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事実
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サリスは今度はミルシュアに求婚し、傭兵を辞めて一緒に暮らそうと誘い、断られることがお決まりとなっていた。
ラズリーが不安定なため、久しぶりに顔を合わせたサリスにカインドールは驚いたが、良かったと心からホッとした。
「彼女の様子はどうだ?」
「変わらずです…」
「でも、抱いたのだろう?香りが凄いぞ」
「あっ、はい…」
サリスはミルシュアの香りを纏っており、結ばれたことが容易に分かった。
「まさか無理矢理抱いたのか…」
「ち、違います。でもお金を払っています」
「金?」
「タダで抱かれるなんて勿体ないことは出来ないと」
「か、体を売っていたというのか…」
「おそらく、そういうことだと思います。女性一人で生きていくのに売らない方が難しいと、こんなのでもご飯代になるのよと言われました」
「何てことだ…そんな…恨まれて当然だな」
考えないようにしていたことであったが、そういったこともあったのではないかと思っていた。令嬢だった女性が傭兵になったことも驚いたが、お金に困れば、身体を売ったり、襲われることもあったのではないか、そんなことが頭を過っていた。
それでもサリスは結ばれたかった、私でもそうしたであろう。
ミルシュアの元にサリスがやって来るのは当たり前となり、宿屋は頻繁にやって来るために問題となり、サリスの用意した宿屋に移っていた。ミルシュアもお金を貰っているので、追い返すことはしなくなった。
「そろそろリズファンの命日なので、墓参りに行って来ますので、当分来ないでください」
「えっ、妹君は、亡くなっていたのか…」
「ええ、そうです」
あのいつも妹君を想う顔は既にもういないからだったとは思っていなかった。どこかで結婚して、幸せに暮らしているのかと思っていた。
「どこにあるんだい?私も一緒に行かせては貰えないか」
「いいえ、リズファンを忍ぶのは、リズを大事に思っている人だけです。墓はカペルル王国にあります」
「私にとっても既に大事な人だ」
「リズのことを何も知らないのに?」
「じゃあ、いつかでいい、一緒に連れて行ってくれ。今回は諦めるよ…」
「ええ、あなたが本当にリズを想うならね」
「ああ、気を付けて行ってくれ」
ミルシュアは墓参りに経つ前に、自ら離宮にラズリーに会いに行き、二人きりで話をすることとなった。
「会いに来てくれて嬉しいわ」
「最期に一つだけ伝えておこうと思いまして」
「あなた本当に…そんなことしてはならないわ」
「リズファン・アデラインは、あの火事の二日後に亡くなっています」
「亡くなった?そんな…二人は一緒だったんじゃないの」
ラズリーは二人はいつも一緒だったから、ミルシュアは会わせたくなくて、リズファンを隠しているだけだと思っていた。
「一緒でしたよ、リズファンはあなたの今の夫に殺されたんです」
「そんなはず…」
「私がこの目で見ましたから。娘を殺した男の子どもを産んで、また孕んで幸せですか?リズに会ったら伝えておきますね。あなたの母親はあなたを殺した人と愛し合って、子どもを産んで、とても幸せに暮らしていると」
「…そんな」
「あなたが今の夫を信じるならそれで結構です。信じて欲しいなどとは言いません。でも過程はどうであれ、事実は一つです」
カインドールはミルシュアが自ら会いに来たという報告を受け、ラズリーは大丈夫だっただろうかと思う反面、嬉しいことでもあっただろうと、何を話したのか訊ねようと横に座って、いつものように腰を抱こうとすると払い除けられた。
「いやあ!触らないで」
「どうしたんだい?触らないでなんて悲しいこと言わないでくれ」
「あなたがリズを殺したの?」
「何を言ってる?ミルシュア嬢に言われたのか?私が殺すはずないだろう」
「本当に?」
「本当だ!どうして私が殺さなくてはならない?」
「邪魔だとか」
「そんな訳ない!」
今日は一人にして欲しいと言われて、どういうことかと、確かに母親を奪ったのは事実だ。リズファンが既に亡くなっていることはミルシュアは言わなかった。だが生きているとも言わなかった。
サリスにも確認すると、亡くなったと聞いたこと、命日に墓参りに行くと言っていたと聞き、確かにあの火事の日にちはもうすぐであった。リズファンは火事で亡くなり、ミルシュアだけが生き残っていたというのか。
