上 下
152 / 154

爾来

しおりを挟む
 ダリアはマーガレットを養育することは勿論すぐに了承したが、ライラに起こりえることだと話はしていたが、ライラの本心はどうだろうかと心配した。

「躊躇わないで決めてくれて良かったです。上手く出来るかは分かりませんけど、私は養母として接させて貰っていいですか?」
「だが」
「母親は一人でも、養母がいてもいいでしょう?」
「ああ、本当にありがとう」

 ダリアはライラが自分の母親への思いに寄り添い、笑顔でいてくれることに心から救われた。メリーアンも寂しいことは我慢しなくていいとは言ってくれたが、両親の思い出を話しても、話を変えられたこともあった。

 面白くなかったかなと思っていたが、今となっては、実は慰めるその場しのぎの言葉で、興味がなかったのではないかと思える。

 幼い頃から、自信のあるメリーアンの姿に憧れたが、見方を変えれば、傲慢な振る舞いも多かった。当時は侯爵令嬢だからと納得していた。

 メリーアンは事件に関して、出生についても、確かに何もしていない。だが、加害者家族になれば立場は変わる、貴族ならば侯爵令嬢だったならば、変えなければならなかった。なのに、彼女は変わらなかった。

 もう一緒にいられないと思った。

 不幸になってしまえばいいとは思わないが、これ以上、自分を貶めるようなことはしないで欲しいとは願っている。

 そして、ダリアとライラは再婚し、そこへマーガレットが加わり、まだ幼かったこともあるが、構ってくれるライラにも懐き、片耳も多少聞こえにくいことはあったが、もう片方は聞こえるので、生活には困ることはなかった。

 マーガレットは見た目はリリー、メリーアンに似ていたが、生まれよりも育ちというべきか、穏やかな優しい子に育っていく。

 だが、マーガレットにはいずれ、悲しき事実を知ることになる。辛い場面もあるかもしれないが、ダリアとライラが支えていくことになるだろう。

 リリー・ロスは刑期を終えて、そのまま先にオーロラの入っていた修道院に入った。その後、死ぬまで静かに過ごした。

 オパール・ガイツは刑期を終えて、コンガル侯爵家に行ったが、夫もいないと言われ、罪人を入れるわけにはいかないと締め出され、仕方がないので、とりあえず実家に戻ったが、既に実家はなかった。

 再び、コンガル侯爵家に戻るも、同じことを言われるだけで、夫の居場所も分からず、どうにもならなかった。その後の行方は分かっておらず、娼婦をしていた、貧民街で暮らしていたという噂があったくらいである。

 リサナ・エンザーは刑期を終えて、実家に戻るしかなかったが、領地に幽閉されて、慎ましく暮らした。

 どの家族も、罪人の家族ということで、ユーフレット侯爵家と同様に、白目で見られて、厳しい状況に追い込まれて、いずれ没落する家も出る可能性もある。

「メリーアンは幽閉されたそうだ」
「そうですか…力のある侯爵令嬢だったから、許されていたことが許されなくなったと言われているようですね。貴族ですから、仕方のないことかもしれませんけど」
「ああ、こうなっては本人の責任だろう」

 リアンスもダリアと妻としてならば、あんなに嫌悪感はなかっただろう。だが、その立場がなくなって見てみると、あまりに無作法な姿であった。

 一応は婚約者ではあったが、ロアンスラー公爵家としても、親しい交流はなかったので、見る目が曇っていたのだろう。

 両親はリリー夫人のことで、メリーアンとのことを反対していたが、それは皮肉にも正しかったと言える。

 結婚する前提ではなかったことで、興味もなかったが、メリーアンにとっては私は都合よく扱えると思っていたところが、離縁後に見え隠れしているようになって、侮られていたことに腹が立った。

 ゆえに領地と幽閉となって、リアンスにとっても僥倖であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

大好きな旦那様が愛人を連れて帰還したので離縁を願い出ました

ネコ
恋愛
戦地に赴いていた侯爵令息の夫・ロウエルが、討伐成功の凱旋と共に“恩人の娘”を実質的な愛人として連れて帰ってきた。彼女の手当てが大事だからと、わたしの存在など空気同然。だが、見て見ぬふりをするのももう終わり。愛していたからこそ尽くしたけれど、報われないのなら仕方ない。では早速、離縁手続きをお願いしましょうか。

義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので、家出してあげました。

新野乃花(大舟)
恋愛
婚約関係にあったカーテル伯爵とアリスは、相思相愛の理想的な関係にあった。しかし、それを快く思わない伯爵の母が、アリスの事を執拗に口で攻撃する…。その行いがしばらく繰り返されたのち、アリスは自らその姿を消してしまうこととなる。それを知った伯爵は自らの母に対して怒りをあらわにし…。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

処理中です...