【完結】試される愛の果て

男の正体３

「直接、殺したわけではない」
「でも、ジーリスが怪我をしたのは、オーロラのせいなんでしょう？その怪我であの子は、亡くなったのよ！」

　化け物のような弟と分かっても庇おうとする姿に、信じられない気持ちであった。

「同じじゃないか？」
「何がよ！」
「ジーリスもロビンの恋人を殺したわけではない、ロビンのことも殺してはいない。でも二人は自死を選んで、亡くなっている」
「…っあ」
「その通りだな」

　話をしながらユーフレット侯爵は、オーロラのしたことはまるでジーリスと同じだと思った。いや、むしろジーリスの方が、心を殺したとは言えるだろう。

「他にも強姦の被害者は多くいるそうだ。心を壊した者も自殺した者もいると…賠償も必要となるかもしれない」
「…分かった」

　シシラは泣き崩れていたが、そのまま自室に戻った。

　メリーアンに話をしなければならないが、話したらどうなるのだろうか。メリーアンは私の子どもだと今でも信じている。

　トイズ・オスレの子であったら、自分の子どもではないと、どこかで思っていたかもしれない。だが、この度は血筋上は姪となる。だからだろうか、メリーアンが自身の子どもという気持ちに大きな変化はない。

　ただ複雑だということは、代わりない。

　メリーアンにとってはもっと複雑な気持になるだろう。どちらにしろ言って終わりではないことから、今日はもう話せるような精神状態ではなかった。

　リリーのことに加えて、ジーリスのことも対応しなければならなくなるだろう。

　トーラスとメリーアンは支えようと思っていたが、どこかでリリーとは離縁すれば、関係ないと思っていたが、被害者面はもう出来ない。

　ジーリスに関しては、リリーは被害者になる。

　明日にはトーラスも一緒に話をしようと思っていたが、ダリアからようやく連絡があり、今後について話をしようということであった。

　都合のいい日にそちらに向かうということだったが、メリーアンは早く話がしたいと、興奮している状態であった。

「今日でもいいわよね？どちらにしても戻ることになるのだから、こちらから向かおうかしら？ようやくマーガレットに会えるわ」
「落ち着きなさい」
「落ち着いていられないわ」

　ユーフレット侯爵はダリアもおそらくメリーアンの父親のことを、聞いているのではないかと思っていた。メリーアンはこれからもマーガレットのためにも、支え合っていこうと思っているようだが、おそらくはそうはならないだろう。

　トーラスも感じていて、メリーアンの興奮を抑えようとしているが、あまり効果がないようである。

「落ち着いて話せないなら、話し合いは上手くいかない」
「ダリアは分かってくれるわ、お母様のことは…どうにもならないけど、私はお父様の子だったのだから、結婚したことは間違っていなかったの！」

　メリーアンは絶望から違ったことで、とてもポジティブに考えるようになってしまっていた。

「母親を殺されているのだぞ…」
「でも、誘導しただけでしょう？刺殺したわけではないのだから…」
「それは関係ない、命を奪われたことは事実なんだから」

　メリーアンがクリアしたのは、きょうだいではないというところだけで、他は何も変わっていない状態であることを分かっていないと感じていた。

「それはそうだけど…」
「ダリアはきっと酷く傷付いている状態なんだ」
「だから、私が支えていくって言っているじゃない」

　前にも加害者の娘が支えられるのかと言ったはずだが、メリーアンには届いていないようである。

「自分の母親が、母親を殺したのにか？」
「だからそれは、ずっと支えになって来た私なら違うわ！ダリアと私の結びつきを甘く見ないで欲しいわ」

　メリーアンが急かすために、午後からダリアがやって来ることになった。ユーフレット侯爵は話が出来ないまま、話し合いをすることになった。