悪意か、善意か、破滅か

留学先２

「子どもを作ろうとしていたのだろうと、そんな考えのお国柄の方にはこちらの考えに従って貰わなくてはならないと」
「それは、ジェフと夫人だけだろう」

　皆がそのような考えであると思われては、堪らない。

「そうだとしても、王太子殿下が支持して、婚約も白紙や解消ではなく、破棄したのでしょう？ということは、婚約をしていても、そういった振る舞いが許されるとされるのですよ」
「誰がそんなことを？フォンターナ家が吹聴したのか…？」

　子どもを作ろうとしていたなど、バトワスはジェフに聞いていたが、婚約破棄の際にはそんな話はしておらず、フォンターナ伯爵家は何も反論しなかった。

「分かりませんが、王家がそのように言うのですから、噂ではなく、伝わっているということです」
「っな、それは…違うと否定しなくては」
「事実なのに、どうやって否定するのですか？」

　バトワスは縁談の際も否定はしたが、信用して貰うことは出来なかった。

「留学しても、異性に話し掛けるだけで、肩身の狭い思いをしているそうですよ。勉強するために行くには、問題ないと思いますが…王太子殿下が言ったように、結婚相手を探している者が多いのです」
「そうか…」

　自国で相手が見付からない者は、留学先で見つけようと、同じように考えており、サインをした上で暴走してしまうのだろう。

「進んで愛人になった者もいたようですが、その国は一切、留学を今後、受け付けないとされると思われます」
「そんな…どこの国だ？」
「カイニー王国です」
「っ」

　カイニー王国は温暖な気候の島国で、留学先としても人気があった。

「一体、誰がそのようなことを言い出したんだ？」
「…ペーリー・オドライズ侯爵令嬢です」

　侯爵家の令嬢が愛人でいいなどと、信じられなかったが、おそらく結婚相手に困ってのことだろう。

「既に国に帰されておりますが」
「なぜ何も言って来ない？」
「契約はオドライズ侯爵家ですから、報告は上げておりますが」

　読んでいないのは、バトワスの方だと言わんばかりに、大臣は机に積んである書類を見つめた。

「慰謝料を払って、金輪際関わらないということで終わったようです」
「そうか…きちんと読む」
「そうしてください」

　そう言って、外交担当は退室して行った。

　その後、報告書を見付けて読むと、ペーリー・オドライズ侯爵令嬢はサインをしたにも関わらず、婚約者が有無に関わらず、男性に擦り寄り、関係を持って、責任を取るように迫ったそうだ。

　だが、家族は了承するはずもない。侯爵家の令嬢が簡単に関係を持つことに嫌悪されたくらいである。

　愛人でもいいと言い出したのは、サインのことを言われたからである。

　国の問題にするつもりはないが、今後は考えさせてもらうと書いてあり、今後の留学は難しいだろうことも推測が出来た。

　カイニー王国は王家には世代がずれているので、婚約者に該当する王子や王女がいなかったために、王家には縁談は持ち込んでいなかったかが、すべて断られていたが、高位貴族には話をして貰っていた。

　留学先も限られてくることだろうと思うと、気が重くなった。

　それでも財政は厳しいながらも、王子と王女には予算は割り振られているので、留学を希望する者は予算が減っていくとするしかない。婿養子や嫁に行く者は持参金も減ることになる。

　バトワスはオリビアと共に、王子と王女を集めて話をすることにした。双子一組を含む１７歳から６歳までの子どもたちである。

「留学したい者はいるか？」

　第六王女以外は、全員が手を挙げ、通例となっているために仕方ないことだろう。実際にバトワスも留学に行かせて貰っている。

「正直、財政が厳しく、割り振られた予算内で行って貰う。留学費用によって、今後の自分たちの使うお金が減ると思って欲しい」