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真の姿
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シュアリーの王太子教育が始まると、教師たちはアウラージュの担当だった者に総入れ替えされた。陛下には急に王太子になることになったのだから、ゆっくりと進めて欲しいと言われたが、教師陣はこれまでのシュアリーの成績と、どう指導するかの試験結果に疑問を抱いた。
しかも、生まれてから、こんなに勉強を詰め込まれたことのないシュアリーは熱を出し、寝込んでしまった。
「シュアリー様、大丈夫ですか」
「ルカス様、こんな姿で申し訳ありません」
「いいえ、身体がまだ慣れていないのでしょう。無理はしないでくださいね」
「ありがとうございます。お父様にもそう言われたわ」
ルカスはシュアリーの手を握り、早く元気になってくださいと、シュアリーもとても幸せな気持ちだった。
結局、シュアリーは1週間も療養し、今のシュアリーには1週間でも大事な時間だった。一向に再開しない様に、教師陣は陛下に直談判に向かった。
「再開せねば、取り繕えません」
「熱を出しておるのだ!」
「熱が出たのは1日目だけだと聞いております。あと、元シュアリー殿下の教師たちから話があるそうです。さあ!」
キャンベラ夫人が叩き出したのは、シュアリーの教師だったミアルダ夫人である。
「陛下に申し上げます。シュアリー殿下の成績は3割程度、増されているとお考えください」
「っな!どういうことだ」
王族は警備の問題、周りへの配慮もあり、学園に在籍はしているが、基本的に王宮で勉強をすることになっている。
「カリソル侯爵夫人が、シュアリー殿下はいずれ嫁ぐのだから、この成績では恥ずかしいと、バレることはないから3割くらい多くするようにと」
「カトリーヌが?」
カトリーヌ・カリソル侯爵夫人。陛下の妹で、母親を亡くした王女たちを可愛がっていた。
「はい、私共には逆らえる相手ではございません」
「アウラージュもか?」
「いえ、私共はカリソル侯爵夫人にアウラージュ殿下の成績のことで、何も言われたことはございません。成績も増す?なんてことは一度もありません」
「シュアリーは成績が悪いということか?」
陛下はアウラージュには劣るが、シュアリーも成績が良いものだと思っていた、3割増しされていたら当然である。
「平均より下回るということでございます」
「試験もか?」
「試験が、です。よく見ていただければ、不正解が正解になっていたはずです」
「な、なんだそれは。ずっとか?」
「幼き頃はそうでもありませんでしたが、学園の成績は一気に点数が下がりました」
「教えておったのだろう?」
「勿論にございます。その場では答えを導き出せるのですが、うっかりミスと、数字に弱く、せっかちなのか、きちんと問題を読まないことも多く…」
成績が全てではないが、それ以前に問題を読まない、うっかりミス、数字に弱いというのは王にとっては弱点となる。
「得意なことはないのか」
「殿下自身は憶えるのが得意だとおっしゃるのですが、間違って憶えていることが多いのです。あと、字が汚いです」
「ええ、字が汚過ぎて、解答が読めませんでした…」
「はい、私たちも正直苦労しました」
「散々だな…」
字は確かに汚い、幼い頃は仕方ないと思っていたが、きれいに書くように指導もしたが、改善されることはないまま、読めないことも多い。自身でも読めていないのではないかとすら思う。
「申し訳ございません」
「3割増しの件はカトリーヌに話を聞く。混乱を避けるためにも、他言無用にしてくれ。あと、シュアリーに一刻も早く勉強をするように話す。後は字だな、誰か教えられる者がいないか探してみる」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
陛下は話しながら、幼子の指導を行っているように感じた。だが、甘やかしたのは自身の責任でもある、王太子になった以上、向き合わなければならない。
しかも、生まれてから、こんなに勉強を詰め込まれたことのないシュアリーは熱を出し、寝込んでしまった。
「シュアリー様、大丈夫ですか」
「ルカス様、こんな姿で申し訳ありません」
「いいえ、身体がまだ慣れていないのでしょう。無理はしないでくださいね」
「ありがとうございます。お父様にもそう言われたわ」
ルカスはシュアリーの手を握り、早く元気になってくださいと、シュアリーもとても幸せな気持ちだった。
結局、シュアリーは1週間も療養し、今のシュアリーには1週間でも大事な時間だった。一向に再開しない様に、教師陣は陛下に直談判に向かった。
「再開せねば、取り繕えません」
「熱を出しておるのだ!」
「熱が出たのは1日目だけだと聞いております。あと、元シュアリー殿下の教師たちから話があるそうです。さあ!」
キャンベラ夫人が叩き出したのは、シュアリーの教師だったミアルダ夫人である。
「陛下に申し上げます。シュアリー殿下の成績は3割程度、増されているとお考えください」
「っな!どういうことだ」
王族は警備の問題、周りへの配慮もあり、学園に在籍はしているが、基本的に王宮で勉強をすることになっている。
「カリソル侯爵夫人が、シュアリー殿下はいずれ嫁ぐのだから、この成績では恥ずかしいと、バレることはないから3割くらい多くするようにと」
「カトリーヌが?」
カトリーヌ・カリソル侯爵夫人。陛下の妹で、母親を亡くした王女たちを可愛がっていた。
「はい、私共には逆らえる相手ではございません」
「アウラージュもか?」
「いえ、私共はカリソル侯爵夫人にアウラージュ殿下の成績のことで、何も言われたことはございません。成績も増す?なんてことは一度もありません」
「シュアリーは成績が悪いということか?」
陛下はアウラージュには劣るが、シュアリーも成績が良いものだと思っていた、3割増しされていたら当然である。
「平均より下回るということでございます」
「試験もか?」
「試験が、です。よく見ていただければ、不正解が正解になっていたはずです」
「な、なんだそれは。ずっとか?」
「幼き頃はそうでもありませんでしたが、学園の成績は一気に点数が下がりました」
「教えておったのだろう?」
「勿論にございます。その場では答えを導き出せるのですが、うっかりミスと、数字に弱く、せっかちなのか、きちんと問題を読まないことも多く…」
成績が全てではないが、それ以前に問題を読まない、うっかりミス、数字に弱いというのは王にとっては弱点となる。
「得意なことはないのか」
「殿下自身は憶えるのが得意だとおっしゃるのですが、間違って憶えていることが多いのです。あと、字が汚いです」
「ええ、字が汚過ぎて、解答が読めませんでした…」
「はい、私たちも正直苦労しました」
「散々だな…」
字は確かに汚い、幼い頃は仕方ないと思っていたが、きれいに書くように指導もしたが、改善されることはないまま、読めないことも多い。自身でも読めていないのではないかとすら思う。
「申し訳ございません」
「3割増しの件はカトリーヌに話を聞く。混乱を避けるためにも、他言無用にしてくれ。あと、シュアリーに一刻も早く勉強をするように話す。後は字だな、誰か教えられる者がいないか探してみる」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
陛下は話しながら、幼子の指導を行っているように感じた。だが、甘やかしたのは自身の責任でもある、王太子になった以上、向き合わなければならない。
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