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男の正体2
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「殺したとは言えないかもしれないが、裁かれることにはなるだろう」
オーロラはジーリスが怪我した場所には居らず、オーロラ本人も隠れるには最適な場所だと、言葉で誘導しただけだと自白している。
だが、死ねばいいとずっと思っていた。いずれ殺していたとも話したが、殺人罪ではなく、傷害罪となる可能性が高い。
「復讐されたということ、ですか」
「その通りだ」
「弟は被害者ということですか」
「そうだな、だが加害者でもある、強姦した女性の写真を撮って、脅していたそうだ。極めて悪質だと言える」
「っ」
そんなことまでしていたのか…急に弟が恐ろしい化け物に思えて来た。
「何てことを……申し訳ないことを」
「こんなことを言ってはあれだが、亡くなって皆が安堵したそうだ」
「っっっ」
弟がそんな存在になっていたとは…もはや、知らないでは済まされないだろう。
「皆、ジーリスには妻子を近づけないことが、高位貴族では暗黙の了解だったそうだ。だが、下位貴族や平民ではそうはいかない。亡くなっても、被害者の心が癒えるわけではない。心を壊した者や、ロビン殿の恋人のように自殺した者もいる」
「…」
ユーフレット侯爵は衝撃で、声にはもうならなかった。
「被害者の気持ちを優先するつもりだが、賠償請求も覚悟して置いてくれ」
写真から被害に遭った者は分かっている。男性に見られるのは嫌だろうと、女性たちに担当させたが、皆、苦しい顔や泣き出すほどであった。
同じ女性として許せない。オーロラが誘導しなくても、誰かに殺されていたのではないかと、裁かれないなら、死ぬべき存在だとまで言い切った。
その中には、リリーの写真もあった。
「…はい、承知しました」
ユーフレット侯爵は、一気に老け込んだ様子で帰って行くことになった。
まずは両親にはその足で、メリーアンはジーリスの子どもであったこと、強姦の証言も証拠もあることを告げた。
そして、ジーリスの怪我はメイドのオーロラに、誘導されたものであったことを話すと、母は何ですってと声を上げた。
ロビンがいる頃、オーロラはいなかったのだが、疲れており、説明するのが面倒であるため、事実だけを話そうと思ったが、無理な様子であった。
「殺人罪は難しいだろうが、裁かれることになるだろうということです」
「ジーリスは殺されたっていうの!」
「誘導されて、怪我をしたというところだろうな…」
「だったら、あの子は被害者じゃない!あの子は…あの子は…」
ユーフレット侯爵は、母・シシラを見ながら、そういえば子どもの頃、ジーリスを大人しい子だからと、庇っていたことを思い出していた。
「ジーリスは、オーロラに復讐されたそうだ」
「復讐?」
父・ツートは黙って聞いていたが、怪訝な声を上げた。
「オーロラはジーリスの従者だったロビンの姉であることは知っていますか?」
「ああ、知っている」
「二人はよく似ていたましたか?」
「ああ、似てはいるかな?だが、男と女だと印象が違うからな」
ツートはロビンのことは覚えており、オーロラのことも姉だと把握していたが、姉かと言われたら納得ではあったが、化粧もしていることから明らかに印象は違った。
「途中からロビンに、オーロラが成り代わっていたそうです」
「何?どういう意味だ?ロビンではなかったというのか?」
「はい、口にしたくもありませんが、ジーリスが、ロビンの恋人を強姦したそうです…それで彼女は自殺したそうです」
「何てことを…」
まさか従者の恋人にまで手を出していたとは、そのような状態でロビンは働いていたのか?いや、オーロラだったのか?
「そして、ロビンも彼女のことを苦にして、自殺していたそうです」
「自殺した…?ああ、だから、復讐か」
「はい」
「でもっ!殺すなんて!」
再びジーリスを庇おうとするのは、シシラだった。
オーロラはジーリスが怪我した場所には居らず、オーロラ本人も隠れるには最適な場所だと、言葉で誘導しただけだと自白している。
だが、死ねばいいとずっと思っていた。いずれ殺していたとも話したが、殺人罪ではなく、傷害罪となる可能性が高い。
「復讐されたということ、ですか」
「その通りだ」
「弟は被害者ということですか」
「そうだな、だが加害者でもある、強姦した女性の写真を撮って、脅していたそうだ。極めて悪質だと言える」
「っ」
そんなことまでしていたのか…急に弟が恐ろしい化け物に思えて来た。
「何てことを……申し訳ないことを」
「こんなことを言ってはあれだが、亡くなって皆が安堵したそうだ」
「っっっ」
弟がそんな存在になっていたとは…もはや、知らないでは済まされないだろう。
「皆、ジーリスには妻子を近づけないことが、高位貴族では暗黙の了解だったそうだ。だが、下位貴族や平民ではそうはいかない。亡くなっても、被害者の心が癒えるわけではない。心を壊した者や、ロビン殿の恋人のように自殺した者もいる」
「…」
ユーフレット侯爵は衝撃で、声にはもうならなかった。
「被害者の気持ちを優先するつもりだが、賠償請求も覚悟して置いてくれ」
写真から被害に遭った者は分かっている。男性に見られるのは嫌だろうと、女性たちに担当させたが、皆、苦しい顔や泣き出すほどであった。
同じ女性として許せない。オーロラが誘導しなくても、誰かに殺されていたのではないかと、裁かれないなら、死ぬべき存在だとまで言い切った。
その中には、リリーの写真もあった。
「…はい、承知しました」
ユーフレット侯爵は、一気に老け込んだ様子で帰って行くことになった。
まずは両親にはその足で、メリーアンはジーリスの子どもであったこと、強姦の証言も証拠もあることを告げた。
そして、ジーリスの怪我はメイドのオーロラに、誘導されたものであったことを話すと、母は何ですってと声を上げた。
ロビンがいる頃、オーロラはいなかったのだが、疲れており、説明するのが面倒であるため、事実だけを話そうと思ったが、無理な様子であった。
「殺人罪は難しいだろうが、裁かれることになるだろうということです」
「ジーリスは殺されたっていうの!」
「誘導されて、怪我をしたというところだろうな…」
「だったら、あの子は被害者じゃない!あの子は…あの子は…」
ユーフレット侯爵は、母・シシラを見ながら、そういえば子どもの頃、ジーリスを大人しい子だからと、庇っていたことを思い出していた。
「ジーリスは、オーロラに復讐されたそうだ」
「復讐?」
父・ツートは黙って聞いていたが、怪訝な声を上げた。
「オーロラはジーリスの従者だったロビンの姉であることは知っていますか?」
「ああ、知っている」
「二人はよく似ていたましたか?」
「ああ、似てはいるかな?だが、男と女だと印象が違うからな」
ツートはロビンのことは覚えており、オーロラのことも姉だと把握していたが、姉かと言われたら納得ではあったが、化粧もしていることから明らかに印象は違った。
「途中からロビンに、オーロラが成り代わっていたそうです」
「何?どういう意味だ?ロビンではなかったというのか?」
「はい、口にしたくもありませんが、ジーリスが、ロビンの恋人を強姦したそうです…それで彼女は自殺したそうです」
「何てことを…」
まさか従者の恋人にまで手を出していたとは、そのような状態でロビンは働いていたのか?いや、オーロラだったのか?
「そして、ロビンも彼女のことを苦にして、自殺していたそうです」
「自殺した…?ああ、だから、復讐か」
「はい」
「でもっ!殺すなんて!」
再びジーリスを庇おうとするのは、シシラだった。
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