないか…許される立場ではない」
「王女なら、優遇してくれてもいいじゃない…」

 サインとしておきながら、責任がある王女ではなく、王女だから優遇して貰えると思ったのだろう。情けなくて、これ以上話す気にもなれなかった。

「しばらく反省していなさい…」

 アマリリスは部屋に連れていかれて、もう留学させることは出来ないと判断した。慰謝料を請求されることはなかったが、本来、留学に当てていたお金を迷惑料として、学園に寄付することにした。

 そして、アマリリスと一緒に行動していたのが、ジェフとシャーリンの娘で、マクローズ伯爵家の次女・ミミリーであった。

 幼なじみのような関係で、同様にサインをして留学していたが、結婚相手を探していたために、アマリリスと同じ行動を取っていた。

「何てことをしてくれたんだ!」

 マクローズ伯爵家でも同じ言葉で叱られていたが、理由は少し違う。

「折角、金を用意してやったのに…」
「でも」
「でもではない!」
「ごめんなさい…」

 怒っているジェフの様子にミミリーは、謝ることにした。

「勉強したい、ドレスも要らないって言ったじゃないか…」

 王家とは違って留学に行かせるような余裕はなかった。だが、ミミリーはどうしても他国で学んでみたいというので、どうにかお金を工面したのである。

「それなのに、何をしに行ったんだ。お前がアマリリス殿下を止めるべきだったのではないか?一緒になって、何をしているんだ…」
「私が止められるわけないじゃない…」
「ミミリーとアマリリス殿下のせいで、オズレ王国には今後、留学は出来ないだろうということだ…憎まれることも覚悟しなさい」
「そんな…」
「それほどのことをしたのだ」

 留学がなくなったのだから、学園に行かなくてはならない。オズレ王国への留学を希望する生徒は、アマリリスとミミリーのせいで難しいことを知ることになる。

「お前はもう持参金が要らない相手しか無理だからな」
「そんな!でも途中で帰されたのだから、その分のお金は掛からなかったじゃない」

 王女であるアマリリスとは違って、半年間の予定で、安い寮に最低限の費用で留学したミミリーだったが、二ヶ月も経たずに戻って来たのだから、残りの費用は掛からないはずだと考えた。

「迷惑料として学園に寄付をすることになった」
「何で…そんなこと、払わなくてもいいわよ」
「私だって払いたくはない」

 ジェフだって払いたくはないが、外交担当から慰謝料は請求されなかったが、迷惑料は今後のために支払ってくださいと言われたのである。

「じゃあ」
「今後のアジェル王国からの留学のために、そのくらいしか出来ないからだ!そんなことも分からないのか!きょうだいたちにも謝れ!」
「っひ」

 ミミリーはジェフの気迫に、大人しく部屋に戻るしかなかった。

 結局、自分の容姿に自信のあったミミリーは、アマリリスと同じ考えを持ち、勉強するという理由で結婚相手を探しに行ったのである。だが、アマリリスと同様の対応をされるだけであった。
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