149 / 154
被害者家族1
しおりを挟む
「あなたは両親が罪人なのよね?それなのに、よく侯爵令嬢よ!なんて、よく言えるわね!ジーリス・ユーフレットの娘よって言った方がいいんじゃない?」
「そうよ、それがいいじゃない」
メリーアンはごっくんと、唾を飲み込んだ。
ローラとティナは元々、姉と妹が自殺したことで知り合い、恨みを抱いていた。だが、ジーリス・ユーフレットは亡くなり、恨みは行き場を失った。
家族へと向かわなかったのは、ジーリスを調べて、自分より上の者には態度が違うことを知っていたからだった。騙されていると言うことに腹が立たないわけではなかったが、酷く恨んではいなかった。
姉と妹以外に家族のいなかった二人は、一緒に侍女として働いていた。
だが、今年、実は同じ感情を持つオーロラが死へと導いていたことを知り、ユーフレット侯爵家は賠償をすると聞いたが、そんなことはどうでも良かった。
二人は家族は、どんな顔をして暮らしているのかが知りたくなった。
ユーフレット侯爵家は薄暗い雰囲気で、皆、疲れた顔をしていた。だが、唯一、違ったのがメリーアンだった。毎日、メリーアンの文句で盛り上がるほどであった。
「何をするつもりなの?」
「何もしないって言っているでしょう?」
「あなたこそ睡眠薬を飲ませて、一体何をするのかと思ったけど、またローザ公爵家に行くなんて、馬鹿じゃないの。幽閉ならざまあみろね」
ようやく満足した二人は、メリーアンの拘束を解いた。
「手伝わなくていいなら、もう去りましょう」
「待ちなさいよ!お父様にあなたたちのことを言うわよ!」
「言えば?」
「そもそも、お父様は死んでるじゃない」
「そうだったわね」
あははと笑いながら、ローラとティナは去って行くが、メリーアンはツートの部屋を訪れて、叫んだ。
「あの侍女二人は、叔父様の被害者の家族だったわよ!どういうことよ!」
「何?」
「本当なの…?」
「家族が叔父様に強姦されて、自殺したって言ってたわ!私、先程、捕まれて床に押し付けられたのよ!暴力よ!暴力!」
「何だって…」
「あなた…」
ツートとシシラもいつか恨まれて、危害を加えられることもあるかもしれないとは考えており、背筋が震えた。
「復讐しに来たのか?」
「笑いながらどこかに行ったわ」
使用人と護衛に探させると、ローラとティナは荷造りをしていた。
「あら?もう解雇でございましょう?」
「どちらにしても、メリーアン様は幽閉ですから、もう監視は必要ないでしょう?」
去ることを決めたローラとティナは、ツートとシシラにも開き直っていた。
「メリーアンの言ったことは、本当なのか?」
「何を言ったか知らないですけど、姉であるマルティナ・デオンが、ジーリス・ユーフレットの被害者であることは事実です。姉は私の唯一の家族でした」
「私は妹、ジーナ・コヒーが強姦され、自殺しました。私には母もいましたが、妹が亡くなって、体を壊して亡くなりましたので、ジーリス・ユーフレットせいで、一人になりました」
何人もの被害者と会ってはいたが、まさか邸にいるなんて思いもしなかった。
何人か国を出ているのか、連絡の取れない被害者の家族がいると聞いていた。おそらく、照らし合わせれば、事実だと判明するだろう。
わざわざ嘘を付く必要がない。
ローラとティナは紹介所から来て貰った平民の二人で、毅然とした態度を取れる方をと頼み、今日は不可抗力だったが、非常に優秀な侍女であった。
「っ、復讐をしに来たのか?」
怪しい動きなどはなかったが、もしかしたら何かしていたのだろうか。
「加害者家族が、どう暮らしているのか見に来たのです」
「私たちが見た地獄を、少しでも見ているのか、出来れば苦しんでいるところが見たかったのです」
ツートとシシラは息が止まり、胸が苦しくなった。
「そうよ、それがいいじゃない」
メリーアンはごっくんと、唾を飲み込んだ。
ローラとティナは元々、姉と妹が自殺したことで知り合い、恨みを抱いていた。だが、ジーリス・ユーフレットは亡くなり、恨みは行き場を失った。
家族へと向かわなかったのは、ジーリスを調べて、自分より上の者には態度が違うことを知っていたからだった。騙されていると言うことに腹が立たないわけではなかったが、酷く恨んではいなかった。
