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「私は眠る前に毎日考えます。もっとリズに早くに気付けていたら、あの日、怪我をしたリズを抱えて、倉庫に隠れました。あなたが何者か分からず、さらに暴力を振るわれたら堪らないと思ったからです。でもリズの傷は深く、血は止まらず、父の金庫からお金を取って、医者に診せるために邸を出たのです」
「邸を出ていたのか…」
二人で火事から逃げ出して、リズファンだけが助からなかったのだと考えていた。
「でもリズは目を醒ますこともないまま、二日後に亡くなりました。こちらで初めて会った時に向けられた殺意、リズも同じように受けたのでしょう。リズファン・アズラインを殺したのは間違いなく、あなた。そして、手引きをしたのは夫人。それだけは一生変わりません」
「私は、知らなかったわ」
「だから言っているじゃありませんか、手引きしたのはと。あなたがその雄を引き入れなければリズファンは死ぬことはなかった。それも事実です」
「そんな、そんな、私は二人を助けようと」
「違います!あなたたちは結果的に殺人を犯しに邸に来たんですよ、そこを履き違えないで下さい」
「いや―――――!!」
「ラズリー、落ち着くんだ」
ラズリーの顔は真っ青で、髪の毛を振り乱し、掻きむしっている。
「二人が来なければ、勝手に出て行ってくれれば良かった。父親はクズで、母親は泣いてばかり、あんな人と結婚しなければ良かったと、私たちを否定し続けて」
「ちが、違う!それは違うわ」
「違わないでしょう?私は実家に頼れないのかと聞きましたよね?でもあなたは恥ずかしくて言えないと言った」
「それは…」
「あなたはその雄が助けてくれると、物語のヒロインにでもなった気だったのでしょう?そこに私たちへの感情は皆無。ご実家も王弟妃ということで恩恵を受けているそうですね。今さら、母親のような顔は止めてください。あなたが欲しかったのは女として、愛してくれる者でしょう?」
愛人が来てから、喧嘩をしているか、嘆いて泣くかしかなかった。思い出してみれば、あの日の前辺りから何度か話し掛けられたが、気味が悪いだけだった。
「私があなたたちが亡くなったと知ってどれほど悲しんだか」
「人の死はどんなものでも悲しいものよ、そんなの当り前じゃない?むしろ悲しんでいなかったら、人格を疑うでしょう?ねえ、ご主人?悲しむ素振りもなかったら、驚くでしょう?竜人は驚かない?」
「…」
「あんな腐った家でも、リズファンと二人で何とか生きていたんです。いずれ二人で、出て行こうと約束していました。辛いこともあったかもしれませんが、一秒でも幸せと思える時間があったはずです。それをあなた方は、自分の私利私欲のために奪ってくれたんです。悲しみしかない死は、私を導くには十分でした。リズファンを助けられなかった、あの時、医院に向かったのは正解だったのか、何度も考えました。私は同じように無意味に命を奪われなければ、リズファンに申し訳が立たない、リズファンに会った時に、私も同じ目に遭ったと言えませんからね」
「すまない、本当に…」
「本当はあなたに、リズファンを殺したあなたに、私は殺されたかった…」
敵意を向けながらも冷静だったミルシュアの極めて感情的で、その願いは叶わない、苦しそうな言葉であった。
「…私が言える立場ではないが、妹君はそんなこと望んでいないはずだ」
「あなたを殺したいですよ。ここで再会した時に、ああ、コイツだと思いましたから。でもリズが甦るわけではないですから、殺す価値もない。さあ、罪人がどうやってのうのうと生きていくか楽しみですね。私はもう二度と会うことはないでしょう。さようなら」
ミルシュアの告白は、二人を深い一生這い上っても、叩き付けられる闇に落とすには十分だった。
「待ってくれ、君が死ねば甥の命も危ないんだ。私たちは姿を消す、だから君は生きてくれないか」
「はあ?天秤というのはね、同等の物を用意する必要があるのよ?」
「私たちでは軽いということか」
「ええ、そして同等の者はあなたが殺したからもういない。分かるわね?」
