上 下
127 / 154

レピア4

しおりを挟む
「叔父様、わざわざ申し訳ございません」

 スノーはブライアンに駆け寄り、頭を下げた。

「いや、私が来るべきだろうからな。問題ない」

 ブライアンはスノーを見つめ、しっかりと頷いた。二人は兄と妹という関係にはなっているが、さすがに叔父と姪という呼び名のままにしている。

「ありがとうございます」
「ローザ公爵夫人、お騒がせして申し訳ありません」

 ブライアンは、丁寧にヒューナに頭を下げた。ブライアンは後妻の息子になるので、ヒューナよりも六歳年下となる。

「いいえ、さすがにお呼びした方がいいと思いましてね」
「はい、ありがとうございます」

 話している様に、目を吊り上げたのはレピアであった。

「叔父様、私だって姪でしょう!どうして差別するんですか!」
「差別ね…」
「レピア、いい加減にしなさい!ランドマーク侯爵様、申し訳ございません」

 レリリス伯爵はランドマーク侯爵に、ペコペコと頭を下げている。

「ええ、一体どんな教育をしたら、こうなるのですか…」
「申し訳ございません」
「ちょっと!」

 父親がこれだけ謝っているのに、全く折れないレピアにスノーは驚いていた。

 様子がおかしいとは思っていたが、いつの間にこんな妹になっていたのだろうか。いや、子どもの頃から成長していない上に、図々しさが酷くなっている。

「私もランドマーク侯爵家の養子にしてください!」
「先ほど、言ったことも覚えていないのか?」
「どうして!お姉様は良くて、私は駄目な理由なんてないでしょう!むしろ、私だけをするべきだわ!私の方が若くて、可愛いのだから、私を養子にした方がいいでしょう?どうして、分からないのですか」
「駄目な理由があるだろう?」
「ないわよ!」

 スノーが見る限り、知る限り、褒められるところすらないと思うが、どうしてそこま自信があるのか分からなかった。

「卒業が出来ないかもしれないこと、礼儀がなっていないこと、親の言うことすら聞かないこと…すべて相応しくないと思うが?」
「卒業は出来るし、礼儀もちゃんとしているわ!親の言うことは、お父様が理不尽だからよ!私のせいじゃないわ」
「私は侯爵だぞ?」
「だから私が養子になるって言っているの!」

 伯爵令嬢が侯爵家の当主に対しての、口の利き方ではないと言っているのだが、それすらレピアには伝わらない。

「ランドマーク侯爵様、もうレピアと話してやらなくて結構です」
「っな!お父様、何を言っているの!」

 レピアは立ち上がって、足を踏み鳴らしながら喚いている。

「そうだな、これでは修道院もどこかに嫁がせても、迷惑を掛けるだろうな」
「私は修道院なんて行かないと言っているでしょう!」
「お前に決定権はない」
「っな!私の人生なのよ、私に決定権があるに決まっているじゃない!何言っているの?おかしいんじゃないの?もうボケてるの?」

 レピアはオールに向かって、ふんと言わんばかりの態度を取った。

「教会に行かせるか、それによって今後を決めよう」
「承知しました」

 ブライアンが言う教会はオッフェンベル教会で、教会の中に人格矯正を行う機関を担っている部門がある。誰でも入れるわけではないが、余程の子どもが入れられる。

 レリリス伯爵は確証はないが、おそらくオッフェンベル教会だろうと察している。

「勝手に決めないでよ!」
「卒業後が出来ても、出来なくても、その後でいい」
「承知しました」
「ちょっと待ってって言っているの!」

 レピアはまた唾を飛ばしながら、大声で叫んでいる。

「ならば、明日から平民になるか?無一文で追い出されたいか?」
「お父様はそんなことしないわ」
「お前はローザ公爵家、ランドマーク侯爵家を敵に回した…助けてくれる者がいるといいな」
「っな!沢山いるわ」
「じゃあ、その者たちに助けてもらうといい」

 頭に血の上っているレピアはまた、リアンスと結婚すると言い出そうとしたが、オールが前に出て、深く頭を下げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

【完結】たとえあなたに選ばれなくても

神宮寺 あおい@受賞&書籍化
恋愛
人を踏みつけた者には相応の報いを。 伯爵令嬢のアリシアは半年後に結婚する予定だった。 公爵家次男の婚約者、ルーカスと両思いで一緒になれるのを楽しみにしていたのに。 ルーカスにとって腹違いの兄、ニコラオスの突然の死が全てを狂わせていく。 義母の願う血筋の継承。 ニコラオスの婚約者、フォティアからの横槍。 公爵家を継ぐ義務に縛られるルーカス。 フォティアのお腹にはニコラオスの子供が宿っており、正統なる後継者を望む義母はルーカスとアリシアの婚約を破棄させ、フォティアと婚約させようとする。 そんな中アリシアのお腹にもまた小さな命が。 アリシアとルーカスの思いとは裏腹に2人は周りの思惑に振り回されていく。 何があってもこの子を守らなければ。 大切なあなたとの未来を夢見たいのに許されない。 ならば私は去りましょう。 たとえあなたに選ばれなくても。 私は私の人生を歩んでいく。 これは普通の伯爵令嬢と訳あり公爵令息の、想いが報われるまでの物語。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 読む前にご確認いただけると助かります。 1)西洋の貴族社会をベースにした世界観ではあるものの、あくまでファンタジーです 2)作中では第一王位継承者のみ『皇太子』とし、それ以外は『王子』『王女』としています よろしくお願いいたします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 誤字を教えてくださる方、ありがとうございます。 読み返してから投稿しているのですが、見落としていることがあるのでとても助かります。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

婚約破棄されても賞金稼ぎなので大丈夫ですわ!

豆狸
恋愛
お母様が亡くなって父が愛人親娘を伯爵邸に連れ込んでから、私はこの賞金稼ぎの仕事をするようになりました。 まずはお金がないとなにも出来ないのですもの。 実は予感がするのです。いつかあの三人──今はイリスィオ様も含めた四人が私に牙を剥くと。

処理中です...