【完結】試される愛の果て

野村にれ

文字の大きさ
上 下
145 / 154

再婚6

しおりを挟む
「どうした?」

 リアンスが門に行き、これが最後だと招き入れることになった。

「リアンス様!スノーさんに話があるの」
「また先触れもなく、いい加減にしろ!」
「だからスノーさんに話が合って」
「スノーはローザ公爵家の人間だ、何がスノーさんだ?」
「っあ、でも…」
「はあ…スノーも話を聞くと言っている。これが最後だ、いいな?」
「分かったわ」

 リアンスがメリーアンを連れて、スノーの待つ応接室に向かった。

「スノーさ、まは、ちゃんとやっているの?」

 メリーアンはまたスノーさんと言おうとして、さまに言い換えた。

「ああ、勿論だ」
「本当?伯爵令嬢には荷が重いでしょう?」
「ローザ公爵家を馬鹿にしているのか?」
「ち、違うわ」

 メリーアンは元々、伯爵令嬢であるスノーを下に見ており、思わず出てしまったが、リアンスにそんなに怒らなくてもいいのにと、不貞腐れていた。

 ようやく足が痛くなって来たメリーアンは、リアンスに後れを取っていた。

 応接室の扉が開かれ、リアンスが立とうとしたスノーにそのままでいいと言っているのが聞こえ、私に立ち上がらないなんてと思ったが、グッと我慢した。

「ごきげんよう」

 侯爵令嬢として誇り高くと思いながら、応接室に入ると、重そうな大きなお腹を抱えたスノーがいた。

「座ったままで、お許しください」
「っえ、ええ、妊娠していたのね」
「はい」

 メリーアンは言い辛くなったなとは思ったが、スノーを大事そうに労わるリアンスを見ていると、怒りの方が勝った。

「ダリアに、子爵令嬢を紹介したのはあなた?」
「違いますが?」
「でも、あなたの祖母の家でしょう?」
「はい」
「ダリアにどうかと勧めたんじゃないの!」

 メリーアンは大きな声で怒鳴った。

「大きな声を出すな、下品だ」
「っな!スノーさんが、次期公爵夫人の力で紹介したのでしょうって言っているの!」
「違います」

 引き合わせたのは叔母であり、紹介したわけではないので、素直に答えた。

「そんなことを言いに来たのか?君にはもう関係のないことだろう」
「関係あるわ!」
「元妻というのは一生関係があるのか?」
「当たり前じゃない!」

 リアンスはそう答えると思って、メリーアンに問い掛けた。

「ならば、リリー・ロスも一生、関わりがあるんだろうな」
「お母様は関係ないわ」
「今、君が言ったんじゃないか。元妻は一生関わりがあると、リリー・ロスもそうだろう?」
「そ、それは…」

 メリーアンは離縁したのだから、リリーとは関わりがないと思って生きており、答えに窮した。

「関わりがあるということは、自信の母親を害そうとしたことが、纏っていると言うことだろう?それで、話したいことは終わりか?」
「本当に違うって言うの?」
「はい」
「じゃあ、どうして…ダリアが再婚なんて…」
「私たちも報告を受けて、驚いたくらいだよ」

 わざわざ叔母とダリアを会わせたと言うつもりのないスノーに、リアンスも素直にありのままを答えることにした。

「リアンス様、どうにかならない?」
「何がだ?」
「再婚よ!」
「だから、君にはもう関係のないことだろう?」
「マーガレットの父親よ!関係はあるでしょう」
「マーガレット嬢には関わりがあるが、君は関係ないだろう」

 リアンスは未だにダリアに執着する様に、これはスノーの言うように、会って正解だったかもしれないと思った。リーター子爵家に、押し掛けなかっただけ良かったかもしれない。

「お願いよ、再婚を止めさせて。ダリアに辛い思いをして欲しくないの」
「どういう意味だ?」
「だって、侯爵令嬢を妻にしたのに、次は子爵令嬢なんて、馬鹿にされるに決まっているでしょう?」

 リアンスもスノーもその言葉に呆れるしかなかった。罪を犯したユーフレット侯爵家に未だに価値があると思っているのだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

政略結婚の指南書

編端みどり
恋愛
【完結しました。ありがとうございました】 貴族なのだから、政略結婚は当たり前。両親のように愛がなくても仕方ないと諦めて結婚式に臨んだマリア。母が持たせてくれたのは、政略結婚の指南書。夫に愛されなかった母は、指南書を頼りに自分の役目を果たし、マリア達を立派に育ててくれた。 母の背中を見て育ったマリアは、愛されなくても自分の役目を果たそうと覚悟を決めて嫁いだ。お相手は、女嫌いで有名な辺境伯。 愛されなくても良いと思っていたのに、マリアは結婚式で初めて会った夫に一目惚れしてしまう。 屈強な見た目で女性に怖がられる辺境伯も、小動物のようなマリアに一目惚れ。 惹かれ合うふたりを引き裂くように、結婚式直後に辺境伯は出陣する事になってしまう。 戻ってきた辺境伯は、上手く妻と距離を縮められない。みかねた使用人達の手配で、ふたりは視察という名のデートに赴く事に。そこで、事件に巻き込まれてしまい…… ※R15は保険です ※別サイトにも掲載しています

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

処理中です...