135 / 154
世間の声
しおりを挟む
「下の女は何をしてもいいって言っていたんでしょう?」
「ええ、信じられないわよ」
「私も直接の周りにはいなかったけど、知り合いの親戚の子が被害に遭って、ずっと入院されていると聞いているわ」
「私も直接はいなかったけど、知り合いの娘さんの友人が自殺未遂をされたって…」
二人はやりきれない気持ちになって、静かになった。
被害者は今でも傷付いている、誰なのか追及することは陛下が禁止にしたため、被害者は明かされることはなく守られているが、知り合いではない場合は、どこかから事実かは分からないが、話が回って行く。
「元夫人のしたことは許せないけど、彼女も被害者だったんでしょう?」
「そうらしいわね」
証言をしたことから、リリーも被害者だと聞いている者も多い。リリーは証言して情状酌量を訴えるのではないかと思われていたが、オーロラの減刑のためだと言い切り、さらなる反感は買うことはなかった。
「それが不運にも、元婚約者夫妻を妬ましく思ったっていうのなら、気持ちだけは分かるわ。気持ちだけだけどね…」
「そうね、彼女たちが死ねば良かったという気持ちもあるけど」
「そう、そんな複雑な気持ちね」
「ええ、これからどうなるのかしらね?」
メリーアンは、二人の過激な言葉に乗り込む勇気はなくなりつつあり、茫然としたまま話を聞いていた。
「ご主人は責任があるけど、息子さんは評判が良いから代替わりされれば、多少良くなるんじゃない?」
「そうね、先程の方は無理でしょうけど」
「ああ…侯爵令嬢という立場だったから良かったけど、これからはね…あの傲慢さは悪い方へ向くでしょうね」
メリーアンはリリーから言われた、傲慢という言葉が思い出されていた。
「元々、どうなのかと思っていたところが、今回のことで浮き彫りになってしまったってことろでしょうね」
「ええ、そういうものだものね。これからも変わらず、傲慢な態度を続けるのなら、眉をひそめられてしまうわよ」
既に入店時にひそめられているのだが、メリーアンは気付いていない。
「前の婚約は、白紙にされて良かったわよね」
「本当に…お似合いだなんて言われていたけど、皆、気を使っていただけよね」
「色味が似ているからだけだったんじゃない?」
「それはあるわね、でもそれで複雑なことになってしまったけど…」
「それも運命だったんじゃない?」
「そうね」
メリーアンはリアンスの婚約も、ダリアとの婚約も似合っていると言われ、お世辞ではないと思っていた。
「手紙が来たという方もいらしたそうだけど」
「会いたくないわよね」
「ええ、関わり合いがあると思われたくないと、断られたそうよ。しかも、これから関わらずに済むことにも、ホッとしたって」
「まあ」
メリーアンは衝撃を受けた。自分は憧れの存在だと自負していた。想い合う相手と結婚して、子どもも生まれて、羨ましいと言われたことは数知れずだった。
だが、厳しい立場とは言え、誰も心配して駆け付けてくれる友人、元クラスメイト、同級生はいなかった。
「いくら上から物を言っていい立場でも、疑問のあった方たちは離れていくわよ」
「ええ、言っていいと、何でも言っていいは違いますものね」
「その通りですわ」
「それに加えて母親と、叔父が罪人ではね…庇えないわよ」
「庇わなくてもいいのではありませんか、家族のことがあって、どのような態度を取るかは人間性のお話でしょう?」
「そうですわね」
それからメリーアンの話には満足したのか、別の話を初めた。
メリーアンは、静かに喫茶店を出た。
侍女たちは話題に上がることにはなるとは思ったが、予想以上の収穫となったのではないかと感じていた。怒鳴り込むようなことがなくて良かったとホッとした。
怒り出しても、相手は名前を出していないと止めようと思っていたが、メリーアンが話し掛けて来るようなことはなく、茫然としている様子だった。
「ええ、信じられないわよ」
「私も直接の周りにはいなかったけど、知り合いの親戚の子が被害に遭って、ずっと入院されていると聞いているわ」
「私も直接はいなかったけど、知り合いの娘さんの友人が自殺未遂をされたって…」
二人はやりきれない気持ちになって、静かになった。
被害者は今でも傷付いている、誰なのか追及することは陛下が禁止にしたため、被害者は明かされることはなく守られているが、知り合いではない場合は、どこかから事実かは分からないが、話が回って行く。
「元夫人のしたことは許せないけど、彼女も被害者だったんでしょう?」
「そうらしいわね」
証言をしたことから、リリーも被害者だと聞いている者も多い。リリーは証言して情状酌量を訴えるのではないかと思われていたが、オーロラの減刑のためだと言い切り、さらなる反感は買うことはなかった。
「それが不運にも、元婚約者夫妻を妬ましく思ったっていうのなら、気持ちだけは分かるわ。気持ちだけだけどね…」
「そうね、彼女たちが死ねば良かったという気持ちもあるけど」
「そう、そんな複雑な気持ちね」
「ええ、これからどうなるのかしらね?」
メリーアンは、二人の過激な言葉に乗り込む勇気はなくなりつつあり、茫然としたまま話を聞いていた。
「ご主人は責任があるけど、息子さんは評判が良いから代替わりされれば、多少良くなるんじゃない?」
「そうね、先程の方は無理でしょうけど」
「ああ…侯爵令嬢という立場だったから良かったけど、これからはね…あの傲慢さは悪い方へ向くでしょうね」
メリーアンはリリーから言われた、傲慢という言葉が思い出されていた。
「元々、どうなのかと思っていたところが、今回のことで浮き彫りになってしまったってことろでしょうね」
「ええ、そういうものだものね。これからも変わらず、傲慢な態度を続けるのなら、眉をひそめられてしまうわよ」
既に入店時にひそめられているのだが、メリーアンは気付いていない。
「前の婚約は、白紙にされて良かったわよね」
「本当に…お似合いだなんて言われていたけど、皆、気を使っていただけよね」
「色味が似ているからだけだったんじゃない?」
「それはあるわね、でもそれで複雑なことになってしまったけど…」
「それも運命だったんじゃない?」
「そうね」
メリーアンはリアンスの婚約も、ダリアとの婚約も似合っていると言われ、お世辞ではないと思っていた。
「手紙が来たという方もいらしたそうだけど」
「会いたくないわよね」
「ええ、関わり合いがあると思われたくないと、断られたそうよ。しかも、これから関わらずに済むことにも、ホッとしたって」
「まあ」
メリーアンは衝撃を受けた。自分は憧れの存在だと自負していた。想い合う相手と結婚して、子どもも生まれて、羨ましいと言われたことは数知れずだった。
だが、厳しい立場とは言え、誰も心配して駆け付けてくれる友人、元クラスメイト、同級生はいなかった。
「いくら上から物を言っていい立場でも、疑問のあった方たちは離れていくわよ」
「ええ、言っていいと、何でも言っていいは違いますものね」
「その通りですわ」
「それに加えて母親と、叔父が罪人ではね…庇えないわよ」
「庇わなくてもいいのではありませんか、家族のことがあって、どのような態度を取るかは人間性のお話でしょう?」
「そうですわね」
それからメリーアンの話には満足したのか、別の話を初めた。
メリーアンは、静かに喫茶店を出た。
侍女たちは話題に上がることにはなるとは思ったが、予想以上の収穫となったのではないかと感じていた。怒鳴り込むようなことがなくて良かったとホッとした。
怒り出しても、相手は名前を出していないと止めようと思っていたが、メリーアンが話し掛けて来るようなことはなく、茫然としている様子だった。
1,633
お気に入りに追加
2,837
あなたにおすすめの小説
【完】隣国に売られるように渡った王女
まるねこ
恋愛
幼いころから王妃の命令で勉強ばかりしていたリヴィア。乳母に支えられながら成長し、ある日、父である国王陛下から呼び出しがあった。
「リヴィア、お前は長年王女として過ごしているが未だ婚約者がいなかったな。良い嫁ぎ先を選んでおいた」と。
リヴィアの不遇はいつまで続くのか。
Copyright©︎2024-まるねこ
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
いくら時が戻っても
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。
庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。
思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは―――
短編予定。
救いなし予定。
ひたすらムカつくかもしれません。
嫌いな方は避けてください。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる