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離縁2
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「どうかしら?やっぱり私がいる方が、マーガレットも嬉しそうだし。母親なんだから、当たり前なんだけど。ダリアもその方がいいでしょう?」
「…」
「ねえ、そうしましょう?絶対にその方がいいわ、ダリアも分かるでしょう?」
「君はマーガレットに会いに来たんだろう」
ダリアはメリーアンの自信のあるところが好ましいと思っていたが、今では得体のしれない人間のように感じて、思ったより低い声が出た。
「そうだけど、勿論、ダリアにも会いたかったわ!そんなことは口にしなくても、夫婦なんだから言わなくても分かるでしょう?」
まるでダリアではなく、マーガレットに会いに来たと言ったことに、ダリアが拗ねているような口振りであった。
「マーガレットは見ない間に大きくなったわね、私もこの目で見たかったわ。ねえ、マーガレット?」
マーガレットは、変わらずメリーアンに反応する様子はない。
「やっぱり耳が聞こえにくいのかしら?可哀想に…」
実はメリーアンの片耳は、聞こえにくいだけで、聞こえていないわけではないことが分かっていたが、メリーアンには伝える気持ちが持てなかった。
「ねえ、やっぱりマーガレットにも、オスレ伯爵家にも私が必要でしょう?」
「冗談はいいから、もう帰ってくれ」
「え?どうしてよ…ちゃんと私を見て頂戴、必要に決まっているわ」
メリーアンはもう一度話せば、オスレ伯爵家にいる私を見れば、マーガレットを愛する私を見れば、ダリアはやっぱり君が必要だと言ってくれると思っていた。
メリーアンは結局、私、私、私と、自分のことばかりで、結果的に思い通りにならないことがなかった人生であり、今回も何とかなると思っていた。
「その話はもう終わっただろう?何度もする気はない」
「っな!ダリアは考え過ぎるんだから、気持ちで動かなくちゃ駄目だって、言っていたでしょう?んもう」
メリーアンがダリアによく言っていたことであった、だがもう素直に受け取ることは出来なくなったダリアには何も響くことはなかったが、確かに沢山考えたが、事実から導き出した答えであった。
「自分の気持ちで動いた結果だよ」
「え?」
「母親を殺されたんだ、気持ちで動くのは当然だろう?」
「そ、それはそうだけど」
まさにメリーアンの言い続けていたことであるために、反論する言葉は見付からなかった。
「でも、私だって、叔父様の子だって言われて、混乱しているの!支えて欲しいと思っても当然じゃない!」
ジーリスのことは知らない使用人もいる場であったのだが、メリーアンはお構いなしで、話し始めており、使用人たちは顔を見合わせていた。
だが、当の本人が話し出したので、ダリアも止めることはしなかった。
「私ではない方に支えて貰うといい」
「…本気で言っているの?」
まさかそんな言葉を、愛し合っていたはずのダリアから聞くとは思っていなかった、メリーアンは衝撃を受けた。
「ああ、私たちは相反するものだと言っただろう?支えることは出来ない」
「じゃあ!私が再婚してもいいと言うのね!」
「ああ、そうするといい。私たちは離縁するのだから、気にせず再婚したらいい」
「分かったわ!マーガレットは、絶対に引き取るんだから!ダリアは後悔すればいいわ!絶対に後悔するんだから!」
捨て台詞を吐いて、メリーアンは帰って行った。
ダリアはその日に、ユーフレット侯爵に連絡をして、今日の経緯を話した。
「申し訳ありませんでした」
勝手に出掛けていたことすら聞いておらず、しかも行ってはいけないと言ってあった、オスレ伯爵家に行っているとは思わなかった。
「マーガレットのことは話し合いの場を設けますから、離縁を先にして貰えますか」
「そうですね、そうしましょう」
そうして、ダリアとメリーアンの離縁は成立した。
「…」
「ねえ、そうしましょう?絶対にその方がいいわ、ダリアも分かるでしょう?」
「君はマーガレットに会いに来たんだろう」
ダリアはメリーアンの自信のあるところが好ましいと思っていたが、今では得体のしれない人間のように感じて、思ったより低い声が出た。
「そうだけど、勿論、ダリアにも会いたかったわ!そんなことは口にしなくても、夫婦なんだから言わなくても分かるでしょう?」
まるでダリアではなく、マーガレットに会いに来たと言ったことに、ダリアが拗ねているような口振りであった。
「マーガレットは見ない間に大きくなったわね、私もこの目で見たかったわ。ねえ、マーガレット?」
マーガレットは、変わらずメリーアンに反応する様子はない。
「やっぱり耳が聞こえにくいのかしら?可哀想に…」
実はメリーアンの片耳は、聞こえにくいだけで、聞こえていないわけではないことが分かっていたが、メリーアンには伝える気持ちが持てなかった。
「ねえ、やっぱりマーガレットにも、オスレ伯爵家にも私が必要でしょう?」
「冗談はいいから、もう帰ってくれ」
「え?どうしてよ…ちゃんと私を見て頂戴、必要に決まっているわ」
メリーアンはもう一度話せば、オスレ伯爵家にいる私を見れば、マーガレットを愛する私を見れば、ダリアはやっぱり君が必要だと言ってくれると思っていた。
メリーアンは結局、私、私、私と、自分のことばかりで、結果的に思い通りにならないことがなかった人生であり、今回も何とかなると思っていた。
「その話はもう終わっただろう?何度もする気はない」
「っな!ダリアは考え過ぎるんだから、気持ちで動かなくちゃ駄目だって、言っていたでしょう?んもう」
メリーアンがダリアによく言っていたことであった、だがもう素直に受け取ることは出来なくなったダリアには何も響くことはなかったが、確かに沢山考えたが、事実から導き出した答えであった。
「自分の気持ちで動いた結果だよ」
「え?」
「母親を殺されたんだ、気持ちで動くのは当然だろう?」
「そ、それはそうだけど」
まさにメリーアンの言い続けていたことであるために、反論する言葉は見付からなかった。
「でも、私だって、叔父様の子だって言われて、混乱しているの!支えて欲しいと思っても当然じゃない!」
ジーリスのことは知らない使用人もいる場であったのだが、メリーアンはお構いなしで、話し始めており、使用人たちは顔を見合わせていた。
だが、当の本人が話し出したので、ダリアも止めることはしなかった。
「私ではない方に支えて貰うといい」
「…本気で言っているの?」
まさかそんな言葉を、愛し合っていたはずのダリアから聞くとは思っていなかった、メリーアンは衝撃を受けた。
「ああ、私たちは相反するものだと言っただろう?支えることは出来ない」
「じゃあ!私が再婚してもいいと言うのね!」
「ああ、そうするといい。私たちは離縁するのだから、気にせず再婚したらいい」
「分かったわ!マーガレットは、絶対に引き取るんだから!ダリアは後悔すればいいわ!絶対に後悔するんだから!」
捨て台詞を吐いて、メリーアンは帰って行った。
ダリアはその日に、ユーフレット侯爵に連絡をして、今日の経緯を話した。
「申し訳ありませんでした」
勝手に出掛けていたことすら聞いておらず、しかも行ってはいけないと言ってあった、オスレ伯爵家に行っているとは思わなかった。
「マーガレットのことは話し合いの場を設けますから、離縁を先にして貰えますか」
「そうですね、そうしましょう」
そうして、ダリアとメリーアンの離縁は成立した。
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