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「ははははは、おかしなことを言うものだ。さっきは殺そうとしたのに、どちらがふざけているんでしょうか?あなたには中身がないのか?」
「あれは…すまなかった」
咄嗟に剣を抜いてしまったが、どこかの兵士だと思ったのだ。ミルシュア、確かに娘はそんな名前だった気がする。
「リズファンは?」
「さあ?教える必要があるのか?」
「一緒じゃないの?あの日、二人を探したのよ!」
「だったら、お前の方がリズを知っているんじゃないか?ビービー泣くしか出来なくとも、母親だろう?」
「そんな、私はずっと二人のことは忘れたことはないのよ、でも亡くなったって聞かされて…」
「じゃあ、二人とも死んだ。それでいいじゃないか、ご夫人?じゃあね~」
「待ってくれ!」
「殺してくれないなら、あなたにも用はないわ」
サリスはミルシュアを王宮に留まらせようと思っていたが、そんなことをするなら護衛と刺し違えても出て行くと言われているため、出来なかった。彼女は傭兵だ、必ずやり遂げるだろう。
名前だけは思わぬところから分かった、ミルシュア。
サリスはミルシュアを送るために追いかけて行き、ラズリーは呆気に取られていた。会いたかったと抱きしめて、娘も抱きしめ返してくれると思っていたのに、死にたいなどと言われるとは思っていなかった。
「どういうことなの?あなた亡くなったって」
「そう聞いていた」
「どうしてあんなこと言うの?あんな子じゃなかったわ」
「それは分からないんだ…」
「辛い目に遭ったのよね…きっと。私のせいで、私のせいで…」
「大事な身体に障るから、今日はもう休もう」
ミルシュアの過去を探らせたが、どうにも手がかりが少なく分からなかった。傭兵になってからのことは分かったが、その他には何も分からなかった。リズファンのことはどこで何をしているか、全く分からなかった。
サリスはカインドールからミルシュアのことを聞くことになった。
「ラズリー様は伯爵夫人だったんですよね?その娘がミルシュア」
「ああ、アズライン伯爵とのことは話しただろう」
「子どもは亡くなったと」
「ああ、そう聞いていた。そのことでラズリーが塞ぎ込んでいたからな」
「伯父上を罪人なんて」
「確かに彼女にとってみれば母親を奪った罪人だ。今までどう過ごして来たんだろうか…死にたいほど酷い目に遭っていたのかもしれない」
「はい、当時まだ十四歳です」
アズライン伯爵はラズリーの美貌に惚れこんで結婚したが、娘を二人産んだ辺りから愛人を囲うようになり、その後、愛人や子どもを邸に呼ぶようになったそうだ。ラズリーはカインドールの番ではあったが、結婚しているため番失くしで諦めようとしたが、彼女の境遇を調べると毎日泣き暮らしていると知り、耐えられなかった。
ラズリーと偶然を装って出会い、番だとは言わず、置かれている境遇から助けたい、離縁して子どもも引き取って一緒に暮らそうと話すと、ラズリーはぽろぽろ涙を零して喜んだ。
しかしアズライン伯爵は離縁を拒否した。妻あってこその愛人なのだ。でもカインドールは違法とされる薬草を栽培している証拠を持っていた。どちらにしろ終わりだと突き付け、関与していたのは伯爵と愛人で、調べようもないが、使用していたのではないかと思われる。
しかし、話し合いをしている最中に子どもたちは部屋からいなくなっていた。別の部屋にいるのか、怒鳴り声で逃げたのか分からず、捜索をしている内に伯爵邸には火が上がり、カインドールが泣き喚くラズリーを説得して、安全な場所に移して、駆け付けた時には火は回り切っており、消火してもどうにもならない状況だった。
その後、二人の娘は焼け跡から遺体が見付かったということだった。どこかに隠れていたのかもしれない。そう思うのが自然であった。
ラズリーは私のせいだと自分を責め続ける日々が続いた。しかしカインドールの愛によって、子どもも生まれ、今でも涙を流したりすることはあるが、また幸せと呼べる日々を過ごしていたのだ。
「あれは…すまなかった」
咄嗟に剣を抜いてしまったが、どこかの兵士だと思ったのだ。ミルシュア、確かに娘はそんな名前だった気がする。
「リズファンは?」
「さあ?教える必要があるのか?」
「一緒じゃないの?あの日、二人を探したのよ!」
「だったら、お前の方がリズを知っているんじゃないか?ビービー泣くしか出来なくとも、母親だろう?」
「そんな、私はずっと二人のことは忘れたことはないのよ、でも亡くなったって聞かされて…」
「じゃあ、二人とも死んだ。それでいいじゃないか、ご夫人?じゃあね~」
「待ってくれ!」
「殺してくれないなら、あなたにも用はないわ」
サリスはミルシュアを王宮に留まらせようと思っていたが、そんなことをするなら護衛と刺し違えても出て行くと言われているため、出来なかった。彼女は傭兵だ、必ずやり遂げるだろう。
名前だけは思わぬところから分かった、ミルシュア。
サリスはミルシュアを送るために追いかけて行き、ラズリーは呆気に取られていた。会いたかったと抱きしめて、娘も抱きしめ返してくれると思っていたのに、死にたいなどと言われるとは思っていなかった。
「どういうことなの?あなた亡くなったって」
「そう聞いていた」
「どうしてあんなこと言うの?あんな子じゃなかったわ」
「それは分からないんだ…」
「辛い目に遭ったのよね…きっと。私のせいで、私のせいで…」
「大事な身体に障るから、今日はもう休もう」
ミルシュアの過去を探らせたが、どうにも手がかりが少なく分からなかった。傭兵になってからのことは分かったが、その他には何も分からなかった。リズファンのことはどこで何をしているか、全く分からなかった。
サリスはカインドールからミルシュアのことを聞くことになった。
「ラズリー様は伯爵夫人だったんですよね?その娘がミルシュア」
「ああ、アズライン伯爵とのことは話しただろう」
「子どもは亡くなったと」
「ああ、そう聞いていた。そのことでラズリーが塞ぎ込んでいたからな」
「伯父上を罪人なんて」
「確かに彼女にとってみれば母親を奪った罪人だ。今までどう過ごして来たんだろうか…死にたいほど酷い目に遭っていたのかもしれない」
「はい、当時まだ十四歳です」
アズライン伯爵はラズリーの美貌に惚れこんで結婚したが、娘を二人産んだ辺りから愛人を囲うようになり、その後、愛人や子どもを邸に呼ぶようになったそうだ。ラズリーはカインドールの番ではあったが、結婚しているため番失くしで諦めようとしたが、彼女の境遇を調べると毎日泣き暮らしていると知り、耐えられなかった。
ラズリーと偶然を装って出会い、番だとは言わず、置かれている境遇から助けたい、離縁して子どもも引き取って一緒に暮らそうと話すと、ラズリーはぽろぽろ涙を零して喜んだ。
しかしアズライン伯爵は離縁を拒否した。妻あってこその愛人なのだ。でもカインドールは違法とされる薬草を栽培している証拠を持っていた。どちらにしろ終わりだと突き付け、関与していたのは伯爵と愛人で、調べようもないが、使用していたのではないかと思われる。
しかし、話し合いをしている最中に子どもたちは部屋からいなくなっていた。別の部屋にいるのか、怒鳴り声で逃げたのか分からず、捜索をしている内に伯爵邸には火が上がり、カインドールが泣き喚くラズリーを説得して、安全な場所に移して、駆け付けた時には火は回り切っており、消火してもどうにもならない状況だった。
その後、二人の娘は焼け跡から遺体が見付かったということだった。どこかに隠れていたのかもしれない。そう思うのが自然であった。
ラズリーは私のせいだと自分を責め続ける日々が続いた。しかしカインドールの愛によって、子どもも生まれ、今でも涙を流したりすることはあるが、また幸せと呼べる日々を過ごしていたのだ。
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