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責任2
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『ちゃんと裁かれるわ、あなたのお父様が許さないわ』
オリラはメリラが父に対して、そのような言い方をするところを初めて聞き、目を見開いて母を見た。
『そして、馬を暴れさせた薬を用意したのが、リリー・ユーフレットだったそうよ』
その言葉を聞いて、オリラは目を吊り上がらせた。
『…絶対、あの女が殺したと思っていたのに…』
予想通りに関わってはいたが、手を下していたわけではないことに、オリラはどこか複雑な思いを抱いていた。
『あの女は、葬儀で微笑んでいたの』
『っな、なんてこと…』
オリラはマリエルの葬儀で、片隅にいるリリーを見掛けていた。そして、それはマリエルに向かってだったのか、トイズに向かってだったのかは分からないが、誰も側にいないのをいいことに、微笑んでいたのだ。
『でも、そんなの証拠になんてならないもの!重い罪にはならないってことなの?』
『そんなことはないわ、殺人教唆には当たるし、本人も認めているから、ちゃんと罪になるはずよ』
ある意味、守るものも、欲しいものもなく、リリーは開き直っている。当事者は不愉快かもしれないが、事件はちゃんと裁かれる。
『罪にならないとマリーに申し訳が立たない…私と関わったせいで…』
『リリー・ユーフレットにとって、リサナは都合のいい存在だった。勉強が出来ないなんて言われていたけど、そういった知恵は持っていたのでしょうね』
『私が…私だったら…』
リリーにとって消えて欲しいのはマリーだったのだろうが、マリーもそんなことを言ったら、怒るだろうけど、リサナの標的が夫も子どももいない私だったら良かったのに…そう思ってしまった。
『相談して欲しかったわ』
『お母様は、いつもランドマーク侯爵家に関わるなって言っていたじゃない』
『ええ、そうなの、私のせいなのよ。だから、責任は私にあるの』
『…な、なんで…』
まさかそんな風に返されるとは思わず、オリラは驚いた。
『私の夫ではないけど、あなたの父親だったのに。お父様も後悔していたわ。あなたの離縁の怒りがコンドル侯爵家へと向かって、繋がっているのならば、自分にも責任があるとも言っていたわ』
『会ったの?』
『ええ、説明に来てくれたわ』
オブレオはメリラに、マリエルの事件の話をわざわざ伝えに来てくれた。
スノーが伝えても良かったが、スノーには話していないこともあったこと、そして娘であるオリラのことを話して置きたかった。
元夫婦はもう他人と変わらない存在になっており、ただ娘たちのことだけは、変わらずにあるべきだったことを後悔した。
『あなたの預かった手紙の差出人も分かって来ているようよ』
『そう…』
『あなたには落ち着いてから、会って貰えるなら会って貰いたいと言っていたわ。会うか会わないかはあなたが決めたらいい』
『…うん』
オリラはオブレオに全く会っていなかったわけではない、子どもの頃は姉と一緒に会っていた。だがメリラに会うのは自由だが、ランドマーク侯爵家とは関わりはないと何度も言われて、成長するに連れて疎遠になっていった。
侯爵家に嫁いで、同じ立場になればと思ったが、そんな余裕はなかった。
『スノーに気付かされたの』
『スノーに?』
『あなたには話していなかったけど、スノーはローザ公爵家の嫡男と婚約したの』
不安定なオリラには敢えて話していなかったが、もう大丈夫だろうとメリラは話すことにした。
『公爵家?大丈夫なの…?』
『私も同じことを言ったわ。でも、スノーも同じように思ったそうよ。覚悟は決めたけど、駄目なら恥もプライドも捨てて、逃げ出しますって』
『ふふっ、スノーらしいわね、私も、私も、そうすれば良かった…』
そう言いながら、オリラの目には涙が溜まっていた。
オリラはメリラが父に対して、そのような言い方をするところを初めて聞き、目を見開いて母を見た。
『そして、馬を暴れさせた薬を用意したのが、リリー・ユーフレットだったそうよ』
その言葉を聞いて、オリラは目を吊り上がらせた。
『…絶対、あの女が殺したと思っていたのに…』
予想通りに関わってはいたが、手を下していたわけではないことに、オリラはどこか複雑な思いを抱いていた。
『あの女は、葬儀で微笑んでいたの』
『っな、なんてこと…』
オリラはマリエルの葬儀で、片隅にいるリリーを見掛けていた。そして、それはマリエルに向かってだったのか、トイズに向かってだったのかは分からないが、誰も側にいないのをいいことに、微笑んでいたのだ。
『でも、そんなの証拠になんてならないもの!重い罪にはならないってことなの?』
『そんなことはないわ、殺人教唆には当たるし、本人も認めているから、ちゃんと罪になるはずよ』
ある意味、守るものも、欲しいものもなく、リリーは開き直っている。当事者は不愉快かもしれないが、事件はちゃんと裁かれる。
『罪にならないとマリーに申し訳が立たない…私と関わったせいで…』
『リリー・ユーフレットにとって、リサナは都合のいい存在だった。勉強が出来ないなんて言われていたけど、そういった知恵は持っていたのでしょうね』
『私が…私だったら…』
リリーにとって消えて欲しいのはマリーだったのだろうが、マリーもそんなことを言ったら、怒るだろうけど、リサナの標的が夫も子どももいない私だったら良かったのに…そう思ってしまった。
『相談して欲しかったわ』
『お母様は、いつもランドマーク侯爵家に関わるなって言っていたじゃない』
『ええ、そうなの、私のせいなのよ。だから、責任は私にあるの』
『…な、なんで…』
まさかそんな風に返されるとは思わず、オリラは驚いた。
『私の夫ではないけど、あなたの父親だったのに。お父様も後悔していたわ。あなたの離縁の怒りがコンドル侯爵家へと向かって、繋がっているのならば、自分にも責任があるとも言っていたわ』
『会ったの?』
『ええ、説明に来てくれたわ』
オブレオはメリラに、マリエルの事件の話をわざわざ伝えに来てくれた。
スノーが伝えても良かったが、スノーには話していないこともあったこと、そして娘であるオリラのことを話して置きたかった。
元夫婦はもう他人と変わらない存在になっており、ただ娘たちのことだけは、変わらずにあるべきだったことを後悔した。
『あなたの預かった手紙の差出人も分かって来ているようよ』
『そう…』
『あなたには落ち着いてから、会って貰えるなら会って貰いたいと言っていたわ。会うか会わないかはあなたが決めたらいい』
『…うん』
オリラはオブレオに全く会っていなかったわけではない、子どもの頃は姉と一緒に会っていた。だがメリラに会うのは自由だが、ランドマーク侯爵家とは関わりはないと何度も言われて、成長するに連れて疎遠になっていった。
侯爵家に嫁いで、同じ立場になればと思ったが、そんな余裕はなかった。
『スノーに気付かされたの』
『スノーに?』
『あなたには話していなかったけど、スノーはローザ公爵家の嫡男と婚約したの』
不安定なオリラには敢えて話していなかったが、もう大丈夫だろうとメリラは話すことにした。
『公爵家?大丈夫なの…?』
『私も同じことを言ったわ。でも、スノーも同じように思ったそうよ。覚悟は決めたけど、駄目なら恥もプライドも捨てて、逃げ出しますって』
『ふふっ、スノーらしいわね、私も、私も、そうすれば良かった…』
そう言いながら、オリラの目には涙が溜まっていた。
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