ラズリーは泣きすぎて、気を失っている。ミルシュアが自殺しない理由がよく分かった、リズファンと同じようにならなければ、死んではならないと課しているのだ。
「邸を出ていたのか…」
二人で火事から逃げ出して、リズファンだけが助からなかったのだと考えていた。
「でもリズは目を醒ますこともないまま、二日後に亡くなりました。こちらで初めて会った時に向けられた殺意、リズも同じように受けたのでしょう。リズファン・アズラインを殺したのは間違いなく、あなた。そして、手引きをしたのは夫人。それだけは一生変わりません」
「私は、知らなかったわ」
「だから言っているじゃありませんか、手引きしたのはと。あなたがその雄を引き入れなければリズファンは死ぬことはなかった。それも事実です」
「そんな、そんな、私は二人を助けようと」
「違います!あなたたちは結果的に殺人を犯しに邸に来たんですよ、そこを履き違えないで下さい」
「いや―――――!!」
「ラズリー、落ち着くんだ」
ラズリーの顔は真っ青で、髪の毛を振り乱し、掻きむしっている。
「二人が来なければ、勝手に出て行ってくれれば良かった。父親はクズで、母親は泣いてばかり、あんな人と結婚しなければ良かったと、私たちを否定し続けて」
「ちが、違う!それは違うわ」
「違わないでしょう?私は実家に頼れないのかと聞きましたよね?でもあなたは恥ずかしくて言えないと言った」
「それは…」
「あなたはその雄が助けてくれると、物語のヒロインにでもなった気だったのでしょう?そこに私たちへの感情は皆無。ご実家も王弟妃ということで恩恵を受けているそうですね。今さら、母親のような顔は止めてください。あなたが欲しかったのは女として、愛してくれる者でしょう?」
愛人が来てから、喧嘩をしているか、嘆いて泣くかしかなかった。思い出してみれば、あの日の前辺りから何度か話し掛けられたが、気味が悪いだけだった。
「私があなたたちが亡くなったと知ってどれほど悲しんだか」
「人の死はどんなものでも悲しいものよ、そんなの当り前じゃない?むしろ悲しんでいなかったら、人格を疑うでしょう?ねえ、ご主人?悲しむ素振りもなかったら、驚くでしょう?竜人は驚かない?」
「…」
「あんな腐った家でも、リズファンと二人で何とか生きていたんです。いずれ二人で、出て行こうと約束していました。辛いこともあったかもしれませんが、一秒でも幸せと思える時間があったはずです。それをあなた方は、自分の私利私欲のために奪ってくれたんです。悲しみしかない死は、私を導くには十分でした。リズファンを助けられなかった、あの時、医院に向かったのは正解だったのか、何度も考えました。私は同じように無意味に命を奪われなければ、リズファンに申し訳が立たない、リズファンに会った時に、私も同じ目に遭ったと言えませんからね」
「すまない、本当に…」
「本当はあなたに、リズファンを殺したあなたに、私は殺されたかった…」
敵意を向けながらも冷静だったミルシュアの極めて感情的で、その願いは叶わない、苦しそうな言葉であった。
「…私が言える立場ではないが、妹君はそんなこと望んでいないはずだ」
「あなたを殺したいですよ。ここで再会した時に、ああ、コイツだと思いましたから。でもリズが甦るわけではないですから、殺す価値もない。さあ、罪人がどうやってのうのうと生きていくか楽しみですね。私はもう二度と会うことはないでしょう。さようなら」
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「はあ?天秤というのはね、同等の物を用意する必要があるのよ?」
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「ええ、そして同等の者はあなたが殺したからもういない。分かるわね?」
ラズリーは泣きすぎて、気を失っている。ミルシュアが自殺しない理由がよく分かった、リズファンと同じようにならなければ、死んではならないと課しているのだ。
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