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漂着4
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「何者かは知っているようだな」
「リリー様の…愛する方ですよね?リリー様のお心を守るために必要だったのです」
「妻を殺そうとしてもか?」
「っっっ!リリー様がオスレ様の奥様を?」
「ああ、君と同じだろうな、殺せてしまったというところだろうか」
オーロラはリリーが拘束されて、本当に迷惑、何てことをしてくれたのかと責める中、心配した唯一の使用人だった。
殺人罪ではないことから、自ら殺めたわけではないと、きっと何か理由があったのだと考えていた。
「リリー様は、本当に辛い目に遭っていたんです!」
「そうだとしても、許されることではない!リリーは結局、ジーリスと同じことをしたんだぞ?」
「っ!ですが、あんな男に犯されて、まともな判断が出来るはずがないではありませんか!あの男をオスレ様だと、愛する人だと思おうとしたんです」
確かにリリーが辛い目に遭っていたことは事実だろう。だが、関係のないトイズとマリエルを巻き込んでいい理由にはならない。
「きっと、奥様が羨ましかった…妬ましかったのです」
「リリーが出掛けるのに、付き添わなかったのか?」
「馬車の手配などはしていましたが、一緒に出掛けることはありませんでした。リリー様が私と一緒にいても、得がないからとおっしゃって」
手助けはしていたが、べったり一緒にいたわけではなかったのか。使用人からもオーロラが親しいという話も出ていないということだった。
「メリーアンが、ジーリスの子だとは思わなかったのか?」
「…思わないように、封じ、消しました」
「リリーはトイズの子だとトイズを脅していたのだぞ?」
「本当に愛してらしたんです。だから、悪い形でも関わりたかったのだと思います。自分のことを忘れて欲しくなかったのです」
ローザ公爵はそれが本質なのだと思った。リリーはトイズに忘れて欲しくなかった。ある意味、最期までとは言えないかもしれないが、成功したのかもしれない。
「リリー様はオスレ様が亡くなったと聞いた日、命を絶とうとしています。オスレ様と同じ日に死にたいと…」
ローザ公爵は、想定出来ることでありながらも、驚いた。
「私が止めたんです」
「どうして誰かに助けを求めなかった?」
「あの邸の人間は、あの男を野放しにしたのですから、信用は出来ません。リリー様を見下して、聞く耳を持つとは思えません。リリー様もあの男のことは誰にも言わないで欲しいと、それでもこのままではと思い、ご実家はどうかと聞きましたが、静かに首を振られました…」
ロス伯爵もリリーにとっては、寄り添ってくれる家族ではなかった。
「脅されていたのか?」
「リリー様に誘われたと話すと言われてはいましたが、リリー様は知られたくなかっただけです。そう考える女性もいるのです」
確かに公にしたい女性など、なかなかいないだろう。
「ジーリスが脅しに使っていた写真は知っているか?」
「はい…」
「まさか、君が持っているのか?」
「はい…家族に隠蔽されたらと思って、隠してあります。誰か被害者が声を上げたら、提出しようと思っていました」
「どこにあるか教えて貰えるか?訴えるかどうかは、加害者に任せる」
「はい」
オーロラは目を瞑って、大きく息を吐いた。
「誰か弟と私に、気付いたということですよね?」
「ああ、誰かは控えるが、ある方が途中から呼び名は同じなのに、あなたになったと証言しています」
「上手く似せられていると思う一方で、誰も区別もつかない、そんな存在だったのかとすら思っていました。そうですか、気付いた人がいたのですね…」
そして、オーロラも拘束されることになった。取り乱すこともなく、オーロラは素直に従い、覚悟をずっとしていたのだろう。
「リリー様の…愛する方ですよね?リリー様のお心を守るために必要だったのです」
「妻を殺そうとしてもか?」
「っっっ!リリー様がオスレ様の奥様を?」
「ああ、君と同じだろうな、殺せてしまったというところだろうか」
オーロラはリリーが拘束されて、本当に迷惑、何てことをしてくれたのかと責める中、心配した唯一の使用人だった。
殺人罪ではないことから、自ら殺めたわけではないと、きっと何か理由があったのだと考えていた。
「リリー様は、本当に辛い目に遭っていたんです!」
「そうだとしても、許されることではない!リリーは結局、ジーリスと同じことをしたんだぞ?」
「っ!ですが、あんな男に犯されて、まともな判断が出来るはずがないではありませんか!あの男をオスレ様だと、愛する人だと思おうとしたんです」
確かにリリーが辛い目に遭っていたことは事実だろう。だが、関係のないトイズとマリエルを巻き込んでいい理由にはならない。
「きっと、奥様が羨ましかった…妬ましかったのです」
「リリーが出掛けるのに、付き添わなかったのか?」
「馬車の手配などはしていましたが、一緒に出掛けることはありませんでした。リリー様が私と一緒にいても、得がないからとおっしゃって」
手助けはしていたが、べったり一緒にいたわけではなかったのか。使用人からもオーロラが親しいという話も出ていないということだった。
「メリーアンが、ジーリスの子だとは思わなかったのか?」
「…思わないように、封じ、消しました」
「リリーはトイズの子だとトイズを脅していたのだぞ?」
「本当に愛してらしたんです。だから、悪い形でも関わりたかったのだと思います。自分のことを忘れて欲しくなかったのです」
ローザ公爵はそれが本質なのだと思った。リリーはトイズに忘れて欲しくなかった。ある意味、最期までとは言えないかもしれないが、成功したのかもしれない。
「リリー様はオスレ様が亡くなったと聞いた日、命を絶とうとしています。オスレ様と同じ日に死にたいと…」
ローザ公爵は、想定出来ることでありながらも、驚いた。
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「あの邸の人間は、あの男を野放しにしたのですから、信用は出来ません。リリー様を見下して、聞く耳を持つとは思えません。リリー様もあの男のことは誰にも言わないで欲しいと、それでもこのままではと思い、ご実家はどうかと聞きましたが、静かに首を振られました…」
ロス伯爵もリリーにとっては、寄り添ってくれる家族ではなかった。
「脅されていたのか?」
「リリー様に誘われたと話すと言われてはいましたが、リリー様は知られたくなかっただけです。そう考える女性もいるのです」
確かに公にしたい女性など、なかなかいないだろう。
「ジーリスが脅しに使っていた写真は知っているか?」
「はい…」
「まさか、君が持っているのか?」
「はい…家族に隠蔽されたらと思って、隠してあります。誰か被害者が声を上げたら、提出しようと思っていました」
「どこにあるか教えて貰えるか?訴えるかどうかは、加害者に任せる」
「はい」
オーロラは目を瞑って、大きく息を吐いた。
「誰か弟と私に、気付いたということですよね?」
「ああ、誰かは控えるが、ある方が途中から呼び名は同じなのに、あなたになったと証言しています」
「上手く似せられていると思う一方で、誰も区別もつかない、そんな存在だったのかとすら思っていました。そうですか、気付いた人がいたのですね…」
そして、オーロラも拘束されることになった。取り乱すこともなく、オーロラは素直に従い、覚悟をずっとしていたのだろう。
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