32 / 38
国王と第一王女1
しおりを挟む
言い合いで、話し合いとも呼べないような場はようやく解散となり、アウラージュとディエンス陛下だけとなった。アウラージュはいずれ、陛下と今後について話をしようと思っており、陛下も分かっていた。
「リラ・ブラインの件は任せていただき、ありがとうございました」
「いや、ご苦労だった」
アウラージュはリラ・ブラインの件は未遂だったため、自身に任せてもらうようにブラックア公爵家を通して、陛下に頼んだのである。
「マレリアと仲が良かったんだな」
「あの頃はお忙しそうでしたからね」
「マレリアがいれば、シュアリーもあんな風にはならなかっただろうな」
「そうですね、でも離縁されていた可能性はありますよね?」
「っえ」
「マレリア様は、離縁したかったとおっしゃっていましたよ。妊娠中に浮気しようとしたんでしょう?」
「誤解だ、浮気はしていないんだ」
「したではなく、しようとしていたとおっしゃっていたわ。自分が妊婦で辛いのに、許せないと」
「あああ…」
メイドに口付けされそうになったところを、悪阻でげっそりしていたマレリアに見付かり、箒でどつき回された。
「私の両親が亡くなってしまったから、有耶無耶にされてしまったのよね。私も責任を感じましたけど、あなたのせいでは、これぽっちもありませんからねと何度も言われましたわ。悪いのは陛下だけだと。クソ野郎、絶対に許さない、禿げ散らかったところをむしり取ってやると」
「…そんな」
「私の代わりに敵を取って頂戴と、むしり取る厳命まで受けたの。根菜を抜くように思い切りやるように言われたわ」
「マレリア…彼女なら言いそうだ」
ディエンスは口の悪い、気の強いマレリアが大好きであった。メイドのことも、マレリアの悪阻の相談をしていた際にうっかり隙を作ってしまっただけだった。
「陛下はなぜそんなにしがみ付いているのですか?マレリア様からなりたくないと聞いていたのに」
「マレリアと絶対に別れたくなかったんだ」
「陛下も父と同じで、利用したんですね。父も母を娶るために王位を継いだと言っていましたわ」
「似たもの兄弟だな。王妃となればなかなか離縁は難しいだろうと思ってな。それでもしがみ付いたのは、成果を残したいと…思ってだな」
「残しているではありませんか」
「だが、あれはほとんど兄上が」
「それでも実現させたのは陛下じゃないですか」
「…ああ、でも、そうだな」
始めに和睦交渉をしていたのは兄のシュールズだった。自身はただ引き継いだだけだと、自信がなかった。でもきっと兄ならアウラージュと同じことを言っただろう。
アウラージュはシエン皇女に似ているが、時折見せる表情や言葉は『任せろ、ディエンス』と、いつも私の前を行く逞しいシュールズを彷彿とさせる。
「でも私に戻さなかったのは、逆に良かったと言えますわ」
「いつからホワイトア公爵家に戻そうと思っていたんだ?」
「父から聞いていたのもあるけど、ホワイトア公爵家はずっと王太子教育をしていると聞いた時かしら?一生続いていてしまうのではないかとね」
ホワイトア公爵家は叙爵されてからずっと王太子教育を子に続けている。
「生まれだけで言えば、私にホワイトアは敵わないのも分かっていたわ。だから、婚約を解消した時に、やっと動けると思ったの。リオンでもマーガレットでもいい王太子になると思えましたからね」
「シュアリーには無理だと」
「陛下も分かっていたでしょう?責任を取れるような子ではないわ。今まで誰かにやって貰って当たり前の人間なのよ。現実を知るいい機会だと思ったの、陛下にも納得してホワイトアに移して欲しかったですからね」
「だが、アウラージュは頑張って」
「与えられた勉強くらいするわ。当たり前じゃない?誰かさんじゃないんだから」
「そうだな…」
「リラ・ブラインの件は任せていただき、ありがとうございました」
「いや、ご苦労だった」
アウラージュはリラ・ブラインの件は未遂だったため、自身に任せてもらうようにブラックア公爵家を通して、陛下に頼んだのである。
「マレリアと仲が良かったんだな」
「あの頃はお忙しそうでしたからね」
「マレリアがいれば、シュアリーもあんな風にはならなかっただろうな」
「そうですね、でも離縁されていた可能性はありますよね?」
「っえ」
「マレリア様は、離縁したかったとおっしゃっていましたよ。妊娠中に浮気しようとしたんでしょう?」
「誤解だ、浮気はしていないんだ」
「したではなく、しようとしていたとおっしゃっていたわ。自分が妊婦で辛いのに、許せないと」
「あああ…」
メイドに口付けされそうになったところを、悪阻でげっそりしていたマレリアに見付かり、箒でどつき回された。
「私の両親が亡くなってしまったから、有耶無耶にされてしまったのよね。私も責任を感じましたけど、あなたのせいでは、これぽっちもありませんからねと何度も言われましたわ。悪いのは陛下だけだと。クソ野郎、絶対に許さない、禿げ散らかったところをむしり取ってやると」
「…そんな」
「私の代わりに敵を取って頂戴と、むしり取る厳命まで受けたの。根菜を抜くように思い切りやるように言われたわ」
「マレリア…彼女なら言いそうだ」
ディエンスは口の悪い、気の強いマレリアが大好きであった。メイドのことも、マレリアの悪阻の相談をしていた際にうっかり隙を作ってしまっただけだった。
「陛下はなぜそんなにしがみ付いているのですか?マレリア様からなりたくないと聞いていたのに」
「マレリアと絶対に別れたくなかったんだ」
「陛下も父と同じで、利用したんですね。父も母を娶るために王位を継いだと言っていましたわ」
「似たもの兄弟だな。王妃となればなかなか離縁は難しいだろうと思ってな。それでもしがみ付いたのは、成果を残したいと…思ってだな」
「残しているではありませんか」
「だが、あれはほとんど兄上が」
「それでも実現させたのは陛下じゃないですか」
「…ああ、でも、そうだな」
始めに和睦交渉をしていたのは兄のシュールズだった。自身はただ引き継いだだけだと、自信がなかった。でもきっと兄ならアウラージュと同じことを言っただろう。
アウラージュはシエン皇女に似ているが、時折見せる表情や言葉は『任せろ、ディエンス』と、いつも私の前を行く逞しいシュールズを彷彿とさせる。
「でも私に戻さなかったのは、逆に良かったと言えますわ」
「いつからホワイトア公爵家に戻そうと思っていたんだ?」
「父から聞いていたのもあるけど、ホワイトア公爵家はずっと王太子教育をしていると聞いた時かしら?一生続いていてしまうのではないかとね」
ホワイトア公爵家は叙爵されてからずっと王太子教育を子に続けている。
「生まれだけで言えば、私にホワイトアは敵わないのも分かっていたわ。だから、婚約を解消した時に、やっと動けると思ったの。リオンでもマーガレットでもいい王太子になると思えましたからね」
「シュアリーには無理だと」
「陛下も分かっていたでしょう?責任を取れるような子ではないわ。今まで誰かにやって貰って当たり前の人間なのよ。現実を知るいい機会だと思ったの、陛下にも納得してホワイトアに移して欲しかったですからね」
「だが、アウラージュは頑張って」
「与えられた勉強くらいするわ。当たり前じゃない?誰かさんじゃないんだから」
「そうだな…」
647
お気に入りに追加
5,753
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました
紫崎 藍華
恋愛
ネヴィルから幸せにすると誓われタバサは婚約を了承した。
だがそれは過去の話。
今は当時の情熱的な態度が嘘のように冷めた関係になっていた。
ある日、タバサはネヴィルの自宅を訪ね、浮気現場を目撃してしまう。
タバサは冷たい態度を取られている理由を理解した。
あなたが私を捨てた夏
豆狸
恋愛
私は、ニコライ陛下が好きでした。彼に恋していました。
幼いころから、それこそ初めて会った瞬間から心を寄せていました。誕生と同時に母君を失った彼を癒すのは私の役目だと自惚れていました。
ずっと彼を見ていた私だから、わかりました。わかってしまったのです。
──彼は今、恋に落ちたのです。
なろう様でも公開中です。
悪役令嬢が残した破滅の種
八代奏多
恋愛
妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。
そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。
その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。
しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。
断罪した者は次々にこう口にした。
「どうか戻ってきてください」
しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。
何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。
※小説家になろう様でも連載中です。
9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる