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処遇
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「お兄様!たまたま困っていて、送って貰ったの」
メリーアンは慌ててトーラスに言ったが、その場しのぎのことしか考えられなくなっていたので、睡眠薬を飲ませたことをすっかり忘れていた。
「お前はもういい、邸に入りなさい」
トーラスは御者と護衛にお礼を言っており、ローザ公爵家に雇われた者でも、格下なのだからそんなことしなくてもいいのにと思っていた。
メリーアンは折角、あんなに歩いたのに、収穫はなかったと思いながら、邸に入ると祖父母と侍女二人が待っていた。
そこでようやく、不味いと心から思った。
「メリーアン、お前にはもう領地へ行って貰う」
「待って!」
「言い訳はもういい、明日には経つから準備をしなさい。二人も申し訳ないが、最後に手伝ってやってくれるか」
「「はい」」
ようやくメリーアンは、返事をする侍女たちに、睡眠薬を飲ませたことを思い出した。口止めしようにも、眠らせていたので、起きる前に戻らなければならなかったと気付いた。
そもそも、監視なのだから口止めが出来るはずがない。
「違うの!話をしに行っただけなの!ローザ公爵家に聞いて貰えば分かるわ」
「先触れを出して、許可を得て行ったのか?違うだろう?」
「そ、それは…許して貰えないと思って」
「侍女に睡眠薬を飲ませてまで行こうなどと、人間のすることではない」
「だ、だって…」
そうでもしないと行けないじゃない。ダリアは優しいから、受け入れてしまう。だからこそ、私が側にいて意見を言わなければいけなかったのに、側にいられないから、仕方なく言いに行ったのに。
スノーさんが勧めたのは誤解だったようだけど、リアンス様は公爵令息なのに、私の言っていることが理解して貰えなかった。
きっとスノーさんと結婚して、恥ずかしさが分からなくなってしまったのだろう。子爵令嬢なんて、ダリアに相応しくない。
どうしてもダリア、マーガレットのためにも、言わなければならなかった。
「マ、マーガレットはどうなるのよ!ダリアと面会があるのよ!領地からでは大変じゃない」
「マーガレットは、明日、オスレ伯爵家に引き取って貰う。最初からそうするべきだった。再婚をされるなら丁度いい」
既に祖父・ツートは侍女から話を聞いて、ダリアに連絡を取り、マーガレットの養育を任せたいと話を付けていた。
「そんなの嫌よ!マーガレットは私が産んだのよ!」
「お前が約束を破ったからだろう!」
「私は、ダリアのために!」
「いい加減にしろ!お前はもう離縁したんだ!」
「私は認めていないわ!ダリアには私がいないと駄目なのよ!」
オスレ伯爵家を訪ねなかったのは、遠かったこともあるが、いずれ戻ることになるのに、オスレ伯爵の使用人に嫌われるのは良くないと思っていたからである。
「いい加減にしろ、お前は領地で幽閉だ!これは覆らない」
「っな…私は、侯爵令嬢なのよ」
「だったら、侯爵令嬢らしくしたらどうだ!恥ずかしい!」
ツートはこめかみに血管が浮き出ており、シシラはメリーアンの言動に怪訝な顔を崩せないでいた。
「私が叔父様の子どもだからなの?だから追い出すのでしょう!そうなのでしょう!」
メリーアンが叫んだ言葉に、皆、息を呑んだ。
「お前が約束を破ったからだと言っているだろう!」
「違うわ!お父様が言ったのでしょう!酷いわ…」
父であるカーサスは邸にいるのかも分からないが、姿も現さない。メリーアンが自己中心的に振舞った癖に、自分が被害者のように、泣き崩れた。
「早く準備しなさい。出来ていなかったら、そのまま行くことになるからな!」
「メリーアン、準備しなさい。申し訳ないけど、手伝ってあげて頂戴ね」
シシラは侍女たちに声を掛け、メリーアンは護衛によって立たされ、部屋に連れて行かれた。
メリーアンは慌ててトーラスに言ったが、その場しのぎのことしか考えられなくなっていたので、睡眠薬を飲ませたことをすっかり忘れていた。
「お前はもういい、邸に入りなさい」
トーラスは御者と護衛にお礼を言っており、ローザ公爵家に雇われた者でも、格下なのだからそんなことしなくてもいいのにと思っていた。
メリーアンは折角、あんなに歩いたのに、収穫はなかったと思いながら、邸に入ると祖父母と侍女二人が待っていた。
そこでようやく、不味いと心から思った。
「メリーアン、お前にはもう領地へ行って貰う」
「待って!」
「言い訳はもういい、明日には経つから準備をしなさい。二人も申し訳ないが、最後に手伝ってやってくれるか」
「「はい」」
ようやくメリーアンは、返事をする侍女たちに、睡眠薬を飲ませたことを思い出した。口止めしようにも、眠らせていたので、起きる前に戻らなければならなかったと気付いた。
そもそも、監視なのだから口止めが出来るはずがない。
「違うの!話をしに行っただけなの!ローザ公爵家に聞いて貰えば分かるわ」
「先触れを出して、許可を得て行ったのか?違うだろう?」
「そ、それは…許して貰えないと思って」
「侍女に睡眠薬を飲ませてまで行こうなどと、人間のすることではない」
「だ、だって…」
そうでもしないと行けないじゃない。ダリアは優しいから、受け入れてしまう。だからこそ、私が側にいて意見を言わなければいけなかったのに、側にいられないから、仕方なく言いに行ったのに。
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きっとスノーさんと結婚して、恥ずかしさが分からなくなってしまったのだろう。子爵令嬢なんて、ダリアに相応しくない。
どうしてもダリア、マーガレットのためにも、言わなければならなかった。
「マ、マーガレットはどうなるのよ!ダリアと面会があるのよ!領地からでは大変じゃない」
「マーガレットは、明日、オスレ伯爵家に引き取って貰う。最初からそうするべきだった。再婚をされるなら丁度いい」
既に祖父・ツートは侍女から話を聞いて、ダリアに連絡を取り、マーガレットの養育を任せたいと話を付けていた。
「そんなの嫌よ!マーガレットは私が産んだのよ!」
「お前が約束を破ったからだろう!」
「私は、ダリアのために!」
「いい加減にしろ!お前はもう離縁したんだ!」
「私は認めていないわ!ダリアには私がいないと駄目なのよ!」
オスレ伯爵家を訪ねなかったのは、遠かったこともあるが、いずれ戻ることになるのに、オスレ伯爵の使用人に嫌われるのは良くないと思っていたからである。
「いい加減にしろ、お前は領地で幽閉だ!これは覆らない」
「っな…私は、侯爵令嬢なのよ」
「だったら、侯爵令嬢らしくしたらどうだ!恥ずかしい!」
ツートはこめかみに血管が浮き出ており、シシラはメリーアンの言動に怪訝な顔を崩せないでいた。
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メリーアンが叫んだ言葉に、皆、息を呑んだ。
「お前が約束を破ったからだと言っているだろう!」
「違うわ!お父様が言ったのでしょう!酷いわ…」
父であるカーサスは邸にいるのかも分からないが、姿も現さない。メリーアンが自己中心的に振舞った癖に、自分が被害者のように、泣き崩れた。
「早く準備しなさい。出来ていなかったら、そのまま行くことになるからな!」
「メリーアン、準備しなさい。申し訳ないけど、手伝ってあげて頂戴ね」
シシラは侍女たちに声を掛け、メリーアンは護衛によって立たされ、部屋に連れて行かれた。
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