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国王と第一王女2

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 シュアリーはいつからあんな風になってしまったのか分からなかった。確かに愛しいマレリアの残してくれた娘だった、幼い頃は母親がいなくて寂しくないようにと甘やかしたが、その後はアウラージュと同じように教育もさせていたはずだ。

「シュアリーへ、私は何を間違えたのだろうか」
「我慢、忍耐、向上心、達成感、自分の力で行うことを覚えさせるべきでしたね」
「全部ないな…」
「あとは人がして不快だと思うことを、自分がしても理解できていないこと、これは欠点です」
「ああ、あれは欠点だ」

 リラ・ブラインへの意見がまさに物語っていた。皆に怪訝な顔で見られても当人は気付いてもいない。

「字もですね、私も何度か教えましたが、投げ出してしまって」
「あれは酷い、私でも分かる。大きくなったら恥ずかしいと思って、上手に書こうとするかと思っていたんだが、私の願望で終わったようだな」
「シュアリーはマレリア様を憶えていませんからね、周りも優しくしてあげないいけないと、先回りし過ぎたのでしょう」
「だが正直、アウラージュにこそ寂しい思いをさせていたのに。マレリアにも必ず平等に接するように言われていたのに」

 陛下もアウラージュを十分とは言えないが、気に掛けてはいた。だが全くと言っていいほど平等ではなかった。

「両親がいなくなったことは本当に辛かったです。でも友人もおりましたし、友人の親も私を可愛がってくれました。だから陛下にはシュアリーを優先するのは良かったと思います。私を優先していたら、今頃どうなっていたことか」
「そうとも言えるのか…難しいな」
「きっとお姉様はお父様に可愛がられて、なんて言っていたでしょうね」
「言いそうだ。アウラージュは人をよく見ている」
「興味がありましたから、そこから遺伝子研究に進んだのですけどね」
「立派だ、本当に」

 私は何もしなくても、アウラージュは立派に成長していると言える。兄にも義姉にも謝罪した後で、きちんと報告が出来る。このままではいけないのは、マレリアへの報告の方である。

「ホワイトア公爵家と話をしなければならないな。アウラージュを戻すように言われる可能性もあるが、アウラージュはどうするんだ?」
「私はどうとでもなります。帝位継承権は放棄させないと言われていますから、自由は限られるけど、ある意味、安泰なのです。私に何かあれば、エレン伯父様が許さない。陛下も怒るくらいはしてくれるでしょう?」
「それは勿論だが」
「とりあえずはエレン伯父様がそろそろ限界なので、当面サリキュース帝国に行きますわ。陛下は自分の娘のことを考えてください。高位貴族は難しいわ、反感を買って潰れてしまいます」
「分かっている…」

 ルカスとこのまま結婚させるにしても、シュアリーが思い描いていた公爵家の叙爵など許されない。ホワイトア公爵家からは勿論、ブラックア公爵家からも許しは出ないだろう。無理して通しても、潰されるだけである。

「マリレア様なら身の丈に合った結婚で、お喜びになると思いますよ」
「そうだな。愚か者が大嫌いだった、今のシュアリーを見たら、血管が切れるな」
「ええ、間違いなく。次代はホワイトアが、今度はホワイトアを見張るわ、悪くないと思う」

 ホワイトア公爵家は、ついに王位に戻ることへの喜びもあるかもしれないが、これまでの名誉に賭けて、愚かな王は今まで以上に許さないはずだ。

「私はアウラージュこそ、相応しいと思うがな」
「買い被り過ぎよ」
「シュアリーのこと、悪かったな。マレリアの怒る顔が浮かぶよ」
「いいえ、娘が可愛いのは仕方ないわ。あっ、でも、マレリア様との約束はどうしましょう?薄毛になったら教えてくださる?」
「ああ、引っこ抜くんだったな。居場所だけは教えてくれ、必ず文を書くよ」
「待ってるわ」

 軽やかに去っていた姪であるアウラージュ。美しき兄の忘れ形見は飛び立つ姿がとてもよく似合う娘になった。きっと兄も笑っているだろう。
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