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摩擦
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シュアリーはルカスに言われた通り、陛下に話をすることにした。
「お父様、お姉様にお会いしたの。あまりお話し出来なくて、きちんと話がしたいの、だからどうにかして貰えない?」
「私も何度か連絡を取ろうとしたのだが、出来なかったんだ」
「えっ、そうなの?」
「ああ、だから会って話をすることは私からは出来ない」
「そんな…」
「だが、いずれ話に来るさ。アウラージュのことは心配しなくていい」
訪れる何かがあるのだろうか、逃げてしまった、ただ居場所が分からないからと、放置しているわけではないのだろうか。ブルーノ殿下と何を話していたかも聞かなくてはならない、あんなに側に寄ってはならないとも伝えなくてはいけない。
「あと、私の縁談のお相手は誰だったの?」
「は?今さらそんなことを聞いてどうする?お断りしたんだから、関係ないだろう」
「でも、お会いした時に、やっぱりその、謝りたいのよ」
「それは必要ない、相手には誰かは明かしていないと言うと、そのままなかったことにしましょうと言われているからな。謝る必要もない」
「でも…」
「そんなことより、勉強をする方が先だろう。しっかりするんだ、分かったね?」
「はい…」
教えてくれてもいいじゃないと思いながらも、あまりしつこく聞いて何か疑われるのも嫌だ、お父様を怒らせるのは得策ではない。
勉強もいつまで続ければいいのだろう。字だって、上手ではないことは分かっていたけど、子どもみたいに練習させられて、恥ずかしいことだと分かっている。メイドにすらお茶を運んで来た際に笑われたような気がする。
アウラージュがいた頃はシュアリーは外部の接触がほとんどないため、ルカスとの時間が唯一の喜びであった。でもそれも失われてしまった。勉強のことしか話さなくなり、ギスギスした雰囲気になってしまう。
ルカスもルカスで今まで通りに甘やかしていては何も変わらないため、言うしかない。半年経った今も私には向いていない、頑張るしかないのやり取りの繰り返しだ。
「父上、殿下との関係が悪くなっているのです。このままではうまくいきません。アウラージュ殿下の婚約者になってくれそうな方はいませんか」
「はあ?勝手に決められるわけないだろう」
「ですが、婚約者がいないというのは」
「はあ…お前にそんなことをいう資格があるのか」
自身の方が上にでもなった気でいるのか。婚約者だったことをなかったかのように言える息子が心から情けない。
「それはそうですが、陛下も考えてらっしゃると」
「陛下は静観してらっしゃるんだろう。まさかっ、勝手に動いていないだろうな?」
「いいえ、そんなことはしておりません」
「ならばいいが、勝手なことをするな。シュアリー殿下も見張って置きなさい、お前たちで責任を取れることではない!」
そんなことは分かっている、でもルカスには未来が見えなくなっていた。
「シュアリー殿下の教育が進んでいないのです」
「それはそうだろうな、お前も含めて、今まで誰かの力を借りることが当たり前だった人間だ。分かっていただろう?」
「ですが、王女教育はされていますよね」
「陛下も甘やかしていたところはあるが、どこか適したところに嫁がせる気だったのだろう。最低限出来ていればという状態だろう」
まるでお前に嫁がせる気はなかったからと言われているようだ。王女なのに、下級貴族というわけにはいかなかっただろうに。
「その割には相応しくないと聞きません。いえ、陰では言われているのでしょうか?それともアウラージュ殿下の帰りを待っているのでしょうか?」
「皆が見極めていると思っているのか?」
「違うのですか」
「違わなくもないが、違うともいえる。自分で考えなさい。お前が選んだ人生なのだから、責任を持つべきだろう」
今までも王配教育をされていたくせに、その言葉はルカスに重くのしかかった。
2人の大事なはずの僅かな時間も、互いに別のことを考えていることが多くなり、そんな中、学園で天真爛漫な伯爵令嬢が男性に人気があり、ルカスも一緒にいたというメイドの話をシュアリーが耳にすることになった。
「お父様、お姉様にお会いしたの。あまりお話し出来なくて、きちんと話がしたいの、だからどうにかして貰えない?」
「私も何度か連絡を取ろうとしたのだが、出来なかったんだ」
「えっ、そうなの?」
「ああ、だから会って話をすることは私からは出来ない」
「そんな…」
「だが、いずれ話に来るさ。アウラージュのことは心配しなくていい」
訪れる何かがあるのだろうか、逃げてしまった、ただ居場所が分からないからと、放置しているわけではないのだろうか。ブルーノ殿下と何を話していたかも聞かなくてはならない、あんなに側に寄ってはならないとも伝えなくてはいけない。
「あと、私の縁談のお相手は誰だったの?」
「は?今さらそんなことを聞いてどうする?お断りしたんだから、関係ないだろう」
「でも、お会いした時に、やっぱりその、謝りたいのよ」
「それは必要ない、相手には誰かは明かしていないと言うと、そのままなかったことにしましょうと言われているからな。謝る必要もない」
「でも…」
「そんなことより、勉強をする方が先だろう。しっかりするんだ、分かったね?」
「はい…」
教えてくれてもいいじゃないと思いながらも、あまりしつこく聞いて何か疑われるのも嫌だ、お父様を怒らせるのは得策ではない。
勉強もいつまで続ければいいのだろう。字だって、上手ではないことは分かっていたけど、子どもみたいに練習させられて、恥ずかしいことだと分かっている。メイドにすらお茶を運んで来た際に笑われたような気がする。
アウラージュがいた頃はシュアリーは外部の接触がほとんどないため、ルカスとの時間が唯一の喜びであった。でもそれも失われてしまった。勉強のことしか話さなくなり、ギスギスした雰囲気になってしまう。
ルカスもルカスで今まで通りに甘やかしていては何も変わらないため、言うしかない。半年経った今も私には向いていない、頑張るしかないのやり取りの繰り返しだ。
「父上、殿下との関係が悪くなっているのです。このままではうまくいきません。アウラージュ殿下の婚約者になってくれそうな方はいませんか」
「はあ?勝手に決められるわけないだろう」
「ですが、婚約者がいないというのは」
「はあ…お前にそんなことをいう資格があるのか」
自身の方が上にでもなった気でいるのか。婚約者だったことをなかったかのように言える息子が心から情けない。
「それはそうですが、陛下も考えてらっしゃると」
「陛下は静観してらっしゃるんだろう。まさかっ、勝手に動いていないだろうな?」
「いいえ、そんなことはしておりません」
「ならばいいが、勝手なことをするな。シュアリー殿下も見張って置きなさい、お前たちで責任を取れることではない!」
そんなことは分かっている、でもルカスには未来が見えなくなっていた。
「シュアリー殿下の教育が進んでいないのです」
「それはそうだろうな、お前も含めて、今まで誰かの力を借りることが当たり前だった人間だ。分かっていただろう?」
「ですが、王女教育はされていますよね」
「陛下も甘やかしていたところはあるが、どこか適したところに嫁がせる気だったのだろう。最低限出来ていればという状態だろう」
まるでお前に嫁がせる気はなかったからと言われているようだ。王女なのに、下級貴族というわけにはいかなかっただろうに。
「その割には相応しくないと聞きません。いえ、陰では言われているのでしょうか?それともアウラージュ殿下の帰りを待っているのでしょうか?」
「皆が見極めていると思っているのか?」
「違うのですか」
「違わなくもないが、違うともいえる。自分で考えなさい。お前が選んだ人生なのだから、責任を持つべきだろう」
今までも王配教育をされていたくせに、その言葉はルカスに重くのしかかった。
2人の大事なはずの僅かな時間も、互いに別のことを考えていることが多くなり、そんな中、学園で天真爛漫な伯爵令嬢が男性に人気があり、ルカスも一緒にいたというメイドの話をシュアリーが耳にすることになった。
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