上 下
103 / 154

話し合い3

しおりを挟む
「私はそうは思わない、もう止めよう。私の気持ちは動くことはない」

 もう何度も言っているのに、メリーアンは再びショックを受けた。

「私たちは夫婦なのに、どうしてよ…一生、一緒にいくはずだったでしょう?」
「そうは出来ない事実が分かったんだ」
「結婚しなければよかったと思っているの?」
「ああ、そうだな…その方がよかったのだろうな」
「そんな…酷いわ、どうしてそんなことが言えるのよ…」

 カーサスとトーラスは、無理もないと思っていたが、メリーアンはまだ納得が出来なかった。

「私がお母様の子どもでなかったら、こんなことにはならなかったのよね」
「私の理由はそうだが、これからどうなっていたかは分からないだろう?」
「え…私たちはどちらにしろ上手くいかなかったって言うの?」
「そうかもしれない」

 リアンスと婚約をしてまで、二人は結婚を望んだというのに、ダリアの口からそんな言葉を聞くなんて思ってもいなかった。

 ここ1ヶ月くらいで、こんなにも状況が変わるなんて、ダリアの気持ちまで既に遠く離れて行ってしまうなんて、想像したこともなかった。

 私たちはお互いに強く結ばれて、何があっても一緒にいると思っていた。

 確かに事件のことは両親を求めていたダリアには大きなことだっただろう、でもそれよりも勝る愛があったと思っていた。

「私のことはもう愛していないのね…」
「ああ、そういうことになる」
「だったら、マーガレットのことは私が、私が育てるわ!伯爵家より、侯爵家の方がいいでしょう!」
「それはまた改めて話そう。そちらもまだ大変でしょうから。ユーフレット侯爵、そうですよね?」
「ええ、その方がいいでしょう」

 リリーのこともあるが、ジーリスのことでユーフレット侯爵家は加害者として、なかなか落ち着くことはないだろうということを、カーサスは察した。

「今、決めればいいじゃない!お父様は、お母様と離縁するのでしょう?そうすれば、関わりがなくなるわ。マーガレットは正当なユーフレット侯爵の令嬢になれるわ、お父様もそう思うでしょう?」
「それは落ち着いてからにしよう、まだ色々と対応をしなければならないんだ」
「色々言われるだろうけど、離縁したらお父様は関係ないでしょう?」

 カーサスはリリーのことだけでも、簡単なこととはいかないとは思っていたが、リリーの評判は悪いために同情的だろうと想定していたのだが、ジーリスのことでそうはいかなくなった。

 しかも、メリーアンはその娘ということになる。

 リリーが裁判になれば、被害者が訴え出れば、ジーリスのことが公になる。メリーアンが娘であることは事件には関係ないために、リリーが言わない限りは公にはならないかもしれないが、どうなるか分からない。

「そう簡単な話ではない」
「どうしてよ!母親がいて、侯爵家の方が良いとしないと、引き取れないかもしれないじゃない」
「だから、それは落ち着いてからの方が、マーガレットにもいいだろう。ユーフレット侯爵家は、当面慌ただしく、落ち着かないだろう…」

 今のユーフレット侯爵家に、マーガレットを育てられる環境は整えられない。

「そんなことないわ、母親が側にいない方が悲しいに決まっているわ」
「離縁したとしても、被害者はそっとして置くという風潮だが、加害者家族には厳しい。まだ調査なども行われることもあるだろうから、子どもを育てられる良い環境とは言えないだろう」

 事件となってしまえば、離縁したとしても、爵位なんて関係ない、侯爵家を守ってくれるものではない。しかも、ジーリスのことで、恨まれる可能性、いや既に恨まれている可能性が高い。

 そうなった時、マーガレットに危険だってあるかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

処理中です...