悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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留学

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 王子や王女たちも、さすがに子どもが多いことで、国内で縁談がなかなか纏まらないことも、揉めていることも知っている。

 水不足も、国がどうにかしようとしているが、水を生み出す技術はなく、出来ることは節水することくらいしかないと、厳しい状況であることは分かっている。

 貴族からもせめて王女だけでも他国に嫁いで欲しいと言われており、王女たちも競争率の高い自国よりも、裕福な他国に嫁ぎたいと希望している。

「例えば何ですか」

 第一王子が質問をした。

「教育、衣装、後は婚約、結婚の費用などだな」
「持参金ってことですか?」

 第二王女が質問した。

「ああ、嫁ぐ場合は含まれる」
「でも、相手が要らないって言えば関係ないことじゃない?」

 王子たちは黙っているが、王女たちはうんうんと頷いている。王女ということもあって、自信がないよりは自信がある方がいいのだが、価値が高いと思っている。

 だが、話を持って行った縁談は悉く断られていることを、オリビアが悲しむだろうからと、王家や高位貴族は婚約者が既にいると伝えて、真実は伝えてはいない。

「王子や王女が、持参金なしなどあり得ない」
「そうよ!侮られることになるのよ」

 暢気に考えている王女たちに、オリビアも声を上げた。

「でも、相手がいいって言えばいいんじゃないの?」
「一生、言われるのよ?持参金も用意が出来なかったって」
「ええ!それは嫌だわ」
「そうでしょう?持参金がないからって、粗末な扱いになったらどうするの?」

 そう言われると、王女たちも黙り込み、目を合わせて困った顔をしている。

「どうするかちゃんと考えるように」

 王女たちはどうするなんて言いながら、皆で話していた。王子たちはそれぞれに考えがあるようで、黙って見ていた。

「今決めなくてもいい。留学したいのならば、個別に私に言ってきなさい。相談は私でも、オリビアでもいい。ちゃんと考えなさい」

 王子たちは全員、留学を希望した。

 第一、第二王子は王家に残る考えのようであった。王太子は第一王子だと言われているが、正式には決めていない状態である。

 早く決めた方がいいという声もあるが、王太子という立場で利があるのであれば、第一王子ではなくていいと思っている。

「私はその予算を持って、王家を出ることは可能ですか?」

 言い出したのは、第三王子である13歳のパベルであった。

「王家を出るつもりなのか?」
「はい、これだけ子どもがいて、余裕があるならいいですが、そうではないでしょう。私は学べるだけ学んで、王家を抜けて、働こうと思います」

 ハッキリ言って、皆が優秀だと言うのは、賢王と呼ばれた祖父に似ていると評判のパベルであった。

 留学して、勉強するのには特に賛成であり、水不足の対策を、何か持って帰ってくれないかとすら思っていた。

「父上、良いのではありませんか。パベルは勉強が好きなのですから」
「そうですよ」

 パベルがいると、自分たちの立場が危ういと思っている第一王子と第二王子は、あからさまにホッとした様子で、賛同した。

「留学は許可するが、抜けるのはまだ決められない。王家の予算を使うだけ使って置いて、何も返せていないことになってしまう」
「確かにそれはそうですね」

 それは王子と王女全員に言えることではあるが、聡明なパベルはすぐに理解した。

 だが、母国にいても学園は婚約や結婚のことで、荒れていると聞き、留学するためには受け入れるしかないと思った。

「ですが王家を抜けられなくても、私は働きに出るつもりだと思っていてください」

 パベルは希望通りに予算を使って、禁止事項にも問題ないとサインをして、留学に早々に向かった。

 持参金のことを考えて、予算をあまり使いたくない王女たちは、短期留学を希望した。それも一つの手だと思いバトワスは了承したが、禁止事項に第一王子、第二王子は納得したが、王女たちは違った。
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