上 下
10 / 38

再会

しおりを挟む
 ルカスは突如、アウラージュが夜会に出席するとの情報を得ることが出来た。最後に会ったのは半年以上前である。これでようやくまだ迷いのあるシュアリーのためにも、話が出来るようになるのではないかと期待した。

 シュアリーに話すと、一刻も早く会いたい、どうにかして参加したいと言われ、慌てて友人の伝手でどうにか参加することが出来た。会場に入ると、ブルーナ殿下の姿があり、シュアリーは迷わず声を掛けた。

「ブルーナ殿下!」
「王太子殿下」
「いらっしゃっていたのですね」
「ええ、お誘いいただきましたので、参加させていただいております」
「そうだったですか…」

 アウラージュにはもう会ったのだろうか、まだ消化できていない気持ちのためにも、会わせた方がいいのか分からなかった。だが、ブルーナ越しに、人に囲まれている隙間から、アウラージュの姿を捉え、思わず声を上げていた。

「お姉様っ!」
「えっ、アウラージュ様ですか」
「えっと、はい」
「行かれてはいかがですか」
「あの、では、すみませんが」

 シュアリーは急ぎ足でアウラージュの元へ行き、ルカスも一緒に向かった。久しぶりに会う姉は変わらず、いや、輝きを増してるように思えた。

「お姉様!今までどこにいらっしゃったの!」
「まあまあ、王太子殿下、バートラ公爵令息様、ごきげんよう」
「殿下…」
「ルカス様、お姉様はもう殿下ではないです」
「いえ、殿下に変わりありません」
「別にいいですけど」

 シュアリーは王太子の自覚を持ってくださいと言っていたくせに、王位継承権を放棄をしたアウラージュをまだ殿下と呼ぶなんて、自分もやはり逃げ出したいのではないかと思った。でも王家を抜けたとは聞いていないので、王女のままではあるのかもしれない。逃げ出したい気持ちと、お姉様より上の立場、心がせめぎ合っている。どうしたらいいのか分からない。

「申し訳ないのだけど、私、色々とお約束がありまして、失礼いたしますわね」

 周りにいた人たちはさっと3人から距離を取ったが、割り込んだのはシュアリーであるため、仕方のないことではあるが、側まで来ていたブルーナを私が紹介した方がいいような気がした。

「待って、お姉様。こちらはスイク王国の第二王子であるブルーナ殿下です」

 シュアリーの後ろにはブルーナがいた。ブルーナはアウラージュに微笑み、右足を引き、左腕は腹部に水平に当てて挨拶をし、アウラージュも膝を折って片足を後ろに引き、身を低く挨拶を返した。

「ごきげんよう、殿下」
「ごきげんよう」
「お約束があると聞こえました。私のことはお気になさらず、ご挨拶できただけでも大変光栄に思います」
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えさせていただきます」

 ブルーナはシュアリーにご紹介ありがとうございましたと去って行き、アウラージュは再び人に囲まれており、楽しそうな笑い声もする。アルバートもやっぱりいる。シュアリーの側にはルカスと護衛しかいない。その後はルカスの友人や、挨拶に来た人と話をするくらいであった。

 シュアリーはブルーナと縁談の話をしたい、アウラージュに何をしていたのか、王太子の話もしたい、でも私が動けばルカスが一緒に来てしまい、どちらもルカスの前で話すことは出来ないと、動けずにいた。

 ブルーナは様々な人と話をしており、特に令嬢たちがうっとりしていることが、よく分かる。あれだけの美男子だもの、あんな方に愛されてしまったら、どうなってしまうのかしらと考えていた。

「殿下、今日はアウラージュ殿下と話すのは難しいでしょう。皆に聞かれるようなところで話すことでもありませんから」
「そうね…一体どこにいるのかしら」
「半年も経ちましたし、公に出て来たということは、陛下に頼んで話をしたいと言ってみてはいかがでしょうか」
「分かったわ、お父様に話してみる」

 パーティーはそろそろ終わりになるようで、挨拶が行われている。ブルーナ殿下の姿がなく、アウラージュの方を見ると、ブルーナと話をしている。声が聞こえないのか、距離も近い。

 一体、そんな側で何を話しているの。

「アウラ」
「久しぶりね、王太子殿下に何かしたの?」
「ちょっと美しき猫が引っ掻いていてみようかと」
「まあ、意地が悪い」
「アウラに言われたくはないな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

処理中です...