上 下
31 / 38

話し合い6

しおりを挟む
「な、に、よ…お父様まで私を怒るの…おかしいわよ、私だってなりたいなんて思っていなかったわ。それなのに、お姉様がいないくなるから!仕方なく…」
「出来ないなら、降りれば良かったじゃない」
「だって、お父様もルカス様も頑張れって」
「なら頑張れば良かったじゃない。降りもしない、頑張りもせず、何してたの?」
「そ、それは…」

 時が過ぎて元通りになればいいと思っていたなどと言えば、どうせまた怒られることになることは分かる。お父様もルカス様も、もう庇ってくれそうにもない。

「私への都合のいい話は何だったの?私を戻して国王の娘で、次期国王の妹になりたかったってところ?ルカス様もその方がシュアリーに価値があるものね」
「っな、でも普通はそうじゃない、お姉様がずっと王太子だったんだから。戻ってよ、お姉様が戻れば元通りじゃない」
「私は戻りません」
「じゃあ、どうなるの…」

 ここまで説明してようやくシュアリーは自身の身が、どこに置かれるのか不安になった。どうにかしてくれるが消え始めたのだろう。

「折角、すぐに引きずり降ろさず、1年は様子を見ていたのに。シュアリーはホワイトアが納得出来る王になれると言える?王太子教育だってタダじゃないのよ?」
「…それは、でもお姉様だって、今まで王族として育てて貰ったじゃない!」
「ええ、だから私はすべて清算したの」
「清算?」
「ええ、ブラックア公爵に頼んで、私にこれまで掛かった費用を算出して貰って、私の資産を預けていたサリキュース帝国から、コンクラート王国に返したわ。公務の分は差し引かれたようだけど、それ以外すべてね」
「返した?」

 陛下とブラックア公爵は既に知っていたが、ルカスとバートラ公爵はそこまでしていたのかと、驚愕の顔をしている。だがバートラ公爵は、だから婚約解消の際にすべて返されたのだと理解した。

「ええ、そうすれば、税金泥棒とは言えないでしょう?」
「でもずるいわ、帝国に出して貰ったんでしょう」
「そうね、確かに両親の遺産はあるけど、私が研究で稼いだお金でもあるわ」
「は?」

 父と母の資産はすべてアウラージュに渡っているが、高額なドレスや宝石はエレンから毎回贈られており、あまり外に出ないので、侍女も護衛も最小限。あとは食費、生活の人件費、消耗品費など、さらにエレンが色を付けて清算している。

「何かが問題があって?王族も皇族も、稼ぐことは禁止ではないわ。むしろ、国税で贅沢するよりいいことではないかしら?」
「そんなことしていたの…」
「そうよ」
「王太子教育をしながら?」
「ええ、寝る間を惜しんでね」
「そんな…」

 アウラージュは研究体質だったために、苦にならない。ブラックア公爵家に籠って、ずっと研究開発をしていたのだ。

 時折、いや度々、エレン皇帝から眩しいくらいの煌びやかな帝国へお誘いの文が届いたが、忙しいのと返事をされていた。

「立太子式の際に、私は王族を抜けます。その際に清算したことを公に発表をする予定です。私の籍はアウラージュ・フラウ・サリキュース、1つだけになります」
「そんな勝手なこと、自分だけ」
「あなたも返してしまえば?税金泥棒は避けられるわよ?」
「…えっ、でも」
「私はあなたにすべてあげたわ。ドレスや宝石など形のある物は欲しがらなかったけど、私は陛下に親のような愛は求めなかったし、部屋も広い方を、食べ物も大きい方をあげたでしょう?あとは王太子も婚約者もね」
「でもお姉様は皇位を」

 シュアリーは言葉にはしなかったが、アウラージュと両親が違うことを知り、親がいなくて可哀想と思いながらも、アウラージュだけが国王と皇女から産まれていると知り、ずるい!私も皇女から産まれるべきだったなどと、思っていたのだ。

「皇位はあなたは持てないもの。あげようがないわ」
「そうだけど、友人だって」
「友人はあげられるものではないわ、いくらすべてと言えど、私の都合であげられるものだけに決まっているでしょう?そんなことも分からないの?」
「…」
「都合のいい選択肢はないのよ。答えは出来るか、出来ないかよ」
「アウラージュ、私が決める。シュアリーもそれでいいな?」
「えっ、でもお父様」
「私が王だ、決めるのは私だ。分かるな?」
「…はい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

処理中です...