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皇女と王女1
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先程、陛下のところに私が来ていると聞き付けたシュアリーが、離宮に住まいを移したのに、相変わらずの様子で押し掛けて来た。
「お姉様、ルカス様は返すわ。だから、王太子に戻って」
「人は貰ったり返したりできるものではないと言ったでしょう」
「ルカス様を返せば元通りじゃない」
「欲しいと言ったのはあなたでしょう?そんなに欲しかったのでしょう?それなのに手放すの?それであなたはどうするの?」
「奪ったのは私だもの、別の縁談を探すわ」
シュアリーはアウラージュとルカスが戻れば、自身も元通りとなって、きっと縁談も届くはずだと信じている。
「シュアリー、その話はもう終わっただろう!」
陛下は声を上げたが、シュアリーは止まらない。アウラージュがどうにかしてくれるとまだ思っている。
「私が泣く泣く身を引くのよ」
「そうすれば可哀想な私になれると思っているのね?まさか私に紹介しろとでも言うのかしら?」
「サリキュース帝国に?」
「紹介はしないわよ、正確には出来ないわ」
「どうしてよ!王太子が変わっても、お父様は国王なんだから、私は王女でしょう!求められる立場でしょう!」
「価値を下げたのは自分自身でしょう?」
「そんなことしていないわ、価値が下がるなんて絶対にないわ」
ルカスとの関係は婚約前が一番良かった。しかも、嫁ぎ先が伯爵家だなんて、頭を下げるような立場になりたくない。アウラージュが国王になれば、姉妹は許されるはずだから、頭を下げる必要はない。それが私に似合っている。
「リオンが王太子になったから、ルカスのことは大目に見られても、現状としてシュアリーは王太子に相応しくないとされ、さらに婚約者も捨ててどうする気なの?」
「それはお姉様が降りたから、王太子になっただけじゃない…私のせいじゃないわ」
「また同じことを繰り返すのね。あなたの責任はどこにあるの?」
「…」
責任など取る立場になったことのないシュアリーは、責任など考えたこともない。自身の代わりに誰かが取ればいいとしか思っていない。
「自分にはいい縁談があると思っているの?どこに?誰?」
「ち、違うわ、私は国のためを思って」
「国のためを思うなら、どうして王配を選んだの?どうして王太子教育を頑張らなかったの?どうして王太子が他国の王子に色目を使うの?すべて真逆のことじゃない」
「悔しかったの、皆、アウラージュ、アウラージュって」
それはそうだろう、何もして来なかったシュアリーに誰も宛てになどしない。アウラージュがいなくなってからは、陛下に訪ねるだけである。
敢えてシュアリーを訪ねても、分からないと言われる時間だけでも無駄である。皆、そこまで暇ではない。
王太子教育は温情だったのだ。皆、無駄になるのだろう、やり甲斐がないと思いながらも、陛下の意を汲んで一生懸命やってくれた。おかげで、リオンの評価は上がる一方で、あれは何だったのだろうかと思われている。そんなこともシュアリーは王太子教育がなくなって良かったとくらいにしか思っていない。
「悔しいというのは頑張った者だけが言える言葉よ。何もしていないのに、求めることだけは一丁前なのよね。誰かに言えばどうにかなると思う考えを止めなさい。せめて、けじめとして学園はきちんと卒業なさい」
「何よ!お姉様は欲しいものは持っているじゃない」
「でも私はなくしたものばかりよ。婚約者もいなくなってしまったし、王太子でもなくなった、王族でもなくなったし、あなたの姉でもなくなったわ」
「それは…」
「それともすべて要らないものだったとでも言うの?せめて自分の手で掴んだものは大事にしなさい」
「シュアリー、離宮に戻りなさい!」
陛下もマレリアに恥ずかしくないようにと、シュアリーに厳しく接するようになり、シュアリーにとって、都合のいい絶対なる味方はいなくなった。
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本日もお読みいただき、ありがとうございます。
ついに明日、最終話です。
最後までよろしくお願いします。
「お姉様、ルカス様は返すわ。だから、王太子に戻って」
「人は貰ったり返したりできるものではないと言ったでしょう」
「ルカス様を返せば元通りじゃない」
「欲しいと言ったのはあなたでしょう?そんなに欲しかったのでしょう?それなのに手放すの?それであなたはどうするの?」
「奪ったのは私だもの、別の縁談を探すわ」
シュアリーはアウラージュとルカスが戻れば、自身も元通りとなって、きっと縁談も届くはずだと信じている。
「シュアリー、その話はもう終わっただろう!」
陛下は声を上げたが、シュアリーは止まらない。アウラージュがどうにかしてくれるとまだ思っている。
「私が泣く泣く身を引くのよ」
「そうすれば可哀想な私になれると思っているのね?まさか私に紹介しろとでも言うのかしら?」
「サリキュース帝国に?」
「紹介はしないわよ、正確には出来ないわ」
「どうしてよ!王太子が変わっても、お父様は国王なんだから、私は王女でしょう!求められる立場でしょう!」
「価値を下げたのは自分自身でしょう?」
「そんなことしていないわ、価値が下がるなんて絶対にないわ」
ルカスとの関係は婚約前が一番良かった。しかも、嫁ぎ先が伯爵家だなんて、頭を下げるような立場になりたくない。アウラージュが国王になれば、姉妹は許されるはずだから、頭を下げる必要はない。それが私に似合っている。
「リオンが王太子になったから、ルカスのことは大目に見られても、現状としてシュアリーは王太子に相応しくないとされ、さらに婚約者も捨ててどうする気なの?」
「それはお姉様が降りたから、王太子になっただけじゃない…私のせいじゃないわ」
「また同じことを繰り返すのね。あなたの責任はどこにあるの?」
「…」
責任など取る立場になったことのないシュアリーは、責任など考えたこともない。自身の代わりに誰かが取ればいいとしか思っていない。
「自分にはいい縁談があると思っているの?どこに?誰?」
「ち、違うわ、私は国のためを思って」
「国のためを思うなら、どうして王配を選んだの?どうして王太子教育を頑張らなかったの?どうして王太子が他国の王子に色目を使うの?すべて真逆のことじゃない」
「悔しかったの、皆、アウラージュ、アウラージュって」
それはそうだろう、何もして来なかったシュアリーに誰も宛てになどしない。アウラージュがいなくなってからは、陛下に訪ねるだけである。
敢えてシュアリーを訪ねても、分からないと言われる時間だけでも無駄である。皆、そこまで暇ではない。
王太子教育は温情だったのだ。皆、無駄になるのだろう、やり甲斐がないと思いながらも、陛下の意を汲んで一生懸命やってくれた。おかげで、リオンの評価は上がる一方で、あれは何だったのだろうかと思われている。そんなこともシュアリーは王太子教育がなくなって良かったとくらいにしか思っていない。
「悔しいというのは頑張った者だけが言える言葉よ。何もしていないのに、求めることだけは一丁前なのよね。誰かに言えばどうにかなると思う考えを止めなさい。せめて、けじめとして学園はきちんと卒業なさい」
「何よ!お姉様は欲しいものは持っているじゃない」
「でも私はなくしたものばかりよ。婚約者もいなくなってしまったし、王太子でもなくなった、王族でもなくなったし、あなたの姉でもなくなったわ」
「それは…」
「それともすべて要らないものだったとでも言うの?せめて自分の手で掴んだものは大事にしなさい」
「シュアリー、離宮に戻りなさい!」
陛下もマレリアに恥ずかしくないようにと、シュアリーに厳しく接するようになり、シュアリーにとって、都合のいい絶対なる味方はいなくなった。
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本日もお読みいただき、ありがとうございます。
ついに明日、最終話です。
最後までよろしくお願いします。
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