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善意
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陛下はカトリーヌを呼び出したが、カトリーヌはいつも通りである。
「カトリーヌ、シュアリーの成績のことだが」
「あら?バレちゃった?王太子になったって発表されたから、流石にバレると思ったのよね」
悪びれる様子もなく、あっけらかんと言い切った。
「何てことをしたんだ!」
「怒られることかしら?王女が頭があまり良くないとバレては問題でしょう?だから気を利かせたのに」
「気を利かせただと?」
「だって、あれでは嫁ぎ先も見付からないと思ったから」
カトリーヌは善意で、王女の成長を見守って来た。アウラージュの成績は問題なかったが、シュアリーの成績に驚いた。王女教育を受けていて、この有様は問題だと、だからこそ3割程度増すようにして、追いつけば戻せばいい、自身が気付けば、謝罪すればいいと思っていたのだが、何も起こらなかった。
しかも、アウラージュからシュアリーへの王太子変更。きっと誰が気付く、白状されても、カトリーヌは悪いことをしたとは思っていなかった。
「アウラージュは?出て行ったの?」
「っな」
「シュアリーが奪ったんでしょう?何をやっているのかしら」
アウラージュが王位継承権を放棄したと聞いた時、ついにと思ってしまった。いつかいなくなってしまいそうな雰囲気をカトリーヌは感じていた。それでもいいと思っていたので、何も言わなかった。
シュアリーは何の努力もせずに、お姉様は素晴らしい、お姉様になりたかったなどと私によく話していた。それが婚約者を奪うことになったのだろう。第一王女から奪った戦利品といったところだろうか。
「私は悪いことをしたとは思っていないわ、今となっては感謝されるべきじゃないかしら。あんな成績の悪い王女に王太子を務められるわけがないと、言われなくて済んだのだから。これから必死で勉強させればいいじゃない、もう甘えは許されないわ、そうでしょう?」
「だが、シュアリーはその成績を信じているのだ」
「話せばいいじゃない、恥ずかしいから多めにしてあったと」
「そんなことを言えば、ショックを受けて、自分は相応しくないなどと言い出すに決まっているだろう」
シュアリーは心の強い子ではない、『お父様、見て見て』と嬉しそうに点数の良い試験用紙を持って来ていたのが、3割増しだったなんて、言えるわけがない。
「そもそもね、試験を見直せば気付いたのよ?なのに、見直してもいないということよ、一度もね。普通はあの問題は合っていたのかしらと、気になることがあるものじゃない?あの子は目の前のことをこなして終わりなのよ」
「それは…」
「私は国王と名乗るお兄様が2人に明らかに差を付けているのが気に入らなかったの。なぜ、あんなに差があったの?シュアリーもどこかにこっそり嫁げばバレなかったかもしれないのにね」
カトリーヌもアウラージュがいなくなる可能性を考えながらも、成績がすべてではない、シュアリーにも王女らしい縁談をと思っていた。だからこそ3割増しにさせて、そのまま送り出すつもりであった。
だが王となる場合は、無知は罪となってしまう。
「シュアリーはアウラージュとは違う。シュアリーは母親の思い出がない子なんだ」
「アウラージュだって同じようなものじゃない!」
「だが、それぞれに本質というものがある!」
「それはお兄様が勝手に思い込んだ本質でしょう。この子は強い、この子は弱い。弱い者を守らないといけないと、強い者は守られないの?優しくされないって言うの?アウラージュだって、強くはないわ。強くなろうとしていただけよ」
「カトリーヌ、シュアリーの成績のことだが」
「あら?バレちゃった?王太子になったって発表されたから、流石にバレると思ったのよね」
悪びれる様子もなく、あっけらかんと言い切った。
「何てことをしたんだ!」
「怒られることかしら?王女が頭があまり良くないとバレては問題でしょう?だから気を利かせたのに」
「気を利かせただと?」
「だって、あれでは嫁ぎ先も見付からないと思ったから」
カトリーヌは善意で、王女の成長を見守って来た。アウラージュの成績は問題なかったが、シュアリーの成績に驚いた。王女教育を受けていて、この有様は問題だと、だからこそ3割程度増すようにして、追いつけば戻せばいい、自身が気付けば、謝罪すればいいと思っていたのだが、何も起こらなかった。
しかも、アウラージュからシュアリーへの王太子変更。きっと誰が気付く、白状されても、カトリーヌは悪いことをしたとは思っていなかった。
「アウラージュは?出て行ったの?」
「っな」
「シュアリーが奪ったんでしょう?何をやっているのかしら」
アウラージュが王位継承権を放棄したと聞いた時、ついにと思ってしまった。いつかいなくなってしまいそうな雰囲気をカトリーヌは感じていた。それでもいいと思っていたので、何も言わなかった。
シュアリーは何の努力もせずに、お姉様は素晴らしい、お姉様になりたかったなどと私によく話していた。それが婚約者を奪うことになったのだろう。第一王女から奪った戦利品といったところだろうか。
「私は悪いことをしたとは思っていないわ、今となっては感謝されるべきじゃないかしら。あんな成績の悪い王女に王太子を務められるわけがないと、言われなくて済んだのだから。これから必死で勉強させればいいじゃない、もう甘えは許されないわ、そうでしょう?」
「だが、シュアリーはその成績を信じているのだ」
「話せばいいじゃない、恥ずかしいから多めにしてあったと」
「そんなことを言えば、ショックを受けて、自分は相応しくないなどと言い出すに決まっているだろう」
シュアリーは心の強い子ではない、『お父様、見て見て』と嬉しそうに点数の良い試験用紙を持って来ていたのが、3割増しだったなんて、言えるわけがない。
「そもそもね、試験を見直せば気付いたのよ?なのに、見直してもいないということよ、一度もね。普通はあの問題は合っていたのかしらと、気になることがあるものじゃない?あの子は目の前のことをこなして終わりなのよ」
「それは…」
「私は国王と名乗るお兄様が2人に明らかに差を付けているのが気に入らなかったの。なぜ、あんなに差があったの?シュアリーもどこかにこっそり嫁げばバレなかったかもしれないのにね」
カトリーヌもアウラージュがいなくなる可能性を考えながらも、成績がすべてではない、シュアリーにも王女らしい縁談をと思っていた。だからこそ3割増しにさせて、そのまま送り出すつもりであった。
だが王となる場合は、無知は罪となってしまう。
「シュアリーはアウラージュとは違う。シュアリーは母親の思い出がない子なんだ」
「アウラージュだって同じようなものじゃない!」
「だが、それぞれに本質というものがある!」
「それはお兄様が勝手に思い込んだ本質でしょう。この子は強い、この子は弱い。弱い者を守らないといけないと、強い者は守られないの?優しくされないって言うの?アウラージュだって、強くはないわ。強くなろうとしていただけよ」
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