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爾来

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 ダリアはマーガレットを養育することは勿論すぐに了承したが、ライラに起こりえることだと話はしていたが、ライラの本心はどうだろうかと心配した。

「躊躇わないで決めてくれて良かったです。上手く出来るかは分かりませんけど、私は養母として接させて貰っていいですか?」
「だが」
「母親は一人でも、養母がいてもいいでしょう?」
「ああ、本当にありがとう」

 ダリアはライラが自分の母親への思いに寄り添い、笑顔でいてくれることに心から救われた。メリーアンも寂しいことは我慢しなくていいとは言ってくれたが、両親の思い出を話しても、話を変えられたこともあった。

 面白くなかったかなと思っていたが、今となっては、実は慰めるその場しのぎの言葉で、興味がなかったのではないかと思える。

 幼い頃から、自信のあるメリーアンの姿に憧れたが、見方を変えれば、傲慢な振る舞いも多かった。当時は侯爵令嬢だからと納得していた。

 メリーアンは事件に関して、出生についても、確かに何もしていない。だが、加害者家族になれば立場は変わる、貴族ならば侯爵令嬢だったならば、変えなければならなかった。なのに、彼女は変わらなかった。

 もう一緒にいられないと思った。

 不幸になってしまえばいいとは思わないが、これ以上、自分を貶めるようなことはしないで欲しいとは願っている。

 そして、ダリアとライラは再婚し、そこへマーガレットが加わり、まだ幼かったこともあるが、構ってくれるライラにも懐き、片耳も多少聞こえにくいことはあったが、もう片方は聞こえるので、生活には困ることはなかった。

 マーガレットは見た目はリリー、メリーアンに似ていたが、生まれよりも育ちというべきか、穏やかな優しい子に育っていく。

 だが、マーガレットにはいずれ、悲しき事実を知ることになる。辛い場面もあるかもしれないが、ダリアとライラが支えていくことになるだろう。

 リリー・ロスは刑期を終えて、そのまま先にオーロラの入っていた修道院に入った。その後、死ぬまで静かに過ごした。

 オパール・ガイツは刑期を終えて、コンガル侯爵家に行ったが、夫もいないと言われ、罪人を入れるわけにはいかないと締め出され、仕方がないので、とりあえず実家に戻ったが、既に実家はなかった。

 再び、コンガル侯爵家に戻るも、同じことを言われるだけで、夫の居場所も分からず、どうにもならなかった。その後の行方は分かっておらず、娼婦をしていた、貧民街で暮らしていたという噂があったくらいである。

 リサナ・エンザーは刑期を終えて、実家に戻るしかなかったが、領地に幽閉されて、慎ましく暮らした。

 どの家族も、罪人の家族ということで、ユーフレット侯爵家と同様に、白目で見られて、厳しい状況に追い込まれて、いずれ没落する家も出る可能性もある。

「メリーアンは幽閉されたそうだ」
「そうですか…力のある侯爵令嬢だったから、許されていたことが許されなくなったと言われているようですね。貴族ですから、仕方のないことかもしれませんけど」
「ああ、こうなっては本人の責任だろう」

 リアンスもダリアと妻としてならば、あんなに嫌悪感はなかっただろう。だが、その立場がなくなって見てみると、あまりに無作法な姿であった。

 一応は婚約者ではあったが、ロアンスラー公爵家としても、親しい交流はなかったので、見る目が曇っていたのだろう。

 両親はリリー夫人のことで、メリーアンとのことを反対していたが、それは皮肉にも正しかったと言える。

 結婚する前提ではなかったことで、興味もなかったが、メリーアンにとっては私は都合よく扱えると思っていたところが、離縁後に見え隠れしているようになって、侮られていたことに腹が立った。

 ゆえに領地と幽閉となって、リアンスにとっても僥倖であった。
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