ラズリーが不安定なため、久しぶりに顔を合わせたサリスにカインドールは驚いたが、良かったと心からホッとした。
「彼女の様子はどうだ?」
「変わらずです…」
「でも、抱いたのだろう?香りが凄いぞ」
「あっ、はい…」
サリスはミルシュアの香りを纏っており、結ばれたことが容易に分かった。
「まさか無理矢理抱いたのか…」
「ち、違います。でもお金を払っています」
「金?」
「タダで抱かれるなんて勿体ないことは出来ないと」
「か、体を売っていたというのか…」
「おそらく、そういうことだと思います。女性一人で生きていくのに売らない方が難しいと、こんなのでもご飯代になるのよと言われました」
「何てことだ…そんな…恨まれて当然だな」
考えないようにしていたことであったが、そういったこともあったのではないかと思っていた。令嬢だった女性が傭兵になったことも驚いたが、お金に困れば、身体を売ったり、襲われることもあったのではないか、そんなことが頭を過っていた。
それでもサリスは結ばれたかった、私でもそうしたであろう。
ミルシュアの元にサリスがやって来るのは当たり前となり、宿屋は頻繁にやって来るために問題となり、サリスの用意した宿屋に移っていた。ミルシュアもお金を貰っているので、追い返すことはしなくなった。
「そろそろリズファンの命日なので、墓参りに行って来ますので、当分来ないでください」
「えっ、妹君は、亡くなっていたのか…」
「ええ、そうです」
あのいつも妹君を想う顔は既にもういないからだったとは思っていなかった。どこかで結婚して、幸せに暮らしているのかと思っていた。
「どこにあるんだい?私も一緒に行かせては貰えないか」
「いいえ、リズファンを忍ぶのは、リズを大事に思っている人だけです。墓はカペルル王国にあります」
「私にとっても既に大事な人だ」
「リズのことを何も知らないのに?」
「じゃあ、いつかでいい、一緒に連れて行ってくれ。今回は諦めるよ…」
「ええ、あなたが本当にリズを想うならね」
「ああ、気を付けて行ってくれ」
ミルシュアは墓参りに経つ前に、自ら離宮にラズリーに会いに行き、二人きりで話をすることとなった。
「会いに来てくれて嬉しいわ」
「最期に一つだけ伝えておこうと思いまして」
「あなた本当に…そんなことしてはならないわ」
「リズファン・アデラインは、あの火事の二日後に亡くなっています」
「亡くなった?そんな…二人は一緒だったんじゃないの」
ラズリーは二人はいつも一緒だったから、ミルシュアは会わせたくなくて、リズファンを隠しているだけだと思っていた。
「一緒でしたよ、リズファンはあなたの今の夫に殺されたんです」
「そんなはず…」
「私がこの目で見ましたから。娘を殺した男の子どもを産んで、また孕んで幸せですか?リズに会ったら伝えておきますね。あなたの母親はあなたを殺した人と愛し合って、子どもを産んで、とても幸せに暮らしていると」
「…そんな」
「あなたが今の夫を信じるならそれで結構です。信じて欲しいなどとは言いません。でも過程はどうであれ、事実は一つです」
カインドールはミルシュアが自ら会いに来たという報告を受け、ラズリーは大丈夫だっただろうかと思う反面、嬉しいことでもあっただろうと、何を話したのか訊ねようと横に座って、いつものように腰を抱こうとすると払い除けられた。
「いやあ!触らないで」
「どうしたんだい?触らないでなんて悲しいこと言わないでくれ」
「あなたがリズを殺したの?」
「何を言ってる?ミルシュア嬢に言われたのか?私が殺すはずないだろう」
「本当に?」
「本当だ!どうして私が殺さなくてはならない?」
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「そんな訳ない!」
今日は一人にして欲しいと言われて、どういうことかと、確かに母親を奪ったのは事実だ。リズファンが既に亡くなっていることはミルシュアは言わなかった。だが生きているとも言わなかった。
サリスにも確認すると、亡くなったと聞いたこと、命日に墓参りに行くと言っていたと聞き、確かにあの火事の日にちはもうすぐであった。リズファンは火事で亡くなり、ミルシュアだけが生き残っていたというのか。
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