姉と妹以外に家族のいなかった二人は、一緒に侍女として働いていた。
だが、今年、実は同じ感情を持つオーロラが死へと導いていたことを知り、ユーフレット侯爵家は賠償をすると聞いたが、そんなことはどうでも良かった。
二人は家族は、どんな顔をして暮らしているのかが知りたくなった。
ユーフレット侯爵家は薄暗い雰囲気で、皆、疲れた顔をしていた。だが、唯一、違ったのがメリーアンだった。毎日、メリーアンの文句で盛り上がるほどであった。
「何をするつもりなの?」
「何もしないって言っているでしょう?」
「あなたこそ睡眠薬を飲ませて、一体何をするのかと思ったけど、またローザ公爵家に行くなんて、馬鹿じゃないの。幽閉ならざまあみろね」
ようやく満足した二人は、メリーアンの拘束を解いた。
「手伝わなくていいなら、もう去りましょう」
「待ちなさいよ!お父様にあなたたちのことを言うわよ!」
「言えば?」
「そもそも、お父様は死んでるじゃない」
「そうだったわね」
あははと笑いながら、ローラとティナは去って行くが、メリーアンはツートの部屋を訪れて、叫んだ。
「あの侍女二人は、叔父様の被害者の家族だったわよ!どういうことよ!」
「何?」
「本当なの…?」
「家族が叔父様に強姦されて、自殺したって言ってたわ!私、先程、捕まれて床に押し付けられたのよ!暴力よ!暴力!」
「何だって…」
「あなた…」
ツートとシシラもいつか恨まれて、危害を加えられることもあるかもしれないとは考えており、背筋が震えた。
「復讐しに来たのか?」
「笑いながらどこかに行ったわ」
使用人と護衛に探させると、ローラとティナは荷造りをしていた。
「あら?もう解雇でございましょう?」
「どちらにしても、メリーアン様は幽閉ですから、もう監視は必要ないでしょう?」
去ることを決めたローラとティナは、ツートとシシラにも開き直っていた。
「メリーアンの言ったことは、本当なのか?」
「何を言ったか知らないですけど、姉であるマルティナ・デオンが、ジーリス・ユーフレットの被害者であることは事実です。姉は私の唯一の家族でした」
「私は妹、ジーナ・コヒーが強姦され、自殺しました。私には母もいましたが、妹が亡くなって、体を壊して亡くなりましたので、ジーリス・ユーフレットせいで、一人になりました」
何人もの被害者と会ってはいたが、まさか邸にいるなんて思いもしなかった。
何人か国を出ているのか、連絡の取れない被害者の家族がいると聞いていた。おそらく、照らし合わせれば、事実だと判明するだろう。
わざわざ嘘を付く必要がない。
ローラとティナは紹介所から来て貰った平民の二人で、毅然とした態度を取れる方をと頼み、今日は不可抗力だったが、非常に優秀な侍女であった。
「っ、復讐をしに来たのか?」
怪しい動きなどはなかったが、もしかしたら何かしていたのだろうか。
「加害者家族が、どう暮らしているのか見に来たのです」
「私たちが見た地獄を、少しでも見ているのか、出来れば苦しんでいるところが見たかったのです」
ツートとシシラは息が止まり、胸が苦しくなった。
1,641
お気に入りに追加
2,858
あなたにおすすめの小説
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。
碧野葉菜
恋愛
フランチェスカ家の伯爵令嬢、アンジェリカは、両親と妹にいない者として扱われ、地下室の部屋で一人寂しく暮らしていた。
そんな彼女の孤独を癒してくれたのは、使用人のクラウスだけ。
彼がいなくなってからというもの、アンジェリカは生きる気力すら失っていた。
そんなある日、フランチェスカ家が破綻し、借金を返すため、アンジェリカは娼館に売られそうになる。
しかし、突然現れたブリオット公爵家からの使者に、縁談を持ちかけられる。
戸惑いながらブリオット家に連れられたアンジェリカ、そこで再会したのはなんと、幼い頃離れ離れになったクラウスだった――。
8年の時を経て、立派な紳士に成長した彼は、アンジェリカを妻にすると強引に迫ってきて――!?
執着系年下美形公爵×不遇の無自覚美人令嬢の、西洋貴族溺愛ストーリー!
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる