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自由
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ルカスは学園で、一体いつになるのか、アウラージュが戻る前にホワイトア公爵家に移らないように、教育は続けなくてはならない。だが、一方でこんな気持ちでシュアリーと幸せになれるのだろうかと考えていた。
特殊な空間だったからこそ、こちらとこちらでは、こちらの方がマシだとという気持ちだったのではないか。
アウラージュの存在は大きいと思っていたが、思った以上に大きい。陛下もアウラージュが行っていた執務が負担の様で、私たちに気を掛けてくれることもなくなって、随分経っている。
「はあ…」
「あら、溜息ですか。大変ですね、ルカス様も学園くらい自由になりたくはありませんの?」
リラ・ブラインだ、確かに彼女の言葉は魅力的ではある。アウラージュの婚約者だった頃はずっと気が抜けなかった。シュアリーに代わって、穏やかに過ごせると思ったら、溜息が増えた。
「君は何がしたいんだ?」
「何がって、皆で楽しくしたいのです。男女関係なく、礼儀も気にせず、どうせ将来は決まっているのですから」
「君は婚約者がいるのか?」
「ええ、ですから今だけなのですよ。自由は」
「そうか、自由か…」
「今度、パーティーをしますの。良かったら、来てください」
「考えておくよ」
「ええ、是非」
パーティーか、騒いで遊んでも、その時だけだろう。万が一にも、おかしなパーティーであったならば、問題になってしまう。
「ルカス、行くのか?」
「行かないさ」
声を掛けて来たのは、クラスメイトの侯爵家のパトリック・ルーダーだ。同じクラスになってから、よく話す間柄である。
「そうだよな、シュアリー殿下がいるもんな」
「ああ、パトリックも行かないだろう?」
「もちろんだ、誰でも誘っているようだけど、高位貴族は行かないだろう。リオン・ホワイトアが行くはずもないし、侯爵家の男女も概ね婚約者がいるし、せいぜい伯爵家の連中が行くかどうかってところだな」
「リカス殿も誘っているのか?」
ルカスにとって渦中の人物である。公爵家の嫡男で、王位継承権が現在第2位となっている。清廉で評判が良く、見た目も涼やかな男である。
「ああ、そうらしい。親しげに話し掛けているのを見掛けるよ。婚約者がいようがいまいが関係ないようだからな」
「彼女も婚約者がいると言っていたぞ?」
「え?そうなのか?誰か聞いたか?」
パトリックが珍しく興味を示している、だいたいルカスは聞き手に回る方が多い。
「いや、そこまでは聞いていないが、将来は決まっていると。違うのか?」
「分からないが、婚約者がいるとは知らなかった。学園で探しているのではないかとすら思っていたよ」
「私もそう思っていた。だが本人がいると言っていた、だから自由になりたいと」
始めは男漁りをしに来た不躾な令嬢だと思った。だが、勉強はきちんとし、成績も悪くないと聞く。そして自由の思想だ、親が決めた婚約に不満を持っている者もいる。そうした者にはいい話に聞こえるだろう。
だが高位貴族になればなるほど、それはリスクを伴う。私も婚約を解消した身である、だが相手が相手だったために、表向きは王家の事情で相手が変わったとなっている。だからこそ、リラ・ブラインは私に大変だと声を掛けることが出来るのだ。
「もし学園にいるのならば、どんな気持ちで見ているのだろうか」
「同じ考えなのではないか?お互い、学園の間は自由にしようと」
「後に蟠りにならないか?」
「割り切った関係ならば、あり得るのではないか」
「結婚するのにか?解消する気なら分かるが」
確かにいずれ結婚するからと言って、割り切れるものではないかもしれない。別の相手と楽しく過ごして、何もなかったとはならないのではないか。
「狙っているのかもしれないということか」
「そうかもしれないな、自由と言っていても、不貞は不貞となる。いくらお互いが同意していたとしても、親が問題だと思い、解消してしまえばお終いだ」
リラ・ブラインは何が意図があるのか。
特殊な空間だったからこそ、こちらとこちらでは、こちらの方がマシだとという気持ちだったのではないか。
アウラージュの存在は大きいと思っていたが、思った以上に大きい。陛下もアウラージュが行っていた執務が負担の様で、私たちに気を掛けてくれることもなくなって、随分経っている。
「はあ…」
「あら、溜息ですか。大変ですね、ルカス様も学園くらい自由になりたくはありませんの?」
リラ・ブラインだ、確かに彼女の言葉は魅力的ではある。アウラージュの婚約者だった頃はずっと気が抜けなかった。シュアリーに代わって、穏やかに過ごせると思ったら、溜息が増えた。
「君は何がしたいんだ?」
「何がって、皆で楽しくしたいのです。男女関係なく、礼儀も気にせず、どうせ将来は決まっているのですから」
「君は婚約者がいるのか?」
「ええ、ですから今だけなのですよ。自由は」
「そうか、自由か…」
「今度、パーティーをしますの。良かったら、来てください」
「考えておくよ」
「ええ、是非」
パーティーか、騒いで遊んでも、その時だけだろう。万が一にも、おかしなパーティーであったならば、問題になってしまう。
「ルカス、行くのか?」
「行かないさ」
声を掛けて来たのは、クラスメイトの侯爵家のパトリック・ルーダーだ。同じクラスになってから、よく話す間柄である。
「そうだよな、シュアリー殿下がいるもんな」
「ああ、パトリックも行かないだろう?」
「もちろんだ、誰でも誘っているようだけど、高位貴族は行かないだろう。リオン・ホワイトアが行くはずもないし、侯爵家の男女も概ね婚約者がいるし、せいぜい伯爵家の連中が行くかどうかってところだな」
「リカス殿も誘っているのか?」
ルカスにとって渦中の人物である。公爵家の嫡男で、王位継承権が現在第2位となっている。清廉で評判が良く、見た目も涼やかな男である。
「ああ、そうらしい。親しげに話し掛けているのを見掛けるよ。婚約者がいようがいまいが関係ないようだからな」
「彼女も婚約者がいると言っていたぞ?」
「え?そうなのか?誰か聞いたか?」
パトリックが珍しく興味を示している、だいたいルカスは聞き手に回る方が多い。
「いや、そこまでは聞いていないが、将来は決まっていると。違うのか?」
「分からないが、婚約者がいるとは知らなかった。学園で探しているのではないかとすら思っていたよ」
「私もそう思っていた。だが本人がいると言っていた、だから自由になりたいと」
始めは男漁りをしに来た不躾な令嬢だと思った。だが、勉強はきちんとし、成績も悪くないと聞く。そして自由の思想だ、親が決めた婚約に不満を持っている者もいる。そうした者にはいい話に聞こえるだろう。
だが高位貴族になればなるほど、それはリスクを伴う。私も婚約を解消した身である、だが相手が相手だったために、表向きは王家の事情で相手が変わったとなっている。だからこそ、リラ・ブラインは私に大変だと声を掛けることが出来るのだ。
「もし学園にいるのならば、どんな気持ちで見ているのだろうか」
「同じ考えなのではないか?お互い、学園の間は自由にしようと」
「後に蟠りにならないか?」
「割り切った関係ならば、あり得るのではないか」
「結婚するのにか?解消する気なら分かるが」
確かにいずれ結婚するからと言って、割り切れるものではないかもしれない。別の相手と楽しく過ごして、何もなかったとはならないのではないか。
「狙っているのかもしれないということか」
「そうかもしれないな、自由と言っていても、不貞は不貞となる。いくらお互いが同意していたとしても、親が問題だと思い、解消してしまえばお終いだ」
リラ・ブラインは何が意図があるのか。
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