上 下
151 / 154

幽閉

しおりを挟む
 メリーアンは結局、行かないからと準備もしなかったので、とりあえずメイドが服と下着だけを何着か詰め込んで、その鞄と共に馬車に無理矢理に乗せられた。

 ツートとシシラも、一緒に領地に行くことになり、トーラスは見送りに出て来たが、カーサスは出て来ることはなかった。

 マーガレットもいたが、抱きしめさせると離さない可能性もあるので、見るだけにした。マーガレットは母親とは認識しているが、キャッキャと手を振っていた。

 メリーアンはその時に、心から離れたくないと思ったが、既に遅かった。

 そして、メリーアンは領地で療養という形で、幽閉という形になった。

 メリーアンはマーガレットに会いたいと言ったが、マーガレットは領地に行くのは難しいということで、面会も叶わなかった。まさにトーラスが考えていた面会についてだったが、それはメリーアンが問題を起こす前であった。

「じゃあ、私が行くわ」
「行きたいなら一人で行きなさい」

 ツートとシシラも領地に住むようになったが、カーラスの心労を考えて、メリーアンをもう王都に行かせたくなかった。

「どうしてよ…面会は権利でしょう!」
「お前は問題を起こした感覚がないのか?行きたいなら勝手にいけばいい、だが馬車も護衛も出さない」
「どうしてよ…」

 メリーアンがいくら言ってもツートが許可を出すことはなかった。自由に出来るお金も持っていなかったために、雇うことも出来ない。

 そして、さすがに一人で行くことは怖かった。リリーが言っていたこと、被害者家族に実際に会ったことで、何かあったらと思うようになっていた。

 シシラや護衛に頼んだが、出来ないと言われてしまい、諦めるしかなかった。

 ただ、ダリアやマーガレットに手紙を書いていたが、ツートによって、送られることはなかった。

 マーガレットを養育することになったダリアだったが、ユーフレット侯爵家はメリーアンとは面会はしなくてもいい。もしマーガレットが大きくなって、会いたいと言うことがあれば、会ってやって欲しいと願い出た。

 メリーアンにはそのことは、敢えて知らせていない。

 領地にやって来て、しばらくするとメリーアンは、王都に戻りたいと訴えるようになった。

「ユーフレット侯爵家はカーラスの者だ、お前は娘はないと言われただろう」
「娘よ!」
「お前が約束を守らず、裏切ったんだろうが!」
「お前が弁えていたら、違っただろう」
「じゃあ、弁えるわ」
「もう遅い、カーラスはお前の顔も見たくないそうだ。もうずっと避けられていたんだろう?」
「…私のお父様はお父様だけよ」

 メリーアンもカーラスには会っていないことは、分かっていた。あの時のカーサスの顔は今でも覚えており、顔を見たのはあの日が最後だった。

「カーラスもそう思っていた、踏みにじったのはお前だろう」
「でも、私は正しいことを言っただけで」

 自分は間違っていないという姿に、ツートにはこれ以上、迷惑を掛けるようならば、考えがあった。

「それ以上言うなら、教会に行って貰う」
「…っな」

 スノーの妹・レピアが今でも出て来る様子のない、オッフェンベル教会のことである。メリーアンも存在を知っている。

「まさか」
「ああ、まさかだよ。それが嫌なら、大人しくしていなさい」
「そんな、私はそんなところに行くような人間ではないわ」
「ローザ公爵家に迷惑を掛けただけで、十分権利あるさ。それとも、命を狙われる可能性があるが、市井で暮らすか?」
「う、そでしょ…」
「どうする?ここか、市井か、教会か」
「ここに、いるわ」

 メリーアンは市井も恐ろしく、オッフェンベル教会には行きたくない。ツートも恐ろしいことから、いつかカーラスか、トーラスが迎えに来てくれるだろうと信じて大人しくしているしかなかった。

 さすがに歩いて行ける場所ではないので、飛び出して行くこともなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

大好きな旦那様が愛人を連れて帰還したので離縁を願い出ました

ネコ
恋愛
戦地に赴いていた侯爵令息の夫・ロウエルが、討伐成功の凱旋と共に“恩人の娘”を実質的な愛人として連れて帰ってきた。彼女の手当てが大事だからと、わたしの存在など空気同然。だが、見て見ぬふりをするのももう終わり。愛していたからこそ尽くしたけれど、報われないのなら仕方ない。では早速、離縁手続きをお願いしましょうか。

義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので、家出してあげました。

新野乃花(大舟)
恋愛
婚約関係にあったカーテル伯爵とアリスは、相思相愛の理想的な関係にあった。しかし、それを快く思わない伯爵の母が、アリスの事を執拗に口で攻撃する…。その行いがしばらく繰り返されたのち、アリスは自らその姿を消してしまうこととなる。それを知った伯爵は自らの母に対して怒りをあらわにし…。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

処理